昨年暮れに明るみに出た、熊本県天草市役所による隠れキリシタン関連文化財の杜撰な管理。露見のきっかけは所有者の通報だった。

 地元記者によると、

「天草市では10年にわたり、天草ロザリオ館と本渡(ほんど)歴史民俗資料館で隠れキリシタンの“信心具”などを保管・展示してきました。ところが今から1年前、それらの寄託者から市の担当者に“マリア観音像や根付などに油性ペンで数字が書き込まれている”という指摘が寄せられたのです」

 寄託されていたのは389点。うち41人から預かった180点に被害があった。

「そこには熊本県が文化財に指定した9点も含まれていました。それにしても市長が議会で経緯説明とお詫びを表明したのは発覚から10カ月後。なんとも呑気な話です」(同)

 貴重な歴史的文物に油性ペンで書き込みがされた経緯も“牧歌的”だ。

「2010年に史料をデータベース化した際、担当学芸員の専門がたまたま考古学だったのが不幸でした。遺跡などから出土した石器にマーカーで番号を振る考古学の現場と、まったく同じ感覚で信心具に直接記入してしまったんです」(同)

 さらなる不幸は当の学芸員がすでに定年退職し、後輩にあたる現在の文化課員たちが矢面に立つハメになったこと。彼らは寄託者へのお詫び行脚に駆り出されたが、その甲斐あってか、

「寄託者のほぼ全員に謝罪を受け入れていただきました。今後はさらに承諾を得ながら、修復に向けた作業を進めることになります」(天草市文化課担当者)

 すでに文化財保存修復学会などの団体や、修復の専門家たちにも接触中で、この文化課担当者いわく、

「見積もりがとれ次第、議会に修復のための予算計上を諮る予定です。中にはマリア観音像が保管されていた木箱や掛け軸の軸部分になされた書き込みなど修復不能なものもあり、買い取りも視野に入れています」

 ことは結局カネ(=予算)の問題にもなっているが、今月25日に開会予定の市議会に算定は間に合うか。

「なんとかしたいとは思っています……」(同)

 天草の潜伏キリシタン関連遺産は2年前に世界文化遺産に登録された。誇るべき文化財のスムーズな修復を主に祈るばかりだ。

「週刊新潮」2020年2月13日号 掲載