代打として評価をする声も……

 2月1日、巨人は「宮崎春季キャンプ」の初日を迎えた。そして陽岱鋼(33)が一塁の守備練習を行ったことで、スポーツ紙などが一斉に報じた。

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 2019年の日本シリーズは巨人とソフトバンクが対戦した。東京ドームで行われた第3戦の外野スタメンを振り返ってみよう。

 レフトはアレックス・ゲレーロ(33)、センターは丸佳浩(30)、そしてライトは亀井義行(37)という面々だった。

 だが、ゲレーロは退団。新たに大リーグのワシントン・ナショナルズから、ヘラルド・パーラ(32)を獲得した。彼は外野手としてゴールドグラブ賞を獲得したことがある。

 言うまでもなく、陽岱鋼も外野を守っていた。2月1日、キャンプがスタートすると、スポーツ紙は一斉に陽について報じた。その中でも読売グループの報知新聞がどう伝えたか、ご覧いただこう。

 まずは2月1日(電子版)に記事「【巨人】陽岱鋼が一塁挑戦 原監督『もともとは遊撃手』中島らとのバトル加熱」が掲載された。

《野手の守備練習では、本職が外野手の陽が一塁手としてノックを受ける場面があった。(中略)原監督は「もともとは遊撃手ですから」と適性に期待。「一塁、二塁、捕手は固まっていない」と改めて競争を促した。そんな中、外国人を現時点で補強していない一塁争いに陽が加わり、中島、北村らとのバトルはさらに加熱しそうだ》

 更に翌日の2日(電子版)には「【巨人】最大限に戦力生かす陽と亀井の一塁起用…担当キャップも驚いた」という“解説記事”も配信した。

 この記事によると、丸のセンターと、新外国人のパーラはライトで“当確”。残りのレフトは、亀井と陽に加え、石川慎吾(26)、重信慎之介(26)、山下航汰(19)の合計5人で競わせる方針とした。

 さらに一塁も、日本シリーズの第3戦は阿部慎之助(40)がスタメン出場した。ご存知の通り、阿部は引退して2軍監督を務めているため、ここも“空き”になっているわけだ。

 報知新聞は、一塁も亀井と陽が候補だとした上で、中島裕之(37)、北村拓己(24)の2人に加え、ライトと同じ山下航汰や、本来は捕手の大城卓三(26)もポジションを争う可能性があるとした。

外野手転向を命じられた名捕手

 記事では「巨人担当キャップ」が、次のように解説した。

《左翼はこれまでなら亀井、陽が互いにライバルとなる形だが、どちらかを一塁で起用できるメドが立てば、実績上位の2人の併用も可能になる。

 さらに語弊を恐れずに言えば「外野ならいつでもどこでも守れる」2人が一塁を守れるようになれば、併用だけでなく、有事の際の保険にもなり、戦略の幅も広がる》

 報知新聞だけあり、メリットを強調しているわけだが、実際のところはどうなのだろうか。

 昨年の陽岱鋼は代打として、ある程度は存在感を発揮した。しかし、ポジション争いで亀井に破れたのは厳然たる事実だ。巨人OBで野球評論家の広澤克実氏(57)は、一塁手と外野手の経験を持っている。原辰徳監督(61)の“真意”を訊いた。

「プロ野球ファンの間では知られている話ですが、守備力に難がある選手が、一塁やレフトを任されることは珍しくありません。ただ、一塁の守備は、イメージされているほど簡単ではありません。投手のフィールディングを真っ先に助け、左打者の強烈な打球に対峙する必要があります。陽岱鋼くんは外野の守備力に定評がありますが、そんな彼でも、一塁コンバートは苦労するかもしれません」

 そこまでの負担を陽岱鋼に強いる理由を、広澤氏は「率直に言って、原監督は陽くんに『外野手としてはクビ』というメッセージを伝えたのだと思います」と読み解く。

「今季も代打要員で使う見通しだからこそ、一塁を練習させていると見るべきでしょう。打席に立った後、野手として試合に出場しなければならないこともあります。外野の3ポジションだけでなく、一塁手も守らせることができるとなれば、起用の幅が広がるわけですから」

 広澤氏は「実のところ、選手にとってコンバートの指示は、屈辱以外の何物でもありません」と語る。

「ヤクルトに入団して数年目の古田敦也(54)に対し、当時の野村克也監督(1935〜2020)が『ユマキャンプには外野手のグラブも持ってこい』と命じているのを見たことがあります。『苦虫をかみつぶす』という表現がありますが、あの時の古田の顔ほど、ぴったりのものはなかったですね」

 まだ新人と言っていい古田を、野村監督は次のように評価していたという。「ピッチャーが一流なら、古田のリードは一流。ただし、ピッチャーが二流なら、三流になってしまう。ウチのチームは二流のピッチャーしかいないから、古田は駄目なんだ」――。

「実際は、古田が練習でも外野を守ることはありませんでした。その後は球界を代表するキャッチャーに成長したのも、皆さんがご存知の通りです。野村監督は選手に屈辱を与えることが少なくなく、私も『あのクソジジイ』と何度、心の中で罵ったか分かりません(笑)。しかしながら、フォローも抜群です。野村さんの指示に応じて試合で活躍し、本当にプロ選手冥利に尽きると感動したことは何度もあります。『この監督についていけば、絶対にチームは優勝するな』と信じて疑いませんでした」

好調時の打撃フォームと違う陽岱鋼

 それに比べると「どこまで原監督は丁寧に選手をフォローしているのか」との懸念を、広澤氏は持っているという。

「昨シーズン、原監督は坂本勇人くん(31)に、3月の広島戦や9月のDeNA戦でバントさせたことが話題になりました。彼は気にしない性格なのかもしれませんが、一般論として、打撃に自信のある選手にとってバントのサインは屈辱です。また坂本くんは日本シリーズで不振に苦しみましたが、私はバントさせられたことと無関係ではないと見ています。いずれにしても、バントの指示を出した後は、監督の丁寧なフォローが求められます。ところが、原監督にはドライなところがあります。坂本のバントと陽の一塁コンバートに、そういうドライさを感じてしまうのです」

 もちろん、陽岱鋼本人にも問題があるのは言うまでもない。

「陽くんの今のフォームは、絶好調だった頃のフォームと違っています。打者というのは好調な時、『速球を待っていても変化球に対応』できるのです。ところが調子を落とすと、速球を待つと変化球に対応できなくなります。プロ野球の選手は練習が大好きです。練習に練習を重ねて、間違ったフォームを身につけてしまうことは珍しくありません。今や33歳のベテランですから、コーチもアドバイスはしないでしょう。悪循環から抜け出すためには、一塁でもどこでもしがみつき、とにかく代打で存在感を示してスタメンアピールをするしかありません」(同・広澤氏)

週刊新潮WEB取材班

2020年2月14日 掲載