新型コロナ感染拡大を受けて、全国高等学校体育連盟(全国高体連)が今夏の高校スポーツの総合大会、全国高校総体の中止を決定した。1963年に始まって以来、初めてだという。

 青春をかけて夢舞台に向かっていた高校生アスリートたちが気の毒だ。

 同時に今回の高体連の決定は8月10日に開催が予定されている「甲子園大会」に大きな影響を及ぼす可能性がある。

 中止か、それとも無観客試合での開催になるのか。再び、議論になりそうだ。

 もっとも開幕を延期しているプロ野球は開幕にこぎつけた場合は当面の間、無観客試合で実施する方向をすでに確認している。現状では6月19日、遅くても7月初旬の開幕を視野に入れているという。

「スポーツ、野球を通して全国の皆さんに元気になっていただきたい。テレビ、ネットを通して見てほしいという思いが強く、(無観客に)どこも反対はありません」。これはNPB・斉藤惇コミッショナーの言葉だ。興行的な打撃を抜きにして、プロ野球の社会的使命を踏まえての方針だ。もちろん、今後の感染状況を見据えてのことだ。私はこれまで何度も言ってきたが、無観客でも試合はやるべきだと思う。球場に足を運んで楽しむのが一番だけど、今後、このコロナ禍がどう転ぶか分からない。ファンを球場に入れることで感染拡大のリスクは消えない。

 自宅のテレビ・ネットの前で贔屓チームを応援するのはストレス解消になる。以前の試合を再放送するよりも、スポーツ観戦はなんと言っても「生」だ。競馬・競輪・競艇などは投票券を買って楽しむけど、プロ野球は見て楽しむものだ。オープン戦中継でも分かったことだが、無観客でも臨場感のある選手の声、迫力ある打球音、さらには選手の表情やベンチの様子をこれまで以上に気を付けて見ることで新たな発見があるかもしれない。

 中継するテレビ局もそのへんは十分に心得ているようだ。

 コロナ対策の専門家の間からは試合実施の際はベンチ内のマスク着用とか不要な会話、掛け声の自粛、さらにいわゆるソーシャルディスタンス(社会的距離)の対策案が提案されたという。

 5月5日に開幕予定の韓国プロ野球は無観客で審判にマスク、手袋着用を義務付ける運びになっている。しかし、どうなんだろう。ベンチ内で監督や選手たちがマスクをして、会話もしない、いやできない。ファンにとってはかなり異様な光景に映るだろう。

 例えばベンチでマスクをしていた選手がバッターボックスに向かう時はマスクを外す。こんなシーンを想像すると、なんか違うのではないか。こう思ってしまう。

 そりゃ、社会に対してプロ野球はこれだけの努力をしています。こんな具体的な取り組みをしています。こう訴えるのは大事なことだが、マスクをつけてやるスポーツはどうなのかと首をひねる。

 私はマスクをつけて試合をするくらいなら、試合をしない方がいい。そこまで予防して実施する試合でファンの共感を得られるのか。逆に見ているファンの恐怖心をあおるのではないか。こんな疑問が湧く。

 ならば、感染者が激減して、コロナ禍の終息がハッキリと見える時まで待つべきだと思う。

 いずれにせよ、無観客試合でもクリアすべき課題は多い。試合実施には各球団の職員、関係者ら100人を超える人々が携わっている。選手を含め、大勢の関係者が全国各地へ公共機関を利用して移動する。宿舎の問題もある。1人でも感染者が出れば大事になる。いま、ゴールデンウイークの真っ最中だが、帰省や旅行、遠出の自粛が求められている。各地方は人の移動に神経をとがらせている。6月あるいは7月に開幕するにしても移動への恐れが残っている中で理解を得る必要がある。

 NPBは5月11日頃には開幕日を決めたい考えだという。あと2週間後か。その頃には緊急事態宣言の終結、そして先の話になるが開幕日にはコロナ禍が目に見えて終息に向かっていてほしい。

 開幕日までに一か月の準備期間が必要との見方があるが、私は練習試合を含めて2週間あれば十分と見ている。選手たちはその日に備えて体を作っているし、試合をやりたくてうずうずしているはずだ。

 プロ野球が無事開幕にこぎつけるとともに、開幕日にはマスクをつけた姿がないことを期待している。

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会副理事長を務める。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年4月30日 掲載