4月25日現在、育成選手を含めてNPBの12球団に所属している日本人選手は合計で847人いる。そんな彼らの誕生日について考えたことはあるだろうか。全員の生まれた月を4月から順に並べたところ、以下のようになった。

 4月:97人、5月:79人、6月:83人、7月:83人、8月:83人、9月:91人、10月:54人、11月:63人、12月:59人、1月:54人、2月:54人、3月:47人

 ちなみに4月1日は学年の関係上3月でカウントする予定だったが、現在4月1日生まれの日本人選手は一人もいなかった。最も多いのは4月生まれの97人。そして最も少ないのは3月の47人で、4月の半数以下という結果となった。4月から9月を前半生まれ、10月から3月までを後半生まれとして分けると前半が516人、後半生まれが331人となる。中でも1月から3月生まれのいわゆる“早生まれ”が少ない傾向は顕著である。

 さらに細かく見てみよう。昨シーズン、セ・パ両リーグで規定投球回数に到達した日本人投手と規定打席に到達した日本人野手は合計66人だったが、その中で早生まれの選手を調べたところ、以下の10人だった。

銀次(楽天):2月24日
青木宣親(ヤクルト):1月5日
高橋周平(中日):1月18日
島内宏明(楽天):2月2日
茂木栄五郎(楽天):2月14日
神里和毅(DeNA):1月17日
源田壮亮(西武):2月16日
菊池涼介(広島):3月11日
村上宗隆(ヤクルト):2月2日
千賀滉大(ソフトバンク):1月30日

 また、昨年11月に行われた世界野球プレミア12』の侍ジャパンのメンバー28人についても見てみると、規定打席に到達していた菊池、源田以外では中川皓太(巨人:2月24日)、周東佑京(ソフトバンク:2月10日)の二人だけであった。

 ここで取り上げた早生まれの12人について、さらに深堀すると、一つの傾向が見えてくる。まず高校から直接プロ入りしている選手が銀次、高橋、村上、千賀の4人しかいない。しかも、千賀は育成ドラフトでの指名であり、高校時代から高い評価を得ていたのは高橋と村上の二人くらいと言えるだろう。

 さらに調べてみると甲子園常連の私立強豪校出身の選手が少ないのだ。この中では高橋(東海大甲府)、島内(星稜)、茂木(桐蔭学園)、村上(九州学院)の4人がいわゆる私立強豪校出身であるが、他の8人の出身校は甲子園に頻繁に出場するような学校ではない。また、選抜高校野球に出場する選手はその生年月日までが公開されているが、毎年レギュラーに早生まれの選手は非常に少ない。簡単に言ってしまうと、早生まれの選手に“野球エリート”は少ないというのが日本球界の現状なのだ。

 では、なぜこのような状況が起こるのか。その大きな原因は育成年代のチームの在り方にあるのではないだろうか。体が成長する前の小学生にとって、生まれた月の差はそのまま体力差になることが多い。4月生まれの選手と3月生まれの選手では、4月生まれの選手の方がその時点で高いパフォーマンスを発揮できる可能性は当然高くなる。そしてチームが勝利を目指そうとするのであれば、そのような体力的に優れた選手を多く起用するようになるのも容易に想像がつくだろう。

 その一方で、体力的にまだ成長が追いついていない、誕生日が遅い選手は試合に起用される機会は少なくなってくる。同じ学年の中で試合に出られないような状態が続けば、その選手は劣等感を持ち、野球が楽しくないと感じてしまうはずだ。単純に体が成長すれば将来的に才能が花開くことがあっても、それに気づく前に野球を辞めてしまうケースも多い。その結果がプロ野球選手の生まれた月のデータに反映されていると言える。

 野球少年の全員がプロ野球選手を目指して、野球をしているわけでは当然ないが、ただ、身体的な成長が遅いというだけで、野球の楽しさを感じることができずに、野球を辞めてしまうのは不幸なことである。その時に勝利を求めることはもちろん大切なことであるが、将来を見据えた長期的な視点で指導をすることが重要なのではないだろうか。最近では単純に学年ではなく、身長の高さでグループを分けるようなチームも出てきている。そういった取り組みが広く普及することが今後は重要になってくるだろう。一人でも多くの野球少年が野球の楽しさを感じ、長くプレーを続けられるような野球界になっていくことを切に願いたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年5月5日 掲載