“早稲田より慶應人気”人文科学系でも 「文学」「文化構想」「教育」学部それぞれの特徴

“早稲田より慶應人気”人文科学系でも 「文学」「文化構想」「教育」学部それぞれの特徴

「早稲田vs.慶應」進学するならどっち?(3)

 私学の雄、早稲田と慶應。なにかと比較されるのは、社会の中枢で働くOBの数も多いからだ。願わくば早慶に、あるいは、せめて早慶には、と願う受験生も親も多いが、それにしては両校のカラーは隅々まで異なる。第3回では、人文科学系学部を徹底比較する。

 ***

 早稲田大学の劣勢。箱根駅伝で13年ぶりにシード落ちするなど、新年から幸先がよくないところに追い打ちをかけるようだが、事実なので致し方ない。過去2回で詳述したが、人気ではいまや「早慶」ではなく、明らかに「慶早」である。

 かつては名実ともに「早慶」だったのが、人気が慶應義塾大学に移った理由をおさらいしておきたい。

 一つは、SFC(湘南藤沢キャンパス)の開設やAO入試の導入で、慶應が先進的なイメージ作りに成功したこと。次に小論文のほか論述も多い慶應の入試は、難関国公立大の試験問題と親和性が高く、受験日も早いため、東大などと併願しやすいこと。加えて、中学受験時から偏差値で輪切りにされているいまの受験エリートには、規模が大きくて多様な人間がいる早稲田より、学生数が少ない慶應のほうが馴染みやすい――。そんな理由であった。

 第1回では、長く私学ナンバーワンといわれた早稲田大学政治経済学部が、慶應義塾大学法学部とのダブル合格者の71・4%に蹴られた、というデータを紹介した。今回は文学部や教育学部を比較するが、東進ハイスクールを運営するナガセの市村秀二広報部長は、

「人文科学系の学部でも状況は変わりません」

 と言って、続ける。

「早稲田の志望者は文学部と文化構想学部、教育学部を併願する人が多い。ただし慶應を併願して両方に受かった場合は、やはり慶應に行く人が多いですね」

 実際、東進のデータによれば、昨年2月の入試で早稲田の文学部と慶應の文学部にダブル合格した受験生は、82・4%が慶應に進学している。早稲田の文化構想学部とダブル合格者も65・0%が、早稲田の教育学部とのダブル合格者に至っては、92・3%が慶應を選んでいるのである。

ところで上智は…

 ところで掲載表を見て、上智大学が早稲田の合格者にほぼ蹴られているのが気になった方もいるのではないか。上智は1970年代後半から難易度が急上昇し、「早慶上智」と呼ばれるようになった。一時は、早慶や国公立大を蹴って入学する学生も少なくなかったが、

「2000年代以降、志願者が減りました」

 と、市村氏が言う。

「バブル崩壊後、国公立志向が高まるなかでも、看板の外国語学部と法学部は人気を維持していました。ところが、就職が比較的景気の影響を受けやすい文学部から徐々に志願者数が減少。04年、早稲田が講義を英語で行う国際教養学部を創設すると他大学も続き、上智の外国語学部の国際性という点での優位性がやや失われます。また新司法試験で、上智の法科大学院の合格率が低かったことから、法曹を志す受験生が減少。法学部の難易度も下がったと考えられます」

 その後、上智大も改革を重ねているが、かつての難易度は戻っていない。

 さて、早慶の人文科学系学部を志望するのは、どんな受験生なのだろうか。

「早稲田の文学部は、文学を学ぶために志望する人が多かったですが、いま文学系は人気がない。慶應も社会学専攻が人気です。最近は文学部も社会科学寄りのことを学びたい学生が増えている。いずれにせよ、入学後にこんなことを学びたい、という目的意識が明確な人が多いですね」

 大学通信常務取締役の安田賢治氏の話である。

人気の文化構想学部

 では、各学部にはどんな特徴があるのか。最初に早稲田だが、かつての第一文学部(一文)と、夜間の第二文学部(二文)が、07年から文学部と文化構想学部に改められている。駿台教育研究所進学情報部長の石原賢一氏によれば、

「一定以上の年齢の方には、文化構想学部イコール二文というイメージがあるかもしれませんが、一文と二文を併せて改組していて、いまは二文のイメージはまったくない。文学部とのダブル合格者も、むしろ文化構想を選ぶ人が増えています。また文化構想はジャーナリズム論、メディア論、現代人間論、多元文化論などがあって新しいイメージ。しがらみがない分、改革しやすいのでしょう」

 早稲田大学のHPと学部案内を見ると、両学部の前身は1890年に坪内逍遥らが創設した文学科。二つの学部の教育を、約180名もの人文科学領域の教員で組織される文学学術院が担当し、「日本最大級の人文科学系学部」なのだとか。

 そのなかで、文化構想学部のコンセプトは、「従来の学問領域を乗り越えた新しい学びの創造」。六つの論系と22のプログラムで構成されている。一方、文学部は「伝統的人文科学の洗練と深化、未来への継承」がコンセプトで、18コースが用意されるという。

 両学部の特徴は三つあって、一つは「1・3制カリキュラム」。1年次は基礎教育を受け、2年次から専門のコースや論系に所属する。そして二つめが少人数教育で、三つめはブリッジ科目だという。これは「両学部の学生は、どちらの学部の講義も原則自由に履修できるため、文化・人文・社会の各分野にまたがる古典から新領域まで学ぶ」ことができるというものだ。

慶應文の三つの特徴

 続いて慶應の文学部。大学通信の安田氏は、

「慶應自体のブランドイメージが上がるのに伴い、難化したのは間違いない」

 と話すが、カリキュラムなどは不思議と早稲田に似ている。大学の文学部紹介ビデオによれば、やはり三つの特徴があるという。

 その一つは「17専攻、2部門にわたる幅広い研究分野があること」。「研究領域は幅広く、従来の文学のイメージをはるかに超え、学問・芸術、科学を包含する知の体系そのもの」だという。二つめは「専攻の選択は2年次から」で、「どの専攻でどんな研究に取り組むかをじっくり見極めることができる点」で、これは早稲田と一緒である。そして三つめが「125有余年の歴史があること」。早稲田の2学部の前身と同じ年に創設されていたのだ。

 国語国文学や地理歴史など、文学部と重なる学科や専修が多い早稲田の教育学部はどうだろうか。

「少子化で教員採用に不安を感じる人が多いうえ、無償の残業が多いなど、教員という職業のブラックな側面も報じられ、早稲田の教育学部も人気が落ちてきています。しかし、総合大学のなかの教育学部なのでいろんな人と交流でき、個性的な人も多いので、これからの教育改革には有為な人材だと思います」

 と、石原氏は評する。

 だが、HPの学部・学科紹介等によれば、「教員免許の取得が必須でない開放型の教育学部」で、免許の取得率は「学部全体で21%」にすぎないとか。むしろ「12の学科・専攻・専修にわかれ」て、「幅広い教養と深い専門性を身につける」ことが強調されている。

 要は、教員養成が念頭に置かれてはいるが、「学校教員の養成にとどまらず、産学官のリーダー、最先端研究を実現する研究者を養成し、社会の〈教育者〉を輩出したい」というのだ。また文学部との最大の違いは、受験時に一つの学科や専修を選ぶので「1年生の時から専門的な教育を開始できる」という点だろう。

(4)へつづく

「週刊新潮」2019年1月17日号 掲載


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