新型コロナウイルスがもたらす不況に加え、4月以降に実施される「制度改正」によって、われわれ庶民の収入は大幅に減る可能性が……。前回記事「『アベ大恐慌』に備えよ 新型コロナと“人気取り政策”が国民の財布を直撃」が報じたのは、“世論を意識した安倍政権の人気取り”との声もあがる政策が、コロナ禍に重なって負担となる「アベ大恐慌」の実態だった。家計を防衛するにはどうすればよいのか。

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 経済ジャーナリストの荻原博子氏はこう言う。

「マイナス金利で利息はほぼつきませんが、デフレ下ではキャッシュを銀行に預けておくのが一番。その上で、家計を守るため、手始めに毎月の支出を書き出してみましょう。そして、金額の大きな部分を削っていく。見直しを検討すべきは保険・通信費・車です。生命保険は子どもが18歳になるまでの“教育費”として1千万円ほど保障されるものに入っておけばいいんです」

 そこで、保険に詳しいファイナンシャルプランナーの長尾義弘氏に尋ねると、

「よく人生で一番高い買い物はマイホームと言われますが、2番目が生命保険という家庭はかなり多い。一昨年に生命保険文化センターが発表した調査結果では、生命保険の加入率は88・7%で、1世帯当たりの平均年間保険料は38・2万円。40年間払い続けると、実に1528万円にのぼります。ただ、こうした保険のなかにはムダな例も少なくありません。確かに、子どもが幼いうちに世帯主が亡くなるのは大きなリスクですが、高額な生命保険ではなく、収入保障保険に入っていれば問題ありません。残された家族が毎月分割で保険金を受け取れる内容です。子どもが小さな頃は保障が手厚く、成長するにつれて保障が小さくなる。その分、保険料は安いのです」

医療保険はムダ

 日本には医療費の自己負担が3割で済む健康保険があり、一定額を超えるとその分が払い戻される高額療養費制度も存在する。そのため、医療保険はムダな保険の代表例。20万円ほどの貯蓄があれば、わざわざ医療保険に加入するメリットはないという。加えて、

「現在の生命保険を継続するにしても“特約”は見直した方がいいでしょう。生命保険は主契約と、オプションの特約の組み合わせでできています。たとえば、災害割増特約や女性疾病入院特約、三大疾病特約、介護特約などを外すだけで月額1万円近い保険料を減らすことができます。介護特約などは、保険料も高めですし、最近は緩和されてきたものの要介護4〜5や、高度障害に近い状態にならないと保険金が下りない商品も残っています。そんな特約をつけるよりNISAやiDeCoを利用した方がよっぽどいい」(同)

 続けて、通信費の節約術を解説するのはITジャーナリストの三上洋氏。

「総務省の発表によれば、大手キャリア利用者の平均通信料は、毎月5952円。70〜80代でも4千円を超えている。スマホの普及によって老若問わず通信料が膨らんでいることが分かると思います。端的に言えば、スマホの料金は家計のなかでも最も削りやすい固定費です。光熱費はどれだけ手間をかけても節約できるのは数百円程度ですが、スマホの通信費は年間数万円減らせる。ひと月のデータ通信量が5GB以下ならライトプランで十分に賄えるので料金プランを変更するといいでしょう。さらに、格安スマホに乗り換えると月額4千〜5千円安くなります」

 格安スマホは大手キャリアの回線を借りているため、利用が集中する昼休みや仕事終わりの時間帯には通信速度が遅くなる。実店舗が少ないので大手キャリアに比べてサポートが手薄な面も否めない。

 とはいえ、

「通信速度が遅くてもメールやSNSでのやり取りに支障はありません。それに、実店舗には年に何度も通うわけではない。前回の機種変更以来、足を運んでいない人も多いはずです。私の場合、メインは大手キャリアですが、サブと家族用は格安スマホを使っています。ひと月の利用料金は家族4人合わせて6千円程度。すべてが大手キャリアの場合よりも2万円はお得になりますね」(同)

 友人とのメッセージのやり取りや通話を、LINEやSkypeでこなしている子どもたちには、データ通信専用の格安スマホが便利。安ければ月額数百円の料金で済んでしまう。

車は売るべし

 節約アドバイザーの丸山晴美氏が言及するのは“車”の扱いについてだ。

「都内に住んでいて週末しか車に乗らない方は、思い切って売ってしまうべきだと思います。車はローンの支払いだけでなく、自動車保険や車検費用、ガソリン代にタイヤの交換代など、とにかく維持費の負担が大きい。都心であれば駐車場代だけで5万円、少し郊外でも2万円前後は掛かります。最低でも年間50万円の出費ですからタクシーを利用した方が安上がりなこともある。その点、カーシェアリングなら15分200円台から借りられて、他の経費は必要ありません。車が生活や通勤の足となっている家庭では、エコカー減税が適用されない自家用車から軽自動車に乗り換えるだけでも重量税の節約につながります」

 最後に、プロが頭を抱えるような相場であることは承知の上で株の運用について触れてみたい。株式評論家の植木靖男氏によれば、

「今回の暴落は1987年のブラックマンデー級です。とはいえ、個人的にはこの辺りが“セリングクライマックス”、つまり、底値ではないかと考えています。8割の人が大騒ぎしている時に、落ち着いていた2割の人が勝つ。これが株取引の鉄則です。下落が続けば不安は募るでしょうが、保有している株を売るべきではありません。株価はいつか戻るからです。もし経済的に余裕があるのなら、いまは買い時でもあります。ただ、業種や銘柄を限定して個別株を買うのはさすがにリスクが高い。コロナショックの影響で倒産の可能性もありますから、日経平均株価に連動するETF(上場投資信託)に投資するのがいいと思います」

 確かに、日銀が大量に買い込んでいるのもこれだ。

 また、2005年に元手800万円から株式投資を始め、総利益が35億円を突破した個人投資家のテスタ氏はこう語る。

「いまは新型コロナウイルスの恐怖が招いたパニックで、誰もが売りに走っている状態。欧米を含めて感染拡大が頭打ちになったり、ワクチンが開発されるといった直接的な好材料がない限り、どんな経済対策を講じても株式市場を巡る状況は変わらないと思います」

 凄腕トレーダーも、まだ市場に復調の兆しは見えないという。ただ、株自体は購入しているそうで、

「日経平均が2万2千円を割ってから、500円下がるたびに2500万円ずつ2銘柄を買っています。1万円まで下げても買い続けるつもりです」

 テスタ氏がブログで公開する記録によれば、2万円を割り込んだ3月9日以降に購入したのはJR東日本、長谷工、三菱重工、第一生命、ブリヂストンなど。

「他にも、コロナの影響がない業種にもかかわらず値を下げている銘柄は狙い目かもしれません。たとえば、ネットゲームや動画配信サイトの関連株は多くの人々が外出を控えるなか、むしろ利益を上げている可能性もある。私の場合は、配当利回りや時価総額、毎年の利益にブレがないかなどを考慮して、新型コロナウイルスの影響を受けてもおそらく潰れないであろう会社を選んでいます。常に最悪の事態を想定しながら、不測の事態が起きても“生き残れる”ように心がけるべきです」(同)

 また、別の投資家も、

「インバウンドへの影響を懸念して、資生堂株は年初から2千円以上下げています。ただ、2月に発表した昨年の業績は過去最高更新で、今後の反発はありうる。また、ディズニーランドの休園が続くオリエンタルランド株も年初から4千円近く下落しましたが、コロナ問題が収束すれば大きく戻す可能性がある」

 コロナ禍と「アベ大恐慌」がもたらす長い“冬”。自らの力で生活を守り、乗り越えるしかない。

「週刊新潮」2020年3月26日号 掲載