小役人タイプ!?

 どうやら辞めないらしい──。スポーツ報知(電子版)は3月1日、「全柔連・山下泰裕会長が続投の意向を明かす 幹部のパワハラ疑惑で一時は辞任示唆も」との記事を配信した。

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 2月26日、共同通信は「全柔連でパワハラ疑惑、公表せず 威圧的な言動、前事務局長退職」の記事を配信した。

《前事務局長が複数の職員に対して威圧的な言動を繰り返すなどパワーハラスメントが疑われる行為を繰り返していた》

 全日本柔道連盟(全柔連)会長であり、日本オリンピック委員会(JOC)会長でもある山下氏は、同日に記者会見を開いた。

 自分の責任が大きく、全柔連会長としての職責を果たしていなかったと陳謝した。ここまではいい。その後が問題だった。

 コンプライアンス委員会からパワハラの報告書を受け取った山下会長は、4人の副委員長と協議。懲戒委員会は開催せず、理事会への報告とマスコミへの発表も、共に見送ると決めたことも明らかになったのだ。

 完全な「密室協議」が行われていたことに、世論もメディアも反発した。ここでは2紙の記事見出しをご紹介しよう。

“逃げの一手”

◆「【記者の目】山下泰裕会長が隠蔽したと取られても仕方ないだろう…全柔連パワハラ疑惑」(2月27日:スポーツ報知・電子版)

◆「今度は全柔連のパワハラ隠蔽疑惑 山下泰裕会長の無責任すぎる対応」(同日:日刊ゲンダイDIGITAL)

 記者会見で山下会長は進退についても触れ、「自分だけでは判断できないが、全ての可能性がある」などと発言。複数のメディアが辞任の可能性を報じた。

 ところが2月27日頃から、一部の通信社やスポーツ紙が「続投」の可能性を報道。そして3月1日、冒頭でご紹介した記事のように、スポーツ報知が本人に訊いて確定的になったというわけだ。

 さて、ここで時計の針を大きく戻そう。2013年3月、全柔連が日本スポーツ振興センターから助成金を不正受給していた問題が発覚した。

 当時の会長は上村春樹氏(70)。山下氏は同年8月に全柔連の理事に再任され、副会長に就任した。当時、取材に当たっていた記者が振り返る。

「当時の山下さんは逃げの一手でした。新聞社だけでなく、テレビ局や週刊誌など、ありとあらゆるメディアが詰めかけても、完全な取材拒否。全柔連が自浄作用を発揮するか大きな注目が集まっており、山下さんは副会長という要職に就いていました。説明責任が求められていたはずですが、その義務を山下さんが果たすことはありませんでした」

山下会長は密室好き!?

 東京五輪組織委員会の森喜朗前会長(83)が、“女性蔑視とも取れる発言”を行ったことが大きく報じられた際、同席していたJOCの山下会長は「指摘する機を逸してしまった」と弁明した。だが、この釈明に納得した人は少数派だろう。

 スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏は、「不正受給、森発言、そしてパワハラ問題を振り返ってみると、山下氏は一貫して同じ対処法を選んでいることが分かります」と指摘する。

「常にマスコミを避けて説明責任を果たさず、密室で物事を決めようとするのです。森さんの後任を決める候補者検討委員会も非公開で批判が集まりました。山下さんは『非公開にすべきと言った』とマスコミに認めています」

 前出の記者は「柔道選手としては傑出していましたし、素晴らしい人格の持ち主でもあります。しかしながら、リーダーシップは疑問視せざるを得ません」と言う。

 谷口氏も「山下会長にリーダーシップが欠如しているのは、ある意味で当然なのです」と解説する。

「山下さんはイギリスへの留学経験があるようです。とはいえ、スポーツやリーダーシップについて、大学院などで深く学んだ経験は皆無でしょう。そもそも山下さんが柔道やオリンピックの未来について、ビジョンを語ったことなど一度もないのです。山下さんは金メダリストという“レジェンド”を背景に、組織の中で徹底的に守りに入ることで出世していきました」

強固な森=山下ライン

 意外や意外、全柔連会長でもJOC会長でも、リーダーとしての山下氏は「とにかくつつがなく、物事を平穏に進めていこう」という“小役人タイプ”だというのだ。

 こういうタイプは、世論の大多数が東京オリンピックに賛同し、盛り上がっているのなら力を発揮するかもしれない。

 だが、世論の多くが五輪の開催に疑問を抱いている。逆風を山下会長が跳ね返すかどうかが問われている。

「ああ見えて山下さんは、出世欲が強いのだと思います。加点主義ではなく、『とにかくミスをしない』という減点主義で全柔連とJOCの会長となりました。しかし世間は『山下さんにトップとしての力量はない』と気づきつつあるのではないでしょうか」(同・谷口氏)

 前出の記者は「とにかく、森さんが山下さんを可愛がったことも大きいと思います」と言う。

「実際のところ、ロシアのプーチン大統領が山下さんを尊敬しているなど、森さんにとって山下さんの“利用価値”は高かったのです」

 谷口氏も「山下さんは、森さんと政府のほうしか見ていません。アスリートファーストを忘れてしまっています」と苦言を呈する。

 果たして山下氏は、全柔連の混乱を沈静化させ、東京オリンピックの開催に向けてリーダーシップを発揮できるのだろうか。

デイリー新潮取材班

2021年3月5日 掲載