日本代表“ミャンマーに2−0で勝利は物足りない”という意見は時代遅れのサッカー観

日本代表“ミャンマーに2−0で勝利は物足りない”という意見は時代遅れのサッカー観

“決定力不足”とは異なる問題

 サッカー日本代表は9月10日、ミャンマー代表に2−0のスコアで勝利した。この得失点差を、サッカージャーナリズムやサポーターは、どう評価しただろうか?

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 2022年カタールW杯のアジア2次予選グループF、日本は初戦でミャンマーとアウェーで対戦、中島翔哉(25)のミドルシュートと南野拓実(24)のヘッドによる追加点で完勝を収めた。

 この試合結果に、一部のサッカーメディアは不満を表明した。どんな内容だったのか、要点を列挙しておく。

◆特に後半は0−0で、シュートを29本も放ちながら、2−0は物足りない。

◆森保一監督も「勝利したことは本当に素晴らしいですが、試合を決める3点目を奪うチャンスはあったと思います」と述べた。

◆ワールドカップ予選は得失点差が重要になることがある。得点が取れる時に、できるだけ多くのゴールを奪うことが必要。

 ツイッターでも、同じ視点に立ったサポーターの“苦言”が見られた。「ミャンマー相手に2点は物足りない」、「得点が取れる試合は、しっかり決めてほしい」、「ミャンマー戦なら5−0くらいで決めないと、強いチームには勝てないのでは?」————という具合だ。

果たして、こうした指摘は正しいのだろうか? まずは試合の流れを改めて確認しておこう。

 日本はアウェーながら、立ち上がりから攻勢に出た。9月5日のパラグアイ戦と同じスタメンで、システムも同様の4-2-3-1。対するミャンマーもパラグアイと同じ4-1-4-1を採用した。

 このため中島が中盤の「1」の横のスペースを有効活用しただけでなく、パラグアイ戦ではサイドに張ることの多かった堂安律(21)もセンター寄りにポジションを移してプレー。彼らのポジション取りにより、左右の両サイドには広大なスペースができたため、長友佑都(33)と酒井宏樹(29)の両SBは、プレーのスタートラインがサイドMFのような高い位置取りでミャンマーを押し込むことができた。

森保監督の誤算?

 こうしたゲームプランについて、森保一監督の指示だったのか選手の自己判断だったのか試合後の会見で質問したところ、率直な回答をいただいた。以下の通りだ。

「そうですね、両方言えます。相手の状況を見て、インサイドのポジションを取るということと、(たぶんSBの攻撃参加で)相手も開くということを判断していく部分で、チームとしてやっていくこと。あとは対戦相手の状況を見て自分たちが判断していくということ。そこはチームとして基本ベースがあるなか、選手たちが相手の嫌がる判断をして、プレーしてくれている」

 森保監督に誤算があったとすれば、後半もミャンマーは日本の攻撃に対して何の対策も取ってこなかったことではないだろうか。

 記者席から試合を見ていて、後半はダブルボランチにするなど中島と堂安対策を講ずるのではないかと予想した。しかしミャンマーのミオドラグ・ラドゥロビッチ監督(51)は同じシステムでの戦い方を貫いた。

 監督に就任して4ヶ月。日本のFIFAランク33位に対しミャンマーは135位。ポテンシャルの違いは改めて言うまでもない。

 このためラドゥロビッチ監督は、例えばDFラインに5〜6人を配して専守防衛で日本の攻撃に耐えるのではなく、将来を見据えて“いつも通り”のサッカーで日本に挑んだと推測される。付け焼き刃の守備固めでは日本に通用しないと考えたのかもしれない。

 試合後の会見でもラドゥロビッチ監督は「負けてうれしいとは言えませんが、ポジティブな要素が多く見つかりました。就任4ヶ月でトップレベルの日本との対戦はとても難しかったですが0−2という結果で選手は戦術面を学び、闘う姿勢を見せ、我々のGKも良かったですし、日本からプロとしての姿勢を学べたと思います」と敗戦を前向きにとらえていた。

 森保監督にすれば、ミャンマーが戦い方を変えてきたら、それにいかに対処するか。選手交代を含めて“次の一手”を試したかったのではないだろうか。

 さて、こうした格下相手に2点しか取れなかったことを不満に感じる方は多いかもしれない。私自身もW杯予選初出場の鈴木武蔵(25)か久保建英(18)がゴールを決めて3−0で勝っていれば理想的な展開だったと思う。そしてミャンマーGKの再三にわたるファインセーブが日本の追加点を阻んだことも、疑いようのない事実だ。

 しかし、現時点の日本に大量点は必要ない。必要なのは、どの試合でも勝ち点3を確実に取ることだ。追加点を求めるとなると攻撃の手を緩めることはできず、その反面、ペナルティエリア内での接触プレーによるケガや、オーバーワークによる疲労も考慮する必要がある。大量の得失点差で勝利しても、ケガ人が続出しては全く意味がない。

 ミャンマー戦で出番はなかったが、快足FW永井謙佑(30)は前日練習後、スプリントを繰り返すと足に「負荷はかかります」と泥田のようなピッチコンディションでのプレーの難しさを語っていた。格下相手なら大量点が当然とされたのは、日本がまだアジアの2流国の時代であり、一時の優越感に浸りたい過去の遺物でもあった。

 今大会の初戦、森保ジャパンと選手たちは、そうした過去の呪縛を断ち切ったと言っていい。1点(実際は2点だが)取れば負けることはないといった自信――かつて全盛時のドイツやイタリアが得意としたゲームプラン――をミャンマー戦では見せた。

 これもスタメン11人中Jリーガーは橋本拳人(26)1人で、他の10人は欧州各国でプレーしている経験値からくるアドバンテージであり余裕かもしれない。

 そして次の課題は、大量点が必要な時に攻撃をギアアップできるかどうか。しかしこれはアジア2次予選では必要ないだろう。日本代表が進化を続けている以上、見る側もレベルアップが求められているのではないだろうか。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年9月15日 掲載


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