10月以降に始まった秋ドラマが全体的に低調だ。世帯視聴率の平均が2桁に届かない作品が大半。その理由についてSNS上では「脚本が悪い」「ミスキャストだ」などと議論百出だが、スポンサーが付きやすい役者を主演に据えようとするのも大きな問題なのではないか。

 例えば、深田恭子(38)が主演するフジテレビの「ルパンの娘」(木曜午後10時)のスポンサーにはメナード化粧品が付いている。

 同社は通常、この放送枠を提供しない。同業他社のコーセーが長らく提供しているということもある。

 では、どうして今回はメナード化粧品が提供に加わったのかというと、深田の主演作品であるからにほかならない。深田が同社のイメージキャラクターを務めているのは知られている通りだ。

 約1年前に放送された「ルパンの娘」前編の世帯視聴率の平均は7・1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)。このドラマを好きな人はいるし、作品内容を否定するつもりは毛頭ないが、従来の常識なら続編は作られない。

 だが、その常識が覆された。深田の主演作ならスポンサーが取りやすいからだ。企業側は単にご祝儀としてスポンサーになるわけではない。

「視聴者がドラマ内の主演女優に見入っている時、CMにその女優が登場したら、PR効果は高まる」(制作と編成を経験した民放幹部)

 おまけに深田が演じている泥棒一家の娘・三雲華は、マスクもボディも抜群に美しい。化粧品会社としてはマイナスにはならないだろう。

「逆にメナード化粧品が提供しているから、深田さんの美しいイメージを汚すようなストーリーには出来ません。これは深田さんに限った話ではなく、スポンサーがCMに起用している役者を使う時の鉄則」(同・民放幹部)

 スポンサーがCMに起用している女優を主演にすると金銭名以外にも局側にはメリットがある。視聴率が振るわない場合も大目に見てもらいやすいのだ。

「番組が低視聴率だと、我々はスポンサーのところへ説明に行ったり、謝罪したりします。シビアな世界です。それでもスポンサーがCMに起用している女優が主演だと、許してもらいやすい」(同・民放幹部)

 確かに、自分たちがCMに起用している女優の主演ドラマだったら、低視聴率であろうが、スポンサーは「このドラマは主演女優が悪いからだ」とは言えないだろう。

 さて、続編「ルパンの娘」の平均世帯視聴率はというと、第5話までで6%。前編より苦戦している。

「最低でも前編以上の視聴率が期待されていたはず。メナード化粧品だって、この数字では不満でしょう。局の関係者はスポンサー平謝りでしょう」(同・民放幹部)

 スポンサーを意識せずにキャスティングしたり、あるいは深田に違う役をやらせたりしていたら、より多くの人が見るドラマとなり、結果的にスポンサーも満足したのではないか。

有村架純と東芝

 同じフジ系列の関西テレビが制作している「姉ちゃんの恋人」(火曜午後9時)の主演は有村架純(27)。東芝がスポンサーに加わっている。

 東芝はこの放送枠の前作「DIVER-組対潜入班-」は提供していない。新たなスポンサーである。有村が東芝のイメージキャラクターを務めているのは知られている通り。有村がスポンサーを獲得した形だ。

 脚本は名手・岡田惠和氏(61)。有村の主演作を岡田氏が書くのは2017年の連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK)以来、3作目。岡田氏が書く有村の主演作では、主人公が心優しい聖女のような存在になる。このドラマもそう。自分のことは二の次にして、3人の弟を懸命に育ててきた。

 このドラマも熱烈に支持する視聴者がいるし、失敗作とは決して思わない。東芝も大喜びのストーリーに違いない。だが、第4話までの世帯視聴率の平均は7%台にとどまっている。

 このドラマもスポンサーを意識しないキャスティングとストーリーづくりが出来ていたのだろうか。有村は「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」(フジ、2016)で内に燃えるような情念を秘めた女性を名演した。そろそろ優等生以外の面も見てみたい。

 日本テレビ「#リモラブ〜普通の恋は邪道〜」(水曜午後10時)は波瑠(29)が主演している。スポンサーには波瑠がCMに出ている全薬工業と大同生命の2社が新たに入った。

 波瑠の役柄は企業の従業員の健康を管理する産業医。健康と関わるビジネスを展開する両社にとっても御の字であるはずだ。もつとも、6話までの平均世帯視聴率はやはり低く、8%台。合格ラインとされる2桁に届いていない。

 主演女優のお陰でスポンサーが取れた形の3つのドラマはいずれも苦戦を強いられている。偶然だろうか? いや、違うだろう。

「主演女優の基準が、スポンサーを取りやすい人になりつつある」(同・民放幹部)

 結果として、キャスティングにおいてスポンサーの影響力が強くなっている。スポンサーがCMに起用している女優を使えば、ストーリーにも影響が出やすい。このままでは、ドラマが視聴者ニーズから離れてしまう。

 背景には新型コロナによる不景気がある。企業が広告費を削ろうとしているため、スポンサーの獲得が簡単ではない。

 在京キー局5社の売上げは10〜20%落ちているので。スポンサーが取れる主演女優は貴重になっているのだ。俳優も同じ。不景気は収まりそうにないので、この流れは今後、強まりそうだ。

石原さとみと「薬剤師」

 スポンサーがドラマの中身に影響を与えたという指摘があったのが、フジの夏ドラマ「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」である。主演の石原さとみ(33)が病院薬剤師に扮した。薬剤師が主人公のドラマは初めてだった。

 この薬剤師がスーパーウーマン。すこぶる格好良く描かれていた。だが、医療関係者を名乗る人たちからSNSなどで異論が噴出した。

「なぜ、薬剤師が心臓マッサージをしなくてはならないのか」「医師、看護師に薬剤師が指示を出すはずがない」。筆者の友人の薬剤師も「あり得ない世界」と斬り捨てた。

 このドラマのスポンサーには「日本調剤」、「クオール薬局グループ」「アイングループ(医薬流通サービス)」「武田テバ(主にジェネリック薬品を扱うメーカー)」が入っていた。その影響を受けたのではないかという指摘があった。

 なるほど、どの企業も薬剤師がお得意様である。薬剤師を格好悪く描くわけにはいかないだろう。ただし、このようなことが行きすぎたら、ドラマ全体がPRになってしまいかねない。

「ドラマは制作費が高い分、スポンサーに支えてもらわないと成り立たない。全然儲からないが、やめたり、減らしたりするわけにはいかない。局のイメージを高めてくれるのはドラマだから」(同・民放幹部)

 とはいえ、このままではスポンサーの姿が見え隠れするドラマばかりになってしまいかねない。

「半沢直樹」のようにスポンサーに忖度しないキャスティング、ストーリーを視聴者は求めているはずだ。

鈴木文彦

週刊新潮WEB取材班編集

2020年12月1日 掲載