「現代ビジネス」に10月9日に掲載された「『上級国民』大批判のウラで、池袋暴走事故の『加害者家族』に起きていたこと」という記事が大きな話題となりました。同事故の飯塚幸三被告(89)の家族に対し、「家族も同罪」「家族も死刑」といった声がネットに出ていることなどを紹介し、加害者家族叩きをしても解決にならない、と問題提起をしています。

 著者で加害者家族の支援を行うNPO法人World Open Heart理事長の阿部恭子氏は、飯塚被告の家族と話をしていて、その提言には共感できます。

「上級国民」と呼ばれる飯塚被告については、「逮捕されなかった」「判断力が低下しているのに運転した」「メディアが忖度して『元院長』の肩書で報じた」「若い2人を殺したのは許せない」などから、ネットで近年稀に見る激しい叩かれ方をされています。

 公判でも、飯塚被告はお詫びの言葉は口にしたものの、あくまでも車が悪い、という主張をしたため再びバッシングは過熱。

 あのさ、あなたが乗っていたプリウスのメーカーであるトヨタから巨額の名誉毀損や損害賠償の裁判起こされたらどうするの?とは思うものの、家族は関係ない。当然「家族が運転免許を返納させておけば良かったんだ!」という反論があるのは分かりますが、ここまでくると加害者家族が一家心中でもしない限り、家族を叩きまくっている皆さんは許さないんでしょ?

 2008年の「秋葉原通り魔事件」の加害者・加藤智大の弟と、14年に長崎県佐世保市で発生した「高1同級生殺害事件」の加害者の父は自殺しています。「死んでお詫びを」という言葉がありますが、まさに世間様の怒りはそれを加害者家族に強いるわけです。

 実際に死んでしまったら「おっ、おう……」と振り上げた拳を下ろさざるを得なくなる。ネットで激しく誹謗中傷をしていた者は、相手が死んでしまった後はうしろめたさを感じ、今度は「お前が殺した!」と非難されて身元を特定されないためにもサッとIDを削除。「そこまでのつもりはなかったんだよ!」と思うのがセットになっています。

 ネットで加害者家族を猛烈に批判する人々による、「被害者宅まで訪れて『今の気持ちは』などとやるマスゴミも悪い」式の糾弾も定番。確かにそうですが、「そっちもやり過ぎだが皆さんもやり過ぎ」。なお、フレンチに遅れるから暴走した、という「上級」度合を上げる印象操作報道について、家族は冒頭の記事の中で否定しています。

 日々、ネットで苛烈に誰かを叩いている人に対しては、「何のカネにもならないのによくやるよな」と思います。私自身、ネットに実名でガンガン発言しておりますし、こうして公の場でも発言します。これはカネになるからやっているんですよ。もしも一切カネにならないのであれば、一瞬スッキリするものの、後に身元が明かされて名誉毀損の裁判を起こされたり、自分の職場に電凸が相次いだりして、解雇されてもおかしくない。

 そう考えると、日々義憤の気持ちからネットに強い言葉で悪口を書くボランティアの皆様方の「蛮勇」に敬服します。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

「週刊新潮」2020年10月29日号 掲載