「スタバ銃撃事件」被告との関係

 何者かによって手りゅう弾で自宅への襲撃を受けた池田組の田中勇次副本部長に対し、組織から破門状が出たという。「被害者」が組織から処分されるというのは、わかりにくい話だが、ここに至るには複雑な経緯がある。

 田中副本部長は、今年1月に愛媛県で発生した「スタバ銃撃事件」に関与した池田組の前谷祐一郎若頭の兄弟分とされる人物。手りゅう弾の実行犯が特定されない中での田中副本部長への処分が憶測を呼んでいるが、池田組と敵対する6代目山口組との関連性についてお伝えする。

 まず「スタバ銃撃事件」について簡単に振り返っておこう。今年1月、愛媛県四国中央市のスターバックスコーヒーで、男性が拳銃で撃たれて殺害された。銃撃したのは池田組の前谷若頭で、全国指名手配された後、殺人などの罪で逮捕・起訴された。

「逃走中の前谷若頭をかくまっていたとの容疑で、知人男性も逮捕されました。男性は建設業を営んでいますが、池田組の企業舎弟と言うか、浅からぬ関係があると見られています」

 と、担当記者。

手りゅう弾事件との関連

 前谷若頭と射殺された男性との関係はもともと舎弟分だったが、事件前に前谷若頭のもとを離れ、6代目山口組の2次団体に移籍したとされた。

「両者の間で行き違いや揉め事があった結果の銃撃と言われていますね。その後は当然、6代目山口組側の報復が想定されました」(同)

 なかなか報復に類する行為が確認されない中で発生したのが、「手りゅう弾事件」だった。

「池田組の田中勇次副本部長宅に手りゅう弾が投げ込まれました。当時田中副本部長は不在でしたが、犯人はまだ特定されていません。6代目山口組傘下組織による犯行説から身内であるはずの池田組の犯行説、そして田中副本部長の自作自演説まで、アレコレと取り沙汰されているようです」(同)

 田中副本部長は池田孝志組長への忠誠心が厚い幹部とされてきたが、ある時点から池田組長から疎まれるようになったという。そういった人間関係の複雑さゆえか、手りゅう弾事件に関して、池田組の内紛説や自作自演説が流布しているのかもしれない。

高山清司若頭が気を揉んでいる

 田中副本部長と組織との関係悪化を物語るように5月10日付で破門状が出た。写真はその現物である。そして田中副本部長は16日になって警察に引退届を出し、カタギとなっている。

「田中副本部長としては、池田組長への恨みつらみを晴らすために自身が組織を離れてカタギになった方がよいと判断したのでしょう。どこかのタイミングで組織を辞めてヤクザから足を洗おうという算段がある中で、その背中を押すことになったのが、兄弟分の前谷若頭の凶行だった可能性がありますね」

 と、竹垣悟氏(元山口組系義竜会会長で、現在はNPO法人「五仁會」を主宰)。

「手りゅう弾事件については、6代目山口組傘下組織の組員が別件で身柄を取られていると聞きました。今後どうなるかわかりませんが、高山清司若頭が気を揉んでいることは間違いないでしょうね」(同)

「高山清司若頭が気を揉んでいる」というのは、6代目山口組が特定抗争指定暴力団に指定されていることと関係があるという。暴力団の行動範囲を著しく制限するもので、高山若頭はいち早く特定指定から外れたいと考えているとされる。

メンツ関連

 暴力団の基本は「やられたらやり返す」だ。そうしなければナメられる。メンツが第一の暴力団にとってナメられるのは死活問題だ。

 暴力団の論理からすれば、前谷若頭の銃撃に対して報復するのは当然の行為なのだが、それを野放しにして完遂させれば組織としての責任を問われ、特定抗争指定の解除など望むべくもない。高山若頭がそういったジレンマを抱えていることも想定されるだろう。むろん「やられたらやり返す」「メンツが第一」等々、いずれもカタギにとっては関係のない事情であり、市井の人々が巻き込まれないことを祈るばかりである。

デイリー新潮編集部