RADWIMPSの新曲を“愛国歌”と批判する人たちは正義なのか

RADWIMPSの新曲を“愛国歌”と批判する人たちは正義なのか

 人気グループRADWIMPSの新曲「HINOMARU」が物議を醸している。歌詞の中にある「日出づる国の 御名の下に」等々のフレーズが「愛国歌」のようだ、あるいは「軍歌」のようだ、だからケシカラン! という人がいて、そうした意見に作者がコメントし、さらに外部識者もコメントして……といった事態になっているのだ。

 この曲は、サッカーW杯の応援歌のカップリング曲だというから、愛国的というか「日本ガンバレ」的なテイストが出てもそんなに不思議はない。

 ただし、このところこんな風に歌詞が批判されることが続いている。ゆずは「ガイコクジンノトモダチ」という曲の歌詞の中で「靖国」といった単語を出したことで批判の対象となった。また、前回のW杯の際には椎名林檎の応援歌も一部から批判が寄せられていた。

 これらのアーティストのファン、特に若い世代にとっては「それの何が悪いの?」という感じかもしれない。

「日本人で、日本が好きで、日本チームを応援する。いいじゃん」

 これは決して少数派の意見ではない。

 しかし一方で、こうしたスポーツイベントで「愛国的」に振る舞う人たちを見て、警戒感を示す人が存在するのもまた事実だ。無邪気に日の丸を振る姿を見て「若者が右傾化している」と眉をひそめるのである。

 そうした「若者右傾化論」の始まりは、2002年の日韓共催W杯にまでさかのぼることができる、と指摘するのは評論家の古谷経衡氏。古谷氏は著書『左翼も右翼もウソばかり』で当時の状況を振り返りながら解説している(以下、同書より引用、抜粋)。

 あのW杯では、日本は1次リーグを突破し、ベスト16入りした。開催地ということもあって、日本中は沸きに沸いた。各地でパブリックビューイングが開催され、若者たちは顔に日の丸のペインティングをして、「ニッポン、ニッポン」と連呼した。

 このような列島を席巻した狂乱の姿を見て、精神科医の香山リカ氏は『ぷちナショナリズム症候群――若者たちのニッポン主義』(中公新書ラクレ)をこの時上梓した。

 香山氏は「ニッポン」を連呼する若者たちを「屈託のない愛国心=ぷちナショナリズム」と定義し、それを批判的に検証している。

 のちに香山氏自身、この時の議論は「印象論のレベル」だったと述べているが、「ぷちナショナリズム」というフレーズのキャッチーさも手伝って、「若者が軽い感覚で愛国心を叫ぶようになっている」というイメージを広めるのに十分な役割を同書は担った。

 この場合「軽い感覚で愛国心を叫ぶ」ことを香山氏は肯定していたわけではない。なぜか。その理由を香山氏は同書で以下のように述べている。

「いまは他愛もない“愛国ごっこ”でとどまっているぷちナショナリズムの国・ニッポンが、瞬く間にラディカルなナショナリズムの国に転じていく可能性も否定できない。そして、そのとき世界の表舞台に装いも新たに再登場した“美しい国・ニッポン”は、低所得層だけが極右に走ったフランスなど問題にならないほど、ほとんどすべての階層がそれぞれの立場で愛国主義を唱える世界一のナショナリズムの国になっていたのである――これが単なる笑い話で終わるかどうか、答えは意外に早く明らかになりそうな気がする」

「右」の人はIQが低い?

 要するに、無邪気にサッカーを応援している分にはいいけれど、それがいつの間にか本格的なナショナリズムになるのではないか、それは危険だ、というのが香山氏の見立てである。愛国的であること、あるいはナショナリズムそのものが危険なものなのか、というあたりも意見が分れるところではあろうが、香山氏はそもそも右派に対して否定的な立場だ。たとえば、同書のヒットを受けて刊行された『「愛国」問答』という本では、次のような発言もしている。

「私、すごく単純に高IQの人は左なんだろうと思い込んでいたんです。それが最近(略)、たぶん高IQなのに右っぽい人が増えてきた気がして、すごくびっくりしているんですけど」

 政治的立場とIQを結び付けた、なかなか大胆な仮説だが、古谷氏はこう皮肉る。

「香山氏から見て『右』=思慮の足りぬ者なのだから、若者にそういう傾向が強まっているとすれば、憂慮すべきだと考えるのも無理はないのかもしれない。あれから十余年、彼女の心配をよそに、特に日本は『世界一のナショナリズムの国』にはなっていないように思われる」

 RADWIMPSらの曲に対して批判的な意見を述べる人たちと、香山氏の姿はどこか似ている。「愛国的」なるものに過剰に反応するのだ。

 しかし、そういう人たちはちょっと考えたほうがいいだろう。音楽や映画など娯楽の表現にまでいちいちクレームをつける行為こそ、戦前の検閲に似てはいないか、と。

デイリー新潮編集部

2018年6月14日 掲載


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