英バッキンガム宮殿にも採用されたというのだから、日本なら「宮内庁御用達」である。画期的な防錆効果があると謳う「NMRパイプテクター」のことだ。

 この防錆装置、電車の広告でもよく見かけるが、製造元の「日本システム企画」によると、導水管に設置すると赤錆を防ぎ、それまであった赤錆も黒錆に変えることで寿命を40年以上延ばせる。コストも通常の更新工事の5分の1〜10分の1で済み、これまで4200棟以上で導入されているという。同社のホームページには、実績として前出のバッキンガム宮殿のほか、兵庫県川西市の小学校などがずらりと紹介されている。

 これほどの技術と実績があるのなら、全国から賞賛の声が寄せられるはずだが、千葉県浦安市では、なぜか導入を巡って紛糾している。

 話すのは、浦安市の広瀬明子市議だ。

「NMRパイプテクターは2018年に浦安の『Wave101』という市民施設で試験導入したのですが、今度は、競争入札なしに1700万円以上をかけて、2件目の導入を進めていた。他にはない技術だからというのが理由です」

 市議が憤慨するのは科学的根拠に疑いの声が噴出していたからだ。それによると、NMRパイプテクターは特殊な磁石と金属の焼結物質で出来ており、電源を使わずに特定の電磁波を発生させる。これが赤錆を抑える「原理」だという。ところが20年近く前から、大学の研究者や専門家からインチキではないかという指摘が相次いでいた。

 その一人、山形大学の天羽優子准教授が言う。

「日本システム企画の主張は原理的にあり得ないと2001年に指摘したところ、同社は東大の宇宙研の先生も認めている理論だと抗議してきました。しかし、その方の名前を聞いても教えてくれません。結局、訴えると通知してきただけで、訴状は届いていません」

 そこで、日本システム企画に聞くと、

「担当者から返事させる」

 と言ったきり。期限まで回答はなかった。

 疑惑の「錆落とし」は、いまもできていないようだ。

「週刊新潮」2020年9月24日号 掲載