「絶対にあると信じてやる」

 延期された東京五輪まであと1年になった7月23日、五輪連覇中の内村航平(31)はイベントでこう語った。

「むしろこの1年がチャンス」などと多くのアスリートが東京五輪にポジティブな発言をしている中で、

「“五輪は必要ない”と言い放ったのは、出場が有力視されるトップ選手で初めてではないでしょうか」

 とスポーツ紙陸上担当記者は目を瞠る。陸上5000メートルと1万メートルで五輪参加標準記録を突破している新谷(にいや)仁美(32)のことである。

 小出義雄監督門下で“ポスト高橋尚子”と称された新谷は、初マラソンとなる第1回東京マラソンでいきなり優勝。2012年ロンドン五輪で5000メートルと1万メートルに出場し、実業団駅伝などでも実績を残したが、14年に突如引退。18年に現役復帰し、今年の1月にはハーフマラソンで日本記録を更新している。

 そんな新谷が23日、出場した東京選手権で記者に“1年後の五輪への思い”を問われ、こう述べた。

〈私たち選手だけでやれる大会ではない。国民の皆様のお陰で、私たちは働ける。国民の皆さんが反対するのであれば、私は五輪は開催する必要ないと思う〉

〈一人でも嫌と思う人がいるなら、開催は難しい〉

 いま最も脂が乗っていて、本来なら来年の開催を熱望しそうなものだが。

「“国民が反対するなら”という条件付きながらも衝撃的な発言です。そもそも延期も、アスリートの意見がきっかけで大きな流れが出来ました。今後、彼女の意見に追随する選手が出てくれば、来年の開催はますます危うくなるかもしれません」

 政治家たちに振り回され続けるアスリートからの強烈なカウンターパンチ。

「週刊新潮」2020年8月6日号 掲載