新型コロナウイルスで3カ月も開幕が延期されていたプロ野球だが、ようやく6月19日に開幕し、野球ファンから喜びの声があがっている。昨年はセ・リーグが村上宗隆(ヤクルト)、パ・リーグが高橋礼(ソフトバンク)と、ともにプロ入り2年目の選手が新人王を獲得した。今年は両リーグに注目のルーキーが多いが、果たして新人王は誰が獲得するのか予想してみたい。今回はパ・リーグ編だ。

セ・リーグの森下暢仁(広島)のような大本命は不在で、非常に予想が難しい状況だ。ルーキーの投手では宮川哲(西武)、浜屋将太(西武)、河野竜生(日本ハム)、鈴木健矢(日本ハム)、滝中瞭太(楽天)などの社会人出身の選手が候補となるだろう。

アマチュア時代のピッチングを考えると、最もボールの力があるのは宮川だ。先発としては中盤につかまることが多かったが、短いイニングであれば打者を圧倒することができ、チームの弱点であるセットアッパーとして期待がかかる。しかし、キャンプでは右足の違和感で離脱。6月5日の中日との練習試合では1回を投げて2三振を奪ったものの、故障明けということを考えると新人王の本命には推しづらい。

そこで浮上してくるのが浜屋と河野だ。ともに高校時代はまとまりのある好左腕だったが、社会人で一気にスピードアップして上位指名でのプロ入りを果たした。浜屋はサウスポーらしいボールの角度に加えて、左打者の内角にもしっかり投げ切れるのが長所。3月に行われた広島とのオープン戦では3回を投げて6奪三振という快投を見せている。左の先発候補はベテランの榎田大樹、内海哲也と新外国人のノリンくらいしか見当たらないだけに、ローテーションに入ってくる可能性は十分だ。

一方の河野も3月の巨人とのオープン戦で4回1安打無失点と好投。スピードも既に140キロ台後半をマークしており、緩急の使い方の上手さも光る。こちらも十分ローテーション候補と言えるだろう。鈴木、滝中もオープン戦では中継ぎで好投を見せているが、いきなり勝ちパターンで起用されるとは考えづらいだけに、新人王争いに加わるのは難しいだろう。大卒の津森宥紀(ソフトバンク)、津留崎大成(楽天)、村西良太(オリックス)などもリリーフタイプだけに、同様の理由で予想からは外したい。

 ルーキーの野手で筆頭に挙げられるのが小深田大翔(楽天)だ。練習試合、オープン戦でも内野の一角を任せられ、スピード溢れたプレーでアピールを続けている。鈴木大地の加入で、内野のレギュラー争いは厳しい状況だが、茂木栄五郎が体調不良で出遅れていることを考えると、開幕スタメンに名を連ねる可能性も十分だ。ただ、同じチームの先輩で昨年セ・リーグの新人王争いを演じた近本光司(阪神)に比べると打撃の確実性とパンチ力は見劣りするだけに、走塁面で大きなインパクトを残す必要がありそうだ。

 ここまではルーキーの候補を紹介したが、パ・リーグはセ・リーグと比べて新人選手以外の有力候補が多い印象である。

投手では与座海人(西武)、平良海馬(西武)、杉山一樹(ソフトバンク)、古谷優人(ソフトバンク)、泉圭輔(ソフトバンク)、寺岡寛治(楽天)、東妻勇輔(ロッテ)、吉田輝星(日本ハム)、漆原大晟(オリックス)などが候補となる。

この中で面白いのが与座、平良、東妻の三人だ。与座は入団1年目の2018年オフにトミー・ジョン手術を受けて、昨年は育成選手としてリハビリ生活を過ごした。支配下登録に戻った今シーズンはキャンプから順調な調整を見せ、オープン戦でも好投。球持ちの長さが武器のアンダースローで、打者はタイミングをとるのが難しい。なかなかいないタイプで、昨年同じ高橋礼がブレイクしただけに、それに続くことも考えられるだろう。

平良はプロ入り2年目の昨シーズン終盤に中継ぎとして一軍に定着。150キロを楽に超える重いストレートで押しまくるパワーピッチングで2勝1セーブ6ホールドをマークした。今年はセットアッパーとして期待がかかる。東妻も平良と同じリリーフ右腕。躍動感あふれるフォームで打者に恐怖感を与えられるタイプだ。ルーキーイヤーの昨年は一軍の壁に苦しんだが、二軍ではイニング数を上回る奪三振をマークしている。ロッテの中継ぎ陣は長年の勤続疲労が見える投手が多いだけに、今年は勝ちパターンでの起用も期待できるだろう。

 ルーキー以外の野手では山野辺翔(西武)、川越誠司(西武)、小郷裕哉(楽天)、安田尚憲(ロッテ)、藤原恭大(ロッテ)、万波中正(日本ハム)、宜保翔(オリックス)などが候補だ。アマチュア時代の知名度で言えば安田、藤原のロッテ勢二人が上だが、昨年はレアードとマーティン、今年は福田秀平と積極的な補強を行ったことで野手の層が厚くなっていることがブレイクの妨げになりそうだ。

チーム事情を考えると、抜擢の可能性が高いのが山野辺と川越の二人だ。浅村栄斗(楽天)、秋山翔吾(レッズ)と主力が続けて流出し、内野、外野ともに層が薄くなっている。山野辺は二軍での実績は十分で、川越も昨年のアジアウインターリーグから好調を維持しているだけに一気にレギュラーを奪ってもおかしくないだろう。

最後に大穴として推したいのが宜保だ。高卒のドラフト5位入団ながら、1年目の昨年二軍の定位置をつかみ、シーズン終盤には一軍でも初安打をマーク。今年もここまで一軍に帯同し、オープン戦でも結果を残し続けている。体は大きくないものの、運動能力の高さは抜群で、プレーのスピードとパンチ力が持ち味だ。チームの二遊間はレギュラー候補こそ多いものの、いずれも決め手には欠ける状況だけに、宜保が一気に定位置をつかむチャンスは十分にあるだろう。

【2020年セ・リーグ新人王予想】
本命:河野竜生(日本ハム)
対抗:浜屋将太(西武)・与座海人(西武)・平良海馬(西武)
注意:小深田大翔(楽天)・東妻勇輔(ロッテ)・川越誠司(西武)
大穴:宜保翔(オリックス)

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年6月28日 掲載