ネットニュースで毎日名前の挙がるタレント。田中みな実も相当だが、EXIT兼近の名前はもっと見る気がする。政治や社会問題に対する発言が取りあげられていることが多い。言い方はチャラいが、的確なコメントだと評価されている。「ワイドナショー」を中心に、今や名コメンテーターとしての立場を築きつつある。

 どちらかといえば、もともとマトモだがあえてチャラい姿勢を貫いているように見える兼近。過去には逮捕歴もあり、当初は派手な見た目だけのイロモノかと思っていた。しかしあれよあれよという間に人気が出て、「霜降り明星」と並んで「お笑い第7世代」の中核をなすように。イケメンということも大きいだろうが、何よりも空気を読んで振る舞う「中間管理職」力が高かったように思える。

 金はないが視聴率がほしいテレビ界において、もっとも重宝されるのは「中間管理職」タレントだ。ほどほどな金額で、きちんとテレビ局や大御所の思惑をくんでくれる人。若い世代からも親しみと尊敬を集めつつ、上の世代からは可愛がられる、そんなタレントである。その筆頭がEXIT兼近であり、おぎやはぎであると思う。ブラックマヨネーズやサンドウィッチマンも「中間管理職」力が高い。あと、ゆきぽよやみちょぱといった、ギャルタレントたちもそうだ。

 彼らは建前を、本音のように話してくれる。軽い口調やゆるい空気感に包み、「正論」という圧力を与えない。媚びず、力まず、偉ぶらず。コロナ禍で疲れ切ったお茶の間には、その距離感がちょうどいい。政治や社会問題、芸能人の不祥事まで、ワイドショーでの話題はコンプライアンスやハラスメントと隣り合わせだ。料理のしかたひとつで大事故になる。でも「中間管理職」タレントによって、ほどよい味つけができて一丁上がりだ。しかも取り扱いが難しい大御所とも、うまくやってくれる。

 例えば兼近の出演している「ワイドナショー」はダウンタウンの松本人志がMCで、おぎやはぎは坂上忍がMCの「バイキング」に出演中だ。アクの強い司会者のもとでも、ひょうひょうと自分の仕事をこなすことで、番組のバランスを取っている。司会者自身もクセの強さを自覚しているゆえに、彼らがいてくれるメリットをよくわかっているのだろう。コメントを振ってまとめることも多い。

 ただそうした大御所タレントたちは、むしろ可愛がっている中間管理職タレントたちによって、居場所を追われつつあるのではないか。その理由は、昨今の「毒舌疲れ」によるものだ。

引退をほのめかす石橋貴明に、「嫌いなタレント」常連の坂上忍、時代遅れの明石家さんま… 彼らにトドメを刺すのは「中間管理職」タレントか

 坂上忍、とんねるず石橋貴明、明石家さんま。この大御所たちの共通点は、女性を美醜で判断するのを持ちネタにしてきたこと、そして「嫌いなタレントランキング」の上位であることだ。

 坂上は「ブスは嫌い」と公言していた毒舌タレントだ。タカさんは「食わず嫌い王」で必ず美人側につき、ちょっかいを出していた。「うたばん」時代の、モーニング娘。・保田圭イジリも思い出す。さんまの冠番組「明石家サンタ」の「ラブメイト」は、その年に出会った好みのタイプの女性をランク付けする企画だ。共演した女子アナや美人タレントたちに、すぐ気のあるような素振りを見せるのもお約束である。

 美人をちやほやし、そうでない相手はいじったり切り捨てる3人。女性に限らず、格下の芸人へのパワハラ的振る舞いもよくあった。普段の生活でやってはいけないことを、平気でやれる「空気の読まなさ」。そこに痛快さを感じる人は多く、人気を支えていたのだろう。しかし時代が変わり、ハラスメントに対する意識も変わった。今や時代遅れで横暴なタレントだと思われてしまう。昔は人気タレントランキングの常連だった彼らが、まさかの「嫌いなタレント」や「嫌いな芸人」ランキング上位になってしまったのだ。

 そうした時代を反映してか、坂上は2年前、東京五輪をひとつの区切りにしようと考えていると明かしていた。タカさんも先日、おぎやはぎのラジオで、「1年やってダメなら引退」と語った。SNSでの炎上や中傷が問題になり、ぺこぱのようにツッコまない笑いが愛され、「毒舌疲れ」は加速している。かつての大御所たちも潮時だと感じているのだろう。

「中間管理職」タレントたちは、大御所の悲哀も感じ取っているはずだ。一方で、世間の目線にも合わせていかなくてはならない。大御所が嫌われれば嫌われるほど、「中間管理職」としてバランスを取り続ける。するとまた世間が彼らに喝采を送り、大御所の価値観はやっぱり古いとなる。するとまた「中間管理職」に負担がかかるサイクルが始まる。大御所にトドメを刺すのは、結局のところ優秀な「中間管理職」になるのだろう。

 とはいえ「昇進」して、大御所MCとして成功するかどうかはまた別の話である。名選手、名監督にあらず。事実おぎやはぎも、「ブステレビ」では炎上した。ならば兼近やギャルタレントらが、どんな変化球でブチアガっていくのかに注目している。古い人間はすぐ野球に例えると、呆れられるだろうけれど。

冨士海ネコ

2020年6月28日 掲載