ついに「コカ・コーラ」も登場… 日本の飲み物がどんどん「透明」になるワケ

ついに「コカ・コーラ」も登場… 日本の飲み物がどんどん「透明」になるワケ

 絵画に初めてコカ・コーラが登場したのは、かのサルバドール・ダリの作である。その「アメリカの詩」(1943)では、コーラ瓶に“黒い血”が流れこむ様子が描かれ、一説によれば、米国社会における人種差別が暗示されているとか――。なんて小難しい例を引かなくても、コーラと言えば黒のイメージ。ところがこのたび、透明なコカ・コーラが登場したのである。

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「コカ・コーラ クリア」は、6月11日にお目見えしたばかり。発売元の日本コカ・コーラに透明化の意図を尋ねると、

「夏はその他のシーズンに比べて、炭酸飲料を手に取る方が500万人増える季節です。これまでもゼロやトクホ、パウチ入りの商品など新しい試みを行ってきていますが、そうしたタイミングに、まだ出していない『コカ・コーラ』を、ということで企画しました。背景には、各社からもさまざまな透明飲料が発売されているなかで、“透明”が消費者の皆様に受け入れて頂けるのではとの判断もあります」(広報担当者)

 昔から「三ツ矢サイダー」などあるにはあったが、ここのところ“透明”な清涼飲料水が増えている。6月6日付「毎日新聞」夕刊でも「透明飲料 なぜ人気」と題した記事が掲載され、こんなデータを紹介している。

〈飲料市場の調査・マーケティングを行う「飲料総研」(東京)によると、フレーバーウォーターの2017年の出荷数量は3420万ケース(24本入り)で、10年の約15倍に。火付け役は10年発売の「い・ろ・は・す みかん」〉

「い・ろ・は・す」の例からお分かりになるとおり、この記事で扱われているのは“一見すると水、でも味と香りがある”フレーバーウォーターで、今回の透明コーラとはジャンルが異なる。しかしながら“透明化”がジャンルの枠を超える人気となっているのも事実で、コーラに続き今月19日には“透明なノンアルコールビール”なんて商品が、サントリービールから売り出されるのだ(「オールフリー オールタイム」)。

 これまでも透明飲料の市場には、オレンジやリンゴといったフルーツ味の商品のほか、“透明なメロンクリームソーダ”や“透明なカルピス”、“透明なミルクティー”“透明なカフェラテ”など、バラエティに富んだ味の商品が登場している。(それぞれ順に「い・ろ・は・す メロンクリームソーダ」、「アサヒ おいしい水プラス『カルピス』の乳酸菌」、「サントリー 天然水 プレミアムモーニングティーミルク」、「アサヒ クリアラテ from おいしい水」)。そこには、どんな需要があるのだろうか。専門家に聞いてみた。

「ジュースは恥ずかしい」と「健康志向」

「透明飲料には『カロリーゼロ』の商品が多く、人工甘味料が使われているので、個人的にあまり好きではないのですが……」

 と断った上で解説頂くのは、清涼飲料水評論家の清水りょうこ氏である。

「まず、“色のある飲み物は飲みにくい”というシチュエーションのためでしょう。会社員の夫に聞くと、職場ではあえて透明飲料を飲んでいる人がいるそうです。なんでも『会社でジュースを飲んでいると恥ずかしい』という意識があるとか。その点、ラベルを剥がしてしまえば、透明飲料は水にしか見えませんからね」(同)

 先の「毎日新聞」記事でも、ジュースを飲んでいてクレームを受けた、という自治体職員の話を紹介していた。

「若い方には分からないかもしれませんが、『ジュースはお菓子』という意識は一定の世代にはある。そういう人にとってみれば、ジュースを飲みながら仕事をされるのは、ポテトチップスを食べて対応される感覚と同じなのでしょう。また、もうひとつの透明需要には、健康志向の高まりがあると思います。先にお話ししたとおり透明商品にはカロリーゼロの商品が多く、また透明のため歯に着色しにくい。例えばオシャレ好きな女子などが手に取りやすいのでは」(同)

 実は清水氏によれば、「い・ろ・は・す みかん」が登場した10年より前に、海外からフレーバーウォーターが上陸してはいたという。そのひとつが07年に発売された「ボルヴィック フルーツキス」。レモンやマスカットなどのフレーバーがあったが、売り上げが振るわなかったためか、やがて製造中止に。

「香り付きの水かと思ったら、ちゃんと味もしました」と当時口にした清水氏はいうから、現在売られているフレーバーウォーター商品と大きくは違わない。それでも定着しなかったのは、現在ほど健康志向ではなく、“上陸が早すぎた”ということだろうか。

 消費者の健康志向を象徴する別のトレンドが、飲食業界にあると清水氏はいう。ずばり“無糖炭酸水ブーム”である。

各社炭酸水に参戦

 炭酸水をめぐっては、おなじみの赤いラベルの「アサヒ ウィルキンソン タンサン」に加え、今年3月には「カナダドライ ザ・タンサン」、4月には「サントリー 南アルプススパークリング」の各シリーズがお目見えした。“アサヒ”“コカ・コーラ”“サントリー”と、飲料大手各社が炭酸水に乗り出した形だ。

「日本人が炭酸水を飲み始めたのは、バブルの頃くらいからだったのでは。イタリア料理店に行って、あえてお酒ではなくペリエを飲む。そんなトレンドはあるにはありましたが、結局定着せずに終わった。それがここ10年くらいでしょうか。日本のどこのコンビニにいっても、炭酸水が売られるようになりました」(同)

 カロリーゼロで、歯に色もつかず、単的にいえば「カラダに悪い感じがしない」。炭酸水ブームもまた、健康志向を受けてと見ていいだろう。

 かねてよりの「フレーバーウォーターブーム」そして「炭酸水ブーム」を経て発売される“透明で味がして炭酸”の「コカ・コーラ クリア」は、もしや時代の申し子……?

「早速飲んでみましたが、また買うかというと……。キャップを開けるとコーラの香りがして、味はコーラ+レモン。炭酸はしっかり目です。甘味料の後味がやはり好きになれませんでした。透明コーラといえば、私の世代は90年代に売られた『タブクリア』を思い出しますが、それよりは飲みやすい気がします。とはいえやっぱりコーラは、砂糖を使った昔ながらのコカ・コーラが好きですね」(同)

年に1千種類の新製品が生まれる日本

 そんな「コカ・コーラ クリア」は、開発は米国本社だが、販売は日本だけの限定コーラであるという。その上で海外に目を向けてみると、ペリエを飲む文化やフルーツ味のフレーバーウォーターを飲む文化はあっても、“透明なカフェラテ”が売られる国は日本くらいだ。先に取り上げた「職場でジュースは飲みにくい」需要を鑑みると、ジュースが白い目で見られがちな日本社会がブラックだから、と思うムキあるかもしれないが……。

「日本でこれだけ透明な飲み物が増えているのは、新製品の多さに理由があると思います。飲料業界では、年間1千近くの新製品が発売され、そのうち残るのはほんの僅か。これは世界的に見てもハイペースで、コンビニなどの棚には次から次に新しい商品が並べられ、売れ行きが悪くなると、1週間で消える。日本人が新し物好きといってしまえばそれまでですが、この傾向ゆえに、ひとつ“当たり”が出れば乗っかるケースがありますね」

 例えば、昨年4月にサントリーが売り出した「クラフトボス」。缶コーヒーが主流の最中に、500ミリリットルのペットボトル入りで登場したこの商品は、発売から1年を待たずに2億4千万本を超えるヒットとなった。そしていま、コンビニのコーヒーコーナーを覗けば、似たような“大きめのペットボトルに入ったコーヒー”商品がいくつか並んでいる。

「透明飲料もそれと同じ動きで、ひとつ売れた商品が登場したのでそれに各社が追従していった形です。その結果、日本で発売される商品に透明が増えていくわけです。もっとも、以前コカ・コーラ社の方にお話を聞く機会があったのですが、日本限定商品がいくつかある中で、ヒットが見込める商品は世界展開も考えているといっていました。ひょっとすると透明コーラが本国で売られる日がくるかもしれませんね」

 黒船の逆、ということで色は透明――これから夏本番、ためしに手に取ってみてはいかが。

週刊新潮WEB取材班

2018年6月13日 掲載


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