新型コロナウイルスの蔓延により、我々はさまざまな事象の「本当の姿」を目にすることになった。とりわけ、指導者たちの力量はかつてないほど可視化された。役に立たないマスクを配って失笑を買った安倍総理をはじめ、多くの政治家が評価を下げる中、「役者」としての実力を遺憾なく発揮しているのが東京都の小池百合子知事である。

小池都知事のカウンター

 そんな彼女がスポットライトを浴び続けてこられたのは、「無策な国」という敵の存在あってのこと。現在は「Go Toトラベルキャンペーン」の旗振り役である菅義偉官房長官と舌戦を繰り広げている。

 7月11日、北海道千歳市での講演で国内の感染者増加について菅官房長官が、

「この問題は圧倒的に東京問題と言っても過言ではないほど、東京中心の問題になってきている」

 と語ると、その2日後、小池知事はこう応戦した。

「Go Toキャンペーンが始まろうとしている中で、(感染対策との)整合性をどう取っていくのかは、むしろ国の問題だ」

 それにとどまらず、感染拡大防止策を「冷房」、「Go Toキャンペーン」を「暖房」に例え、

「冷房と暖房の両方をかけることについて、どう対応していくのか」

 と述べたのは、実に小池知事らしい“カウンター”だったと言えよう。

「東京都の問題」

 しかし、反撃を受けた菅官房長官がグラつくことはなかった。22日、東京都発着の旅行を除外した上で「Go Toキャンペーン」は予定通りスタートしたが、その3日前の19日、フジテレビ系の報道番組「日曜報道 THE PRIME」に出演し、改めて「東京問題」に触れたのだ。菅官房長官がそこで言及したのは、軽症者が滞在する宿泊施設について。東京都が確保しているホテルの部屋数が、

「6月30日には2865室確保していたが、7月7日には1307室。そして16日には371室」

 に減少したと主張し、こう批判してみせたのだ。

「そこはやはり東京都の問題。いざ増え始めてから今必死になって探している」

 なるほど、それが事実なら由々しき事態に違いない。しかし、実はそこにはからくりが存在する。

「あの主張は、東京都が1棟丸ごと借り上げたホテルが一時的に契約満了となったことによる数字のマジックを利用したもの。あの発言の後、小池さんに『再び2千室を確保』などと反論され、菅さんは苦虫を噛み潰したようでした」(政府関係者)

「東京都の失政を探せ」と命令

 かような数字のマジックまで用いて「東京攻撃」を続けるのは何故なのか。さまざまな思惑が絡んだその背景に分け入っていくと、菅官房長官の「本当の姿」が見えてくる――。

「菅さんは官邸幹部らに対して『東京都の失政を探せ』と命じています」

 全国紙の政治部デスクはそう話す。

「元々小池さんと東京都が嫌いだからというのもありますが、小池さんを潰すことによって自分の存在を誇示できる、との考えもあるようです。さらに、今は政府に向けられている国民の批判の矛先を東京に持っていこう、という狙いもあるでしょう」

 無論、その念頭には不首尾に終わりそうな「Go Toキャンペーン」がある。

「『Go Toキャンペーン』の失敗は自分の政治的影響力の低下に繋がる。東京で感染が拡大していることを繰り返し槍玉にあげているのは、『キャンペーンが失敗に終わったのは、東京が大変なことになっているから』と人々に思わせるためでしょう。そうして自分を守り、小池批判を踏み台にして存在価値を高めようとしているわけです」(同)

「ポスト安倍」を視野に

 少し前までは安倍総理との隙間風ばかりが報じられ、コロナ対策でも影の薄さが否めなかった菅官房長官。ここへきて急速に発言力が増しているのは、

「『10月解散・総選挙』の可能性を見越してのことでしょう」

 と、政治部記者。

「菅さんとしては、東京都のコロナ対策が全くダメであることを徹底的にアピールして東京への責任転嫁を果たし、『危機管理はやっぱり菅じゃないとダメだ』という印象を強めたい、との思いがある。その上で新型コロナウイルス対策の特別措置法の早期の改正を大義名分とする総選挙を安倍総理に具申し、自民党を大勝に導けば『ポスト安倍』が見えてきます」

「週刊新潮」2020年8月6日号 掲載