製作総指揮と原作は同一人物

 安倍晋三首相が「緊急事態宣言を39県で解除する」と表明したのは5月14日。それから10日以上が経ち、映画界も復旧の動きが加速している。

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 映画の興行成績や観客動員数の調査で知られる興行通信社は5月18日、運営サイト「CINEMAランキング通信」に、「新作『心霊喫茶「エクストラ」の秘密〜』が初登場1位を獲得!(5月16日-5月17日)」の記事を掲載した。

 日本国内の《週末観客動員数TOP10》を紹介する「今週の映画ランキング」が約1カ月ぶりに更新されたことから、その結果を分析した記事だ。さっそく本文の一部を引用させていただこう。

《新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言により休館を余儀なくされていた全国の映画館だが、この週末37県の緊急事態宣言解除により約100サイトが営業を再開。また4月10日以降、公開予定でだった(編集部註:原文ママ)すべての新作映画が公開延期となっていたが、5月15日に『心霊喫茶「エクストラ」の秘密 The Real Exorcist』(日活)が全国66サイトで、5月8日からインターネット上に開設された「仮設の映画館」にて上映されていた『島にて』(東風)がフォーラム山形で初日を迎えた》

 記事では「サイト」という業界用語が使われているが、これは映画館1館を示す単位になる。つまり37県で緊急事態宣言が解除されたことを受け、約100館の映画館が営業を再開したわけだ。

 新作映画の製作はストップしている。公開できる作品は存在しないはずだ。一体、どんな映画が上映されているのだろうか。やはり記事から引用させていただこう。

《2位以降は既存作品に加え、昨年の大ヒットも記憶に新しい2位の『天気の子』(東宝)、5位の『君の名は。』(東宝)、6位の『シン・ゴジラ』(東宝)などアンコール上映されている過去のヒット作品がランクイン》

 まるで名画座だが、さらに昨年末に上映がスタートした「パラサイト 半地下の家族」[ポン・ジュノ監督(50):ビターズエンド]や、3月に公開されていた作品も上映が再開され、複数がベスト10入りしている。

 ところが、約1か月ぶりに復活したランキングで、1位の作品だけは5月公開の新作だったのだ。

 ご紹介した「CINEMAランキング通信」の記事でもタイトルに使われていたが、「心霊喫茶『エクストラ』の秘密 The Real Exorcist」という作品だった。

 どんな映画なのか、さっそく公式サイトを見てみると、《製作総指揮・原作/大川隆法》という文字が目に入る。

「確実に収益が見込める作品」

 クレジットなどによると、幸福の科学出版の製作で、主演はかつて清水富美加の名前でタレント活動を行っていた千眼美子(25)だ。

 彼女は2017年、幸福の科学の信者であることを公表。所属事務所を辞め、後に幸福の科学が設立した事務所に移籍した。

 監督は「小田正鏡」と記載されている。調べてみると幸福の科学出版から著作『感動を与える演技論』を上梓している。Amazonに掲載された略歴を見ると、《1951年生まれ。富山県出身。日本大学芸術学部映画学科を卒業》とある。

 ということで、映画好きでなくとも、「幸福の科学の映画か」と腑に落ちただろう。一部の“好事家”が熱心に鑑賞したりしているとはいえ、基本は教団が信者のために作った映画だろう。

 内容を少しだけ紹介しよう。公式サイトから引用させていただこう。まずは「イントロダクション」だ。

《「憑依」「ポルターガイスト」「自殺霊」「地縛霊」……誰もが経験しうる心霊現象の謎を解き明かし、人生の幸不幸を引き寄せる「心の法則」、悪霊に取り憑かれないための方法、そして悪魔との対決までを描きだす“リアル・エクソシスト”映画が誕生した。

 大川隆法製作総指揮・原作の最新作では、長年の霊的体験やスピリチュアルな検証に裏付けられた驚くべきストーリーが展開する》

 次は「ストーリー」だ。

《東京の片隅にある喫茶「エクストラ」(略)この店でアルバイトをしているサユリのもとには、さまざまな悩みを抱えた人たちが訪れる。そして彼女は“不思議な力”を使って、次つぎと悩みを解決していく。目に見えない世界の真実に触れることで、人びとの心に光が灯っていく。しかし、そんな活躍を続けているサユリに、邪悪な存在が立ちはだかる……》

 このアルバイトの《サユリ》を、千眼美子が演じているというわけだ。

 そもそも幸福の科学は90年代から映画製作を積極的に展開してきた。業界関係者が解説する。

「『心霊喫茶』は幸福の科学が製作した映画としては18作目だとされています。信者が大量に前売り券を購入してくれるので、配給サイドにとっては確実に収益が望める作品になります。かつては東映が配給していましたが、トラブルがあって決別したと言われています。現在は日活が担当することが多いようです」

 映画「心霊喫茶」は19年11月、一部メディアが「20年5月公開予定」と報じていた。新型コロナウイルスの間隙を縫うように、ほぼスケジュール通りに進んだことになる。

 新型コロナをものともせず、幸福の科学の信者は映画館やシネコンに足を運んだということか。

 ライブハウスやクラブと違い、映画館で客は大声を上げたり、身体を動かしたりするわけではない。飛沫感染のリスクは低く、一部の映画館は換気に力を入れたり、席の間隔を空けたりするなどの対策も講じてきた。

 そうは言っても、映画館やシネコンを“三密”の代表例と受け止める人も、決して少なくないだろう。それでも多くの観客が密閉空間の中で映画を観たのだ。なかなか考えさせられる話である。

「回答書」の内容とは

 ちなみに、快進撃はその後も続いているようだ。「CINEMAランキング通信」は5月25日、「『心霊喫茶「エクストラ」の秘密〜』が2週連続で首位を獲得!『Fukushima 50』が圏外から急浮上(5月23日-5月24日)」の“続報”を掲載した。

《関東首都圏ほか都市部を中心に営業休止を余儀なくされている劇場も多いが、先週からさらに100サイト以上が営業を再開、通常の半数以上の劇場が営業する週末となった。しかしながら今週新作の公開はなく、先週に引き続き3月以前に公開された作品や、過去のヒット作などが上映される状況となっている。

 今週の動員ランキングは、『心霊喫茶「エクストラ」の秘密 The Real Exorcist』(日活)が2週連続で首位を獲得。以下、2位『天気の子』(東宝)、3位『パラサイト 半地下の家族』(ビターズ・エンド)、4位『一度死んでみた』(松竹)と、先週と変わらない結果となった》

 では、幸福の科学側は、この大ヒットをどのように受け止めているのだろうか。幸福の科学出版に取材を申し込むと、最終的に《幸福の科学グループ広報局》から《回答書》が送付された。全文をご紹介しよう。

《この度の新型コロナウィルスによってお亡くなりになられた方々に、心よりお悔やみを申し上げます。そして、罹患された皆様、感染拡大により生活に影響を受けておられる皆様の一日も早い回復をお祈り申し上げます。
映画『心霊喫茶「エクストラ」の秘密−The Real Exorcist−』は、5月15日より劇場公開を迎えることができました。第一週は、休業中の劇場も多く、一部再開された劇場66館での公開でしたが、2週目の5月22日からは146館まで上映館が増えております。緊急事態宣言が解除された首都圏1都3県、北海道でも劇場再開の様子を見ながら順次公開する予定です。

 コロナ禍で日本中に不安感が広がる今だからこそ、少しでも気持ちが明るくなり、人生に勇気と希望が湧いてくる本映画を日本中に届け、一人でも多くの方に観て頂きたいと思っております。本作公開がきっかけになり、映画館の再開に弾みをつけることができたとしたら大変ありがたく思いますし、同時に、コロナ禍を克服し、日本の映画文化が復活することを心から願ってやみません。

 本作は、公開前から既に世界6か国で21の賞に輝いており、中でも2月に行われたモナコ国際映画祭では最優秀作品賞(エンジェル・トロフィー賞)・最優秀主演女優賞を含む4冠、3月には、ナイジェリアのエコ国際映画祭では最優秀作品賞を含む2冠、4月にはアメリカのヒューストン国際映画祭の長編ファンタジー・ホラー部門でゴールド賞を受賞いたしました。こうした海外での高い評価が、日本国内における事前告知に加えて話題を呼び、一般の方々にも、数多くご覧頂いております》

 コロナ禍で大きな打撃を受けた映画界で、復活の狼煙を上げたのは幸福の科学が製作した映画だった――意外というほかない。

週刊新潮WEB取材班

2020年5月30日 掲載