あの番組でぱるるが笑っていた。あのぱるるが、である。ぱるるとは、女性アイドルグループ・AKB48の元メンバーで“塩対応”で知られる島崎遥香のこと。そしてあの番組……というのは、今年9月23日にテレビ東京系で放送された「水バラローカル路線バスVS鉄道乗り継ぎ対決旅5函館〜洞爺湖〜小樽」のことである。言うまでもなく、この番組はテレ東が誇る人気企画“バス旅”の一つ。“ガチロケ”でお馴染みの番組にまさかのぱるるが参戦、しかも嫌な顔ひとつせずに笑っていたのだ。

 実はこのバス旅企画には、最近でも2代目AKB48グループ総監督を務めた横山由依が参戦するなど現役、OG問わずAKB関連のメンバーの出演が目立つのである。いかに多いのか、まずは簡単にまとめてみた。

(1)2016年11月26日放送「ローカル路線バス乗り継ぎの旅特別編静岡・熱海〜石川・金沢」宮澤佐江(元AKB48/元SKE48)ゴール成功

(2)2018年6月16日放送「ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z第6弾奈良・東大寺〜岐阜・飛騨高山」大島麻衣(元AKB48)ゴール成功

(3)2019年11月13日放送「太川蛭子の旅バラ2時間SPバスVS鉄道乗り継ぎ対決旅盛岡〜八甲田」西野未姫(元AKB48)鉄道チームのメンバーとして参加し、勝利

(4)2020年5月20日放送「水バラローカル路線バス乗り継ぎ対決旅〜春の伊豆半島から富士山へ!路線バスで陣取り合戦!〜」西野未姫(元AKB48)川崎麻世チームのメンバーとして参加し、勝利

(5)2020年7月29日放送「水バラローカル路線バスVS鉄道乗り継ぎ対決旅4能登の陣金沢〜輪島」荻野由佳(NGT48)バスチームのメンバーとして参加し、勝利

(6)2020年9月5日放送「ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z第14弾夏の北海道横断【ニセコ→知床】」北原里英(元AKB48/元SKE48/元NGT48)ゴール成功

(7)2020年9月23日放送「水バラローカル路線バスVS鉄道乗り継ぎ対決旅5函館〜洞爺湖〜小樽」島崎遥香(元AKB48)バスチームのメンバーとして参加し、勝利

(8)2020年10月21日放送「水バラローカル路線バス乗り継ぎ対決旅陣取り合戦2in房総半島」松井珠理奈(SKE48)太川陽介チームのメンバーとして参加し、敗北

(9)2020年11月11日放送「水バラローカル路線バスVS鉄道乗り継ぎ対決旅6〜信州横断!紅葉の旅」横山由依(AKB48)

 バスチームのメンバーとして参加し、ここまで計9回に渡ってAKB48グループの現役メンバーやOGが出演していることが分かる。特に昨年11月13日に放送された「太川蛭子の旅バラ2時間SP」に西野未姫(元AKB48)が出演して以降、出演数が増えている。この回以降、今年11月11日までの約1年間のうちにバス旅関連の企画は全部で12回がオンエアされているが、そのうち7回も出演しているのだ。

 ここからは制作サイドがAKBメンバーを積極的にブッキングしようとする意図が見て取れる。というワケで今回はこれまでのバス旅における彼女たちの名場面を簡単に紹介しつつ、なぜここまで気に入られているのか? その理由を考察していきたい。

宮澤佐江、大島麻衣

 最初にメンバーが登場したのは太川陽介のバス旅ではなく、田中要次と羽田圭介の2代目コンビが旅をする「ローカル路線バス乗り継ぎの旅特別編」と「バス旅Z」第6弾である。前者では宮澤佐江、後者では大島麻衣がマドンナであった。田中&羽田コンビなら年長の田中が普通はリーダー格になるハズなのだが、サポート役に徹している感じだった。むしろ情報を聞き込む際など、随所で前線に顔を出す感じなのだ。では羽田がリーダーなのかというと、そうでもない。“リーダー不在”の状態である。だからなのか、積極的にルート選択に参加するなどしてチームを引っ張ったり(本来はゲストのハズなのだが)、ガッツのあるタイプのマドンナのほうが番組的にバランスが取れていて面白いのだ。もうひとつ付け加えるなら、ゴール成功率も高いように思われるほど。

 そこで「Z第6弾」で、マドンナを務めた大島麻衣である。岐阜県岐阜市で大きな決断を迫られた回で、関方面を目指すか、美濃方面を目指すのかという時のことだ。このとき、どちらを選択してもこの先のルートが繋がるという確信が持てないため、決断できないでいた田中に対し、彼女は半ばキレ気味にこう詰め寄ったのだ。「決め手がないと乗らないんですか?」「勝負かけていかないと進まないですよ」。それだけではない。さらに続けてこう提案したのだ。「(関方面の)医療大学の病院に行ったらいいんじゃないですか? コミュニティバス絶対通っていますよ」。迷う田中の背中を押す言葉であった。結局、羽田も賛同し、一行は関方面を目指したのだが、これが功を奏して、結果的にゴール成功となったのである。彼女の勝ち気でスパッとした性格が吉と出た。

北原里英、そしてぱるる

 大島から約2年3カ月後の今年9月に放送された「Z第14弾」の北原里英も印象深い。北原はNGTで初代キャプテンを務めていただけあって、まさにこの回ではキャプテンとしてチームを引っ張ることとなった。バス旅といえばバスが繋がらない区間は“歩く”というのがお約束である。だが、初日まったく歩かなかったことで、彼女のやる気がさらにパワーアップした。そして夕食の席でゴールへの強い決意が感じられる、格好良すぎるこの宣言が飛び出すのである。いわく「歩かずゴール目指しましょうよ」「本当にバスだけの旅を見せましょうよ」(実際は29キロ歩いたが)。また、2日めの午前中にもこんな場面があった。次のバスまで約1時間50分もあるので、ほかの方法でルートが繋がるか確認することを提案したのである。結局、ルートはなかったが、その後に関する有益な情報がゲットできたのだ。これは喫茶店で即、休憩したがっていた田中だったらありえなかったファインプレーで、まさに粘って聞き込みした甲斐があったワケだ。

 一方、太川チームに参加したメンバーなら、やはりぱるるに注目したい。この番組は苛酷なことで知られている。途中で「嫌です」「もう歩けない」というように簡単に弱音を吐くかと思いきや、旅番組のロケ自体が初めての体験だったこともあり、途中まで“旅番組のロケってこういうものなんだ”と思っていたフシがあった。しかも彼女の中で苛酷な旅番組といえば、「あいのり」(フジテレビ系)だったはずで……。

 だからなのか、バスの時間に間に合わないと悟ったら自ら全力疾走するなど、かなり見どころ満載だったのだ。さらに普段から運動をまったくせず、ダイエットするのなら、運動よりも食事制限を選ぶというほど運動嫌いだと語った彼女のハイライトがある。バスが繋がらず約19キロの道程を歩くハメになった場面だ。ルート選択に失敗し、バスチームのメンバーを長距離歩かせることになったことを悔やんだ太川はリーダーとして、ときには歩みを止め仲間を鼓舞し、ときには先に歩みを進めて新ルートが見つからないかバス停をチェックしていた。

 その後ろ姿を見たぱるるは思わず、「すごいなぁ…すごいしか出てこないです」「もう背中で“魅せる”人。“ザ・背中で魅せる人”」「俺について来い! っていう感じですよね」と塩対応どころか、感心しきり。まさにベタほめの嵐であったのだ。疲れた表情はしていたものの、リーダー太川に呼応し、歩みを止めず、進むことができたのである(結局、新ルートが見つかり、歩いた距離は約11キロにまで減ることに)。クリアしなければならないミッションも余裕の笑顔でこなし、まさに存在感をみせつけたのであった。

 今月11日に放送された“バスVS鉄道”の対決旅では、AKB48から横山由依がバスチームに、ももいろクローバーZから高城れにが鉄道チームに参加したこともあり、“国民的アイドル対決”が注目された。しかも道中に設定されたミッションをこなす際に、直接対決の場面もあったのだ。ひとつめは長野県にある白馬ジャンプ台の頂上からの写真撮影である。高城は、高所恐怖症ということもあって「うわぁ、ムリ!」とビビリまくりであった。対する横山は、顔色ひとつ変えず、遠くの紅葉を楽しむ余裕があったほどだった。2人とも撮影は1発クリアだったので、形的にはドローであったが、横山の方が度胸があったといえよう。

 ふたつめも撮影対決だった。こちらは、チームの2人が同時にジップライン(滑車を使ってロープを滑りおりるアトラクション)を飛んで、残る1人が撮影係となって3ショットを撮影するミッションだった。それぞれの撮影係になった2人は難なく1発で撮影に成功し、引き分けとなった。が、実は先に挑戦したバスチームは、当初、リーダー太川が撮影を担っていた。ところが2度失敗したため、横山に交代して成功したのだ。つまり、最初の2回、彼女はジップラインを“飛んでいた”のだ。バラエティ的には満点のパターンだったといえるだろう。

 最後に、なぜここまでバス旅でAKBが重宝されるのか、その理由を考えてみたい。ここまで書いてきた名場面にはある二つの共通点がある。ひとつは“勝ち気”、そしてもうひとつは“協調性”だ。握手会人気はもちろん、かつてはシングル表題曲の選抜メンバーが選抜総選挙やじゃんけん大会などで争ったことからも、勝負事では常にポジティブな気持ちで向かう必要性があった。その強さが苛酷なバス旅におけるゴールへの執念につながるのだろう。

 事実、AKBメンバーがマドンナならバス旅ではすべてゴールに成功しているし、対決企画でもかなり高い勝率をマークしているのだ。さらにグループでは個々が切磋琢磨しつつも、大所帯グループだから知らず知らずのうちに協調性が培われる。このシリーズでは短くて1泊2日、長くて3泊4日も他人とチームを組むことになるので、そこで個人プレーに走ったら、チームが空中分解することは明白である。もちろん、バラエティに慣れている点も大きい。ここ数年は乃木坂46を代表とする坂道シリーズに押されっぱなしのAKB48グループだが、ことこのバス旅に関しては、坂道シリーズからは乃木坂46OGの生駒里奈1人のみの出演に留まっている。だからこそ、AKBとの相性の良さが余計に際立つのである。残念ながら今月18日に放送された新作にAKBメンバーの参戦はなかったが、もしかしたらバス旅をきっかけにしてAKBの逆襲が始まるのかもしれない。

上杉純也

週刊新潮WEB取材班編集

2020年11月25日 掲載