GPファイナル優勝「紀平梨花」はどこがすごいのか 浅田真央との違いは?

GPファイナル優勝「紀平梨花」はどこがすごいのか 浅田真央との違いは?

 日本の女子フィギュアに新星が現れた。12月9日(日本時間)カナダ・バンクーバーで行われたグランプリファイナルの女子フリースケーティングで、16歳の紀平梨花(関西大学KFSC)が合計233・12点で初出場初優勝の快挙を成し遂げた。それも、昨年のグランプリファイナルで優勝し、今年の平昌オリンピック金メダルのザギトワ(16)を制しての栄冠である。

 紀平はどこが優れているのか、浅田真央(28)とは何が違うのか、元国際審判員でフィギュア解説者の杉田秀男氏に聞いた。

 ***

――日本選手とロシア選手3人ずつで迎えたGPファイナル。総合成績は、1位:紀平(233・12) 2位:ザギトワ(226・53) 3位:トゥクタミシェワ(215・32) 4位:坂本花織(211・68) 5位:サモドゥロワ(204・33) 6位:宮原知子(201・31)と、ザギトワのみならず、平昌オリンピック出場の日本人選手も翳む強さだった。

杉田:もうね、紀平さんはいま、フィギュアで演じることが楽しくて仕方がないのだと思いますよ。伸び伸びと演じており、試合に出るたびに実力がついてくる。練習と違って、試合となると心理面やコンディションなども影響してきますが、試合を重ねることで慣れも出てくる。紀平さんは今シーズンは滑るたびによくなっていて、伸び盛り。フリーでは序盤にトリプルアクセルで崩れましたが、即座にトリプルアクセル+2回転トゥループに変更して立て直すなど、始めにミスをしても引き摺らない。今の強さは誰にも止められない状態です。

――いきなり強くなって現れた感すらあるが。

杉田:もともと紀平さんは運動能力が高く、ジャンプだけならジュニアの頃からシニアに負けない実力がありました。ただし、それらを結びつける表現力をつけるには試合経験が重要です。昨年あたりから、表現力が加わってきて、さらにジャンプも思い切って飛び、絶えず攻めているので、動きが小さくまとまることがないのです。それには守るものがない、という強さもありますから。

――ザギトワは勝ちを意識しすぎたのか。
 
杉田:確かに、ザギトワは勝って当然のような見られ方をされ、守りに入ったようなところがありました。守りに入ると動きは悪くなりますから。それと女性の場合は身体の変化も重要です。ザギトワは平昌五輪後の半年で身長が7センチも伸びたそうですし、見た目も平昌の時は少女でしたが、急に大人っぽくなりました。滅多にミスをすることがなかった彼女が思い切った動きができなかったのは、心境と身体の変化の影響だと思います。

真央にない“力強さ”を併せ持つ

――GPデビューシーズンの初優勝は、2005年の浅田真央以来という。彼女との違いは何だろうか。

杉田:真央さんとの比較は、時代もルールも違いますから単純にはできません。彼女はジュニアの頃から体の使い方が自然体で、力強さはないけれど、非常にスムーズでした。そして苦労することなく、もちろん本人は一所懸命に練習していたのですが、他の選手ほどシビアな練習を要求されませんでした。彼女の場合、教える側にとっては“できてしまうから始末が悪い”と言われたほどの才能があったからです。だからこそ、エッジでの踏み切りやスピンのルールが厳格化したときなどは、それまで自然に飛んでいたやり方を新しいルールに合わせるために苦労することにもなったのです。

――紀平の場合は?

杉田:彼女のジャンプには力強さがあり、タイプとしては伊藤みどりさん(49)に近い。だからといって、ジャンプばかりでなくなってきたのは、練習環境に恵まれたところも多いと思います。先輩には、“練習の鬼”と呼ばれる宮原がいて、それを目の当たりにしていますし、濱田美栄コーチは基本を大事に教えることで有名です。練習は嘘をつきません。才能のある子にそれが加わったら怖い物なしですよ。

――ロシア勢では、ザギトワ以外にも4回転3種(サルコウ、トゥループ、ルッツ)を飛び世界ジュニア選手権を制したトルソワ(14)が、今後のライバルになると言われる。

杉田:女子の試合で4回転サルコウを跳べたのは安藤美姫さん(30)とトルソワだけ。でも、紀平も練習では成功しています。いずれ試合でも披露することになるでしょう。ただ、いくら回転の多いジャンプを跳べたところで、結局は“質”が問われます。男子の羽生結弦選手(24)があれだけ評価されるのは質の高さです。跳ぶ前の準備、空中でのコントロール、そしてランディングに至るまでのレベルの高さが問われます。トルソワはまだ14歳ですし、紀平の得意とするトリプルアクセルは苦手とも言われていますからね。

――トリプルアクセルが紀平の武器といってよいのだろうか。

杉田:バックから前に向かって飛ぶ他のジャンプと違い、前を向いて飛んで3回転半回るアクセルは、たしかにまだ女子ではできる選手は少ない。ですが、来シーズンあたりには続々と出てくると思います。そうなると問われるのは、プラス要素があるかないかの質になる。マイナスの要素が少なく、プラス評価が高いところが紀平の武器でしょう。

――北京五輪は紀平で決まりか?

杉田:GPファイナルはたった6人だけでしたからね。世界選手権など多くの選手と闘っていませんので、まだ世界№1とは言い切れません。またオリンピックは4年に1回しかないので、実力に加えて運も必要です。世界一を3回も獲っている真央さんだって、オリンピックだけには恵まれませんでした。紀平の場合、まだ完成形ではありません。今は強くなっているときであり、その後に上手くなってくる。もちろん、期待しています。

週刊新潮WEB取材班

2018年12月10日 掲載


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