7月7日の中日対ヤクルト戦で起こった、投手を代打に起用した「代打・三ツ間事件」受けて、先日の記事では代打として起用をおすすめしたい投手を紹介したが、逆に投手が足りなくなる事態も考えられる。近年のメジャーリーグでは、投手の消耗を防ぐために野手が登板するケースがある。日本でも、今シーズンは新型コロナウイルスの感染拡大により、かなりの過密日程となっているだけに、中継ぎ陣を休ませたいチームがこうした起用をすることも十分考えられる。そこで、今回は、投手の代わりに緊急登板で起用するのにおすすめしたい野手をピックアップしてみた。

“事件”の発端となった中日は若手に人材が揃っている。一軍にいるメンバーで真っ先に名前が挙がるのが、ドラフト1位ルーキーの石川昂弥だ。3年春の選抜では背番号1をつけてエースとしてチームを全国制覇に導いている。ストレートは140キロ前後で驚くようなスピードはないものの、コントロールが安定しており、粘り強く投げられる点は定評があった。緊急登板でも制球で自滅することはなさそうだ。

 ほかにも、2年目の根尾昂、ドラフト5位ルーキーの岡林勇希も候補になる。根尾は中学時代に146キロをマークして、まずは投手として有名になり、大阪桐蔭でも2年春、3年春と二度の甲子園優勝投手となっている。スピードだけでなく、鋭く変化する縦のスライダーも素晴らしいものがあった。

 スピード自慢なのは岡林だ。下位指名での入団ながら高い運動能力を買われて早くも一軍登録されているが、菰野高校では150キロ右腕として評判だった選手である。少しコントロールには不安はあるものの、打者数人であればストレートで押すピッチングも可能だ。

 セ・リーグでは巨人にも人材が多い。丸佳浩は千葉経大付では2年秋からエースとなり、関東大会優勝に大きく貢献。翌年春の選抜でも1回戦で完投勝利をマークしている。主砲の岡本和真も中学時代は投手として評判だった選手だ。高校では基本的には野手でプレーしていたが、チーム事情もあって投手も兼任。3年春、夏と連続して出場した甲子園ではいずれもリリーフでマウンドに上がっている。大きな体を上手く使えるバランスの良いフォームで、ストレートも130キロ台後半をマークしている。

 そして、丸、岡本以上に期待できそうなのが若手キャッチャーの岸田行倫だ。報徳学園では下級生の頃は投手と内野手を兼任しており、2年春の選抜にはショートとして出場している。秋の新チームからは捕手に転向したが引き続き投手も兼任。3年春の選抜では捕手として先発出場し、5回途中からマウンドに上がると4回1/3を投げて被安打1、無失点、6奪三振と見事なリリーフを見せている。140キロを超えるスピードと安定したコントロールを誇り、高校生ではなかなか打てないレベルのピッチャーだった。

 パ・リーグで人材が豊富なのがロッテと日本ハムである。ロッテでは清田育宏と岡大海が筆頭候補になるだろう。清田は市立柏時代、プロからも注目される本格派投手で、東洋大でも3年までは投手としてプレーしていた経歴を持つ。大学では結果を残せずに野手に転向して開花したものの、高校時代のバランスの良いフォームは印象深い。

 岡は倉敷商でエースとして甲子園に出場しており、本格派として評判だった。明治大でも投手、野手の二刀流でプレーしており、リーグ戦通算3勝をマークしている。コントロールは不安定だったが、150キロを超えるストレートは大きな魅力だった。

 日本ハムは、2015年の選抜優勝投手である平沼翔太が代表格だ。2年時からエースとして活躍しており、甲子園通算10勝をマークしている。140キロ台のストレートと多彩な変化球をテンポ良く低めに集めるピッチングは安定感十分だった。主砲の中田翔も投手として騒がれた一人だ。1年時から140キロ台後半のスピードをマークしており、3年春にはエースとして甲子園に出場している。スピードはもちろんだが、打者を打ちとる投球術でも目立つピッチャーだった。

 また、他の球団でマウンドに上がる姿を見てみたいのが、ソフトバンクの今宮健太だ。明豊時代は1年秋からエースとなり、最終学年では内野手に回ったものの、3年夏の甲子園ではリリーフで登板して150キロ台のスピードを連発している。チームにとってこれほどありがたい緊急登板候補はなかなかいないだろう。

 コロナ禍で行われている異例のシーズン……“非常事態”に陥った時に、今回紹介した選手がマウンドに上がり、ピンチを救うことを期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年8月4日 掲載