大阪地震で9歳女児の命を奪った「ブロック塀」 必ず崩れると覚悟せよ

大阪地震で9歳女児の命を奪った「ブロック塀」 必ず崩れると覚悟せよ

ジャッキを使っても持ち上がらず

 あまりにも痛ましい。「学校のブロック塀でさえ危険なのか」と、愕然とした方も多かっただろう。18日に発生した大阪北部地震で、高槻市立寿栄小学校のプールサイドに設置された塀が倒壊。同小4年生の9歳女児が下敷きとなって死亡した。

 ***

 高槻市の会見や報道などによると、倒れた塀は高さ3.5メートル。地面から1.9メートルが基礎部分となっており、その上にブロック塀が8段積み増されていた。その高さは約1.6メートル。

 そして地震発生時に塀の上部、つまり1.6メートルのブロック塀が約40メートルにわたって崩落した。

 産経新聞電子版は「大阪北部地震 都市直撃、機能マヒ 倒壊ブロック塀、ジャッキでも上がらず女児が犠牲に…」の記事で、居合わせた人々が懸命に救助しようとした姿を伝えた。

《「壁が崩れて、女の子が下敷きになった」

 大阪府高槻市栄町の市立寿栄小学校。大きな揺れが収まった直後、門の前にいた警備員の男性(70)のもとに児童が駆け寄り、こう告げた。

 同小のプール沿いに設置された高さ約2メートル(編集部註:原文ママ)のブロック塀が崩れ、通学中の女児(9)が巻き添えになっていた。男性は近くの住人らと協力して何とか塀を持ち上げようとしたが、最初はびくともしなかった。通りかかったトラックの運転手がジャッキを使って上げようとしたが、それでも上がらなかった。

 消防が来て、ようやく救助された女児の周囲には血だまりができ、呼びかけにも応じることができなかったという》

高槻市も「違法建築物」と認める

 ブロック積工として「現代の名工」にも選ばれた、一級ブロック建築技能士の小林徹氏(46)は、公益社団法人・日本エクステリア建設業協会理事も務める。

 小林氏はブロック塀が倒れた際に生じる桁違いの破壊力について警鐘を鳴らす。

「ブロック塀は1個が15キロ。たったの10個で150キロに達します。まして8段40メートル分の重量が、1.9メートルの高さから落下したとなると、その衝撃力は私のような人間でも想像を絶するレベルです」

 どうして、このような倒壊事故が発生してしまったのか、さる施工業者が匿名を条件に取材に応じた。

「小中学校などから『プールの周囲をブロック塀で隠してくれ』という依頼は、近年になって増加傾向にあります。特に古い学校は道路側からプールが丸見えのところも少なくありません。そして最近は児童や生徒を、変質者などの目から隠す重要性が高まっています。そのためにブロック塀を積み上げるんです」

 建築基準法施工令でブロック塀は地上から高さ2.2メートルと定められている。一方、寿栄小学校の塀は3.5メートルだ。

「現場の小学校に行ったことはありませんが、高さ3.5メートルの壁となると相当な威圧感でしょう。塀に森や恐竜のようなイラストが書かれていたのをテレビで見ましたが、あれで圧迫感をごまかしていたんだと思います。地震後の空撮写真を見ると、基礎部分に鉄骨が入っているようには見えませんでした。高い壁を補強する『控壁(ひかえかべ)』も見つけられなかったですね」

 高槻市は18日、倒壊したブロック塀は「違法建築物」であることを認めた。

求められる施工者の“厳格化”

 ブロック塀の現状は、日本人が大好きな「ものづくり伝説」の真逆をいく惨状だということになる。これには何が背景にあるのだろうか。

「悪質な施工を正当化するわけではありませんが、個人住宅では土地を買い、家を建てると予算が尽きるということは珍しくありません。家を建てても余裕のある建て主さんは、内装費に回すでしょう。ブロック塀に資金を投入する建て主さんは決して多くはないというのが、偽らざる現状だと思います」(同)

 今回の大阪地震では9歳女児の他に、大阪市東淀川区でも街路のブロック塀が崩れ、下敷きになった80歳の男性が死亡した。

6月18日現在、4人の死亡者のうち2人がブロック塀の倒壊を原因として命を落とした。78年の宮城県沖地震から40年が経つ。何か抜本的な対策が必要なのではないか。

「率直に言って、国が見て見ぬふりをしてきたのは事実だと思います。私はブロック建築技能士の試験問題作成に関わっていますが、技能士の資格がなくとも、ブロック工事の施工は可能です。家を建てるには建築士の資格が、現場監督になるには施工管理技士の資格が必要ですが、ブロック工事も同じように技能士の資格が必要とすべきです。人手不足に悩まされている現場は強く反発するでしょうが、痛ましい事故の再発を許すわけにはいきません」(同・小林氏)

 高槻市の濱田剛史市長は記者会見で「死亡事故が発生したことに対し、深くおわびしたい」と陳謝した。菅官房長官は与党幹部との協議会で、全国の通学路にあるブロック塀を点検するよう指示したことを明らかにしている。2人の尊い命を無駄にしてはならない。

週刊新潮WEB取材班

2018年6月19日 掲載


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