「法的根拠はないから逮捕できません」。こう豪語してきた政治団体「つばさの党」代表の黒川敦彦容疑者(45)ら3人が、衆院東京15区補選における公職選挙法違反容疑(選挙の自由妨害)でとうとう逮捕された。国家権力相手に限界まで挑発を繰り返した末の逮捕。いったい彼らは何をしたかったのか…。

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本部前に警官を数十人動員して「鉄壁ガード」

「逮捕はありうると警戒はしていましたが、まさかこんなに早いとは思っていませんでした。家宅捜索後に“お礼参り”とばかりに続いた本部での街宣活動に、警視庁の堪忍袋の緒が切れた可能性はあります」(警視庁担当記者)

 黒川容疑者らつばさメンバー3人は逮捕前々日の15日、「警視庁の前にテントを張って座り込む」とSNSで予告してから車で桜田門に向かった。3夜連続の“桜田門凸”だった。

 だが、警視庁は鉄壁のガードを敷いて待っていた。道路脇に無数の三角コーンや数台の警察車両、数十人の警察官を配置し、庁舎前に車両を停車できないよう対策。厳重すぎるガードを見た黒川容疑者は「何これ、面白すぎるじゃん!」と大はしゃぎで下車し、座り込みを断行しようとしたがすぐに警察官に取り囲まれ、結局、退散を余儀なくされた。

 現場には反つばさ派のメンバーも集まり、「天皇陛下がいる皇居の前でやめろ!」「エセ右翼!」と怒鳴り合いまで始まり、大混乱となった。

 13日の家宅捜索の直後も黒川容疑者は生配信で「やればやるほど俺ら喜んじゃうもんね」と言って、東京都練馬区の小池都知事の私邸前への街宣を敢行。

 これもXで予告していたため現場には約50人の支援者、マスコミ、警官が集結して閑静な住宅街は騒然となった。(5月14日配信【「つばさの党」は家宅捜索に大はしゃぎ 数時間後に小池都知事の自宅を「逆ギレ街宣」 YouTubeでは「今日はモテそうだからクラブに飲みに行く」】で詳報)

「やりたい放題の彼らに業を煮やしたのかもしれません」(前出・記者)

「警察が来たかも…」インタビュー中、不安をこぼした根本容疑者

 一方、強気を貫き通してきたように見えるつばさ側も、ずっと逮捕を警戒していた。選挙直後の4月30日、「デイリー新潮」は黒川容疑者と今回共に逮捕された根本良輔容疑者(29)の2人にzoomインタビューを行ったが、途中、自宅にいたと思しき根本容疑者が「警察がやってきたかもしれない」と離脱する場面があった。

「今、一緒にいる人が外に誰か立っているから警察が来たんじゃないかと言ってきたのですが、多分、気のせいだったと思います」(根本容疑者)

 戻ってからこう語った根本容疑者はどこか落ち着かない様子だった。7月の都知事選に本当に出馬するのかと聞いた時も、「警察の動き次第ではありますが、出るつもりです」と警察の動きを気にしている様子だった。

真の目的は「都知事選の妨害阻止」

 ある警察関係者は「上の強い意向が働いた」と語る。

「選挙中に自由妨害で『警告』した際は、警視庁はこれが限界というスタンスだった。だが、最終日の2日前になって急に『微罪でもいいから奴らがちょっとでも法を犯した瞬間、現行犯逮捕しろ』と現場に指示が降りたことがあった。選挙後もしばらくは立件に慎重な姿勢を示していましたが、連休が明けたくらいから公選法を管轄する総務省と連絡を取り合いあたふたしていた。今回の逮捕はガーシー氏の時と同様、国の意向を受けた国策捜査だったと言える」

 今後はどうなるのか。

「黒川容疑者らは一貫して『違法性はなかった』と主張すると思われますが、捜査2課も特別捜査本部を設置し、徹底して彼らがやってきた不法すれすれの行為を立件していく方針です」(同)

 警察側の“真の目的”は別にあるという。

「来る7月の都知事選での妨害行為を阻止することです。起訴後も捜査が継続中という理由で勾留され、都知事選が終わるまで出てこられない可能性が高い。そうなると立候補はできても選挙活動はできなくなります」(同)

 つばさの党残党は幹部3人不在でも活動を継続していくとSNSで明かしているが、

「あの3人の戦闘力なくしては無理でしょう。騒ぎは沈静化していくのでは」(同)

デイリー新潮編集部