開幕から約3週間が経過した今年のプロ野球。セ・リーグで順調な滑り出しを見せているのが昨年の覇者である巨人だ。阪神との開幕カードで3連勝を飾ると、続く広島戦こそ1勝1敗1分だったものの、続く3カードも全て勝ち越し、リーグ10勝一番乗りとなった。しかし、その戦いぶりをよく見てみると決して安心ばかりはしていられないこともまた事実である。巨人が抱える不安要素を洗い出すとともに、連覇に向けてのキーマンを探ってみた(成績は7月5日終了時点)。

 最大の不安要素はリリーフ投手陣だ。抑えを任せられていたデラロサが7月5日の中日戦でビシエドにホームランを浴びた後に緊急降板。検査の結果、左わき腹の肉離れが発覚し、登録抹消となったのだ。わき腹の故障は繰り返すことが多く、長期離脱の可能性も高い。開幕から5試合連続で無失点と安定した投球を見せていただけに、この故障は大きな痛手と言えるだろう。

 リリーフ陣の不安要素はデラロサの離脱だけではない。ここまで5試合以上に登板している中継ぎ投手の中で、防御率が3点を下回っているのは中川皓太一人だけ。実績のある沢村拓一は7点台、高木京介も6点台という散々な数字であり、中堅の宮國椋丞、藤岡貴裕、鍵谷陽平なども勝ちパターンで起用するだけの安定感は見られない。若手の堀岡隼人、ベテランの大竹寛、新外国人のビエイラなどがどこまで戦力になれるかがポイントとなりそうだ。

 投手陣の不安はリリーフだけではない。ここまで順調に勝ち星を重ねている先発陣も決して盤石とはいえない状況だ。エースの菅野智之は7月3日の中日戦では1安打完封という圧巻の投球を見せたが、その前の2試合は重要な場面で一発を浴びるなどやや安定感に欠ける内容だった。

 山口俊(ブルージェイズ)の穴を埋める存在として期待される新外国人のサンチェスもここまで2勝はマークしているものの、ここまでの平均投球回数は5回を下回っており、先発としての役割を十分に果たしているとは言えない。今年先発に復帰した田口麗斗も7月4日の中日戦で左太ももを痛めて登録抹消となっている。戸郷翔征、桜井俊貴といった若手が台頭してきている分、リリーフ陣よりは明るい要素はあるものの、戸郷は高校卒2年目ということを考えると大きな期待をかけるのは酷と言えそうだ。

 ここまでリーグトップの得点を叩き出している野手陣も全てが順調というわけではない。坂本勇人、丸佳浩、岡本和真の前後を打つ打者を確立することができていないのだ。特に1番は吉川尚輝が開幕戦で値千金の逆転ホームランこそ放ったものの、その後は結果を残すことができず、15試合で既に6人もの選手がスタメンで出場している。5番は大ベテランの中島宏之がここまである程度機能しているものの、年齢と昨年までのプレーぶりを見ていると、このまま長続きするとは考えづらい。緊急トレードで楽天からウィーラーを獲得したが、ここまでのバッティングを見ていると大きな期待はかけられないだろう。そして不動の中軸だった坂本、丸もそれなりの結果は残しているとはいえ、淡白な打撃が目立つようになってきたのも大きな不安要素である。

 ここまで不安要素を書き連ねたが、そんな中でもチームの大きな光となっているのがやはり主砲の岡本だ。ここまで打率、安打数、本塁打数でチームトップの数字を残しており、4番に相応しい活躍を見せている。ヒット、ホームランの内容を見ても昨年までより明らかにバリエーションが増えており、打者としてのレベルがワンランク上がったという印象が強い。

 また、サードの守備についてもここまで安定感のあるプレーを見せている。坂本と丸の調子がこのままなかなか上がってこなければ、岡本へのマークが一層厳しくなることが予想されるが、そんな中でも結果を残し続けることができれば、さらに大きな自信になることは間違いないだろう。長くチームを支えてきた阿部慎之助、坂本に代わり、岡本が名実ともに巨人の大黒柱になることができれば、巨人の連覇もぐっと近づくことになりそうだ。新“若大将”のプレーぶりに今後も注目したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年7月11日 掲載