夏の甲子園で“ハンカチ王子”として一世を風靡したのも今は昔。プロ10年目を迎える斎藤佑樹がいよいよ崖っぷちに追い詰められている。

 今季オープン戦初登板となった2月24日のDeNA戦、斎藤は厚沢和幸ベンチ兼投手コーチから「スピードじゃないんだという、斎藤佑樹が出せる“味のある投球”を求めている」との期待を受けて送り出されたが、その思いにまったく応えられず。元メジャーのテイラー・オースティンに特大弾を浴びるなど3回4安打3失点で降板し、試合後には栗山英樹監督に二軍降格を告げられた。

 その後は教育リーグで登板機会を与えられたが、そこでも”味のある投球”からはほど遠いパフォーマンスしか出せていない。日本ハム担当記者も「ストライクを取るのも四苦八苦。これでは首脳陣も使いようがない。斎藤が登板すると記者席では『今日も長くなりそうだな』という声が聞こえてくる」とため息をつく。

 2020年シーズンに向け、キャンプでは不甲斐ない現状をなんとか打破しようとする気概は見せていた。「春季キャンプでは、いつにも増して独自調整が目立った。目の色も変わっていて、本人も期するところがあったはず」と球団関係者は語る。実際、全体練習から離れて調整をする背番号1の姿はたびたび目についたが、そこにはちょっとした背景もある。

「木田優夫投手コーチは明るい性格で対話を重視する。外国人、裏方も含めて投手陣はファミリーという考えだ。練習中も投手陣はよく声が出ていて雰囲気が良い。本来なら斎藤もその一員なのですが、あらかじめ話し合って、斎藤の意向を尊重して独自調整を許可したと聞いています」(前出の日本ハム担当記者)

 斎藤はオフの期間から球速アップのためにインナーマッスルを強化し、カーブを磨き上げるなど新たなことに挑戦。今年こそ、という気持ちは周囲にも十分伝わっていた。ただ、日本ハムを長年取材するスポーツライターは、その姿勢に危うさも感じていたと話す。

「必死さは伝わってきましたが、それによってかえって孤立し始めているようにも見えました。他投手が同じメニューをこなしているのに、1人だけブルペンなどへ向かう。移動中は誰も声をかけず、ブルペン捕手と2人で黙々と投球練習を行う光景はちょっと異様でした」

 ここまでたいした結果を残せていない当落線上の投手に対し、実績ある主力選手と同じような独自調整を許すというのも、振り返ってみれば異例だ。ブルペン投球中、斎藤の投球を見守るコーチ陣の姿もあまりなかったという。まるで“腫れ物扱い”である。代わりにブルペン周辺に集まったのは、関係者帽子をかぶったゲストの人たちだった。

「斎藤が投げ始めると、地元の関係者がブルペンに大挙してやってきます。今でも知名度は抜群。なかにはスポンサーさんもいるから、これも重要な役割です。我々も斎藤選手を見られるのはうれしい」(キャンプ地の名護市関係者)

 今のところ“戦力”として計算できるのは、客寄せパンダとしての側面しかなさそうだ。ここ2年間で1勝もしてないのに、キャンプ一軍参加となったことにも疑問の声は上がっていた。

 もっとも、そのことに誰よりも忸怩たる思いを抱いているのは斎藤本人のはずであり、外野を黙らせるには結果を出すしかない。前出のスポーツライターはまだ望みがあると力を込める。

「昨年もローテーションの谷間や、オープナーなどでの登板がありました。栗山監督の考え方次第ですが、本来なら戦力外になってもおかしくなかったのを、早々と残したのでチャンスはあるはず。そこで結果を残し続ければ、ローテーション入りの道も開けてくるかもしれません」

 だが、今年も結果を残せないとなると、今度こそ首を切られてもおかしくない。甲子園でスポットライトを浴びてから随分と時間は経ったが、最後にハンカチで拭くのが無念の涙にならないことを祈るばかりだ。

週刊新潮WEB取材班

2020年4月30日 掲載