プロ野球の世界で最高のエリート選手と言えば、高校卒でドラフト1位指名を受けてプロ入りする選手になるだろう。しかし、そんないわゆる“高卒ドラ1”について残念なニュースが飛び込んできた。巨人のドラフト1位ルーキー、堀田賢慎がトミー・ジョン手術を受けたことが発表されたのだ。

 堀田は1位の抽選を2度外した後に指名を受けた選手であり、今年の戦力としてはもちろん見られていなかったが、プロ生活のスタートで大きなビハインドを背負ったことは間違いない。このように体ができていない高校生を1位で指名することはリスクも大きいことを改めて感じさせられる出来事だった。

 高校からドラフト1位で入団した選手が果たしてどの程度成功しているのか。今回は統一ドラフトとなった2008年から、育成にかかる時間も考慮して12年までの5年間にプロ入りした選手の結果をもとに検証してみたいと思う。まず対象となる選手、その通算成績を並べて見ると、以下のような結果となった。

・2008年
中崎雄太(日南学園→西武)
15試合 0勝0敗0セーブ0ホールド 防御率8.04

甲斐拓哉(東海大三→オリックス)
一軍出場なし

大田泰示(東海大相模→巨人)
579試合 476安打58本塁打222打点25盗塁 打率.264

赤川克紀(宮崎商→ヤクルト)
76試合 14勝20敗0セーブ0ホールド 防御率4.17

・2009年
筒香嘉智(横浜高→横浜)
968試合 977安打205本塁打613打点5盗塁 打率.285

今村猛(清峰→広島)
425試合 21勝30敗36セーブ114ホールド 防御率3.38

菊池雄星(花巻東→西武)
158試合 73勝46敗1セーブ0ホールド 防御率2.77

今宮健太(明豊→ソフトバンク)
1056試合 886安打66本塁打350打点65盗塁 打率.248

岡田俊哉(智弁和歌山→中日)
300試合 17勝18敗16セーブ59ホールド 防御率3.27

中村勝(春日部共栄→日本ハム)
60試合 15勝17敗0セーブ0ホールド 防御率4.07

・2010年
後藤駿太(前橋商→オリックス)
799試合 352安打14本塁打136打点30盗塁 打率.225

山田哲人(履正社→ヤクルト)
964試合 1068安打202本塁打583打点168盗塁 打率.297

山下斐紹(習志野→ソフトバンク)
111試合 42安打5本塁打15打点0盗塁 打率.206

・2011年
北方悠誠(唐津商→横浜)
一軍出場なし

松本竜也(英明→巨人)
一軍出場なし

川上竜平(光星学院→ヤクルト)
一軍出場なし

武田翔太(宮崎日大→ソフトバンク)
159試合 57勝38敗2セーブ9ホールド 防御率3.30

高橋周平(東海大甲府→中日)
580試合 459安打41本塁打229打点5盗塁 打率.253

・2012年
藤浪晋太郎(大阪桐蔭→阪神)
128試合 50勝40敗0セーブ0ホールド 防御率3.25

高橋大樹(龍谷大平安→広島)
35試合 17安打1本塁打3打点0盗塁 打率.266

森雄大(東福岡→楽天)
28試合 3勝6敗0セーブ0ホールド 防御率4.58

大谷翔平(花巻東→日本ハム)
85試合 42勝15敗0セーブ1ホールド 防御率2.52
403試合 296安打48本塁打166打点13盗塁 打率.286

 5年間での高校卒ドラフト1位は22人という数字となった。まだ最終的な結果が出ていない選手もいるため、成功と失敗の判断は難しいが、一軍の主力になった選手を成功としてカウントすると大田、筒香、今村、菊池、今宮、岡田、山田、武田、高橋周、藤浪、大谷の11人となり、ちょうど半数となる。野球は「3割打てば大打者」という言葉があるが、ドラフトでも3割の選手が当たれば成功と言われる。そういう意味では高校卒のドラフト1位選手の成功確率は高いと言えるだろう。

 しかし、気になる点ももちろんある。約2割の4人の選手が一軍での出場も果たせないまま球界を去っているのだ。特に2011年はそのうち3人の選手が集中している。こういう結果を見てしまうと、高校生に1位の枠を使うのに躊躇する気持ちも芽生えてくるのではないだろうか。ただ、2011年の北方、松本、川上についてはいずれも最初に入札した選手ではなく、いわゆる“外れ1位”、“外れ外れ1位”の選手である。その点は、弁解の余地はあるのかもしれない。

 ちなみに、同じ時期の5年間で大学生、社会人からドラフト1位でプロ入りした選手は37人(菅野智之は2011年に日本ハムの1位指名を拒否しているためこの分はノーカウント)。そのうち、一軍の主力となった選手は半数を下回る15人で以下のような顔ぶれとなった。

2008年
大野奨太(東洋大→日本ハム)

2009年
荻野貴司(トヨタ自動車→ロッテ)
長野久義(Honda→巨人)

2010年
塩見貴洋(八戸大→楽天)
沢村拓一(中央大→巨人)
榎田大樹(東京ガス→阪神)
大野雄大(佛教大→中日)

2011年
野村祐輔(明治大→広島)
安達了一(東芝→オリックス)
十亀剣(JR東日本→西武)

2012年
松永昂大(大阪ガス→ロッテ)
石山泰稚(ヤマハ→ヤクルト)
東浜巨(亜細亜大→ソフトバンク)
増田達至(NTT西日本→西武)
菅野智之(東海大卒→巨人)

 5年間のサンプルだけで比較しているため、成功確率についてはそれほど大きな差がないのかもしれないが、個々の選手のスケールを比べて見ると、高校卒の選手の方が圧倒的に大きいのは明らかである。筒香、菊池、大谷の三人は既にメジャーに移籍しており、今村、今宮、岡田、山田、武田、藤浪も日本代表としてプレーしている。大学生、社会人出身組で対抗できる選手となると長野、増田、菅野くらいと言えるだろう。

 また、現在メジャーリーグに在籍している日本人選手を見ても、前述した三人以外のダルビッシュ有(カブス)、田中将大(ヤンキース)、前田健太(ツインズ)、山口俊(ブルージェイズ)も高校卒ドラフト1位の選手であり、成功した時のスケールはやはり高校卒選手が圧倒的に上回っている。そういう意味でも、チームのスケールを大きくするためには、やはり高校生のドラフト1位選手の獲得は必要不可欠と結論付けることができそうだ。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年5月3日 掲載