中川親方の件もあり、脱走を計画してきた9人

 式秀部屋の力士9人が、おかみさんのモラハラが原因で、茨城県龍ケ崎市の部屋から集団脱走。式秀親方(48=元幕内北桜)がメンタルの不調で満足に弟子を指導できないなかで、師匠代行に任命されたおかみさんの行き過ぎた生活指導が横行していたのが大脱走の理由だ。日本相撲協会は「おかみさんは協会員ではないから指導は難しい」と言うのだが……。協会から部屋に流れるお金について触れながら、検証してみることにしよう。

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「式秀部屋には三段目以下の力士19人が所属しており、そのうちのおよそ半分の9人が脱走したわけですから、親方としてはショックでしょう。そもそも彼はここ最近メンタルの調子が悪く、指導にはほとんど絡んでいなかったんで、現状を“知らなかった”という意味でもショックなはずです。弟子たちは結構前から脱走を計画していました。このタイミングで一斉に逃げてあのカラオケボックスに入って、相撲協会のコンプラ委員会に通報しようと……」

 と、相撲協会の関係者。

 2017年に元横綱・日馬富士が貴乃花部屋の貴ノ岩を殴打した事件がキッカケで作られたこのコンプラ委員会。7月場所前、弟子へのパワハラが原因で中川親方(元幕内旭里)が部屋を閉鎖された一件でも、委員会は“大忙し”でした。

 もっとも、

「外部の法律家が運営しているとはいえ、相撲協会から完全に独立した組織ではないから、判断は基本的に協会寄り。中川親方は弟子に差別発言をしたうえにそれが録音されていたから証拠はあるし、さらに“親方を許さない”と弟子たちは言っていたようです。それなのに部屋は閉鎖されても親方としては協会に残れることになった。身内に大甘な協会のDNAが出た格好です」

「このコンプラ委員会ができてからというもの、力士からの相談がひっきりなしというから、全部厳しく処分していたら、“そして誰もいなくなった……”となるかもしれないんだけどね」

 と、この関係者は自嘲気味に語る。

ビーズでミニチュアの化粧まわしまで作ってしまった親方

 一方の式秀部屋。この部屋自体、関取はいないものの、実力とは違った意味で注目を浴びてきた。そのひとつが四股名で、大当利(おおあたり)、桃智桜(ももちざくら)、宇瑠寅(うるとら)などといったキラキラネームもビックリの命名センス。そして、こちらはあまり知られていないが、親方にはビーズ編みというカワイイ趣味もある。

 親方とビーズの出合いは10数年以上前の現役時代。おかみさんとして現在“活躍”する妻・めぐみさんのビーズアイテムを見たことだった。プレゼント代の余裕がなかった当時のことを親方はこう振り返っている。

「プラモデルなど細かい作業が好きで、自分で作れると思ったんです。材料を買いに手芸屋に行くのは恥ずかしかったけど、作り始めたらあっという間に2、3時間経っていた」

 数日かけ苦心して作った初めての作品を受け取っためぐみさんは、

「まさかこんな大きな手で作れると思わなくて、ビックリしました」

 以来、妥協しない性格と集中力でみるみる上達。図面を引いてオリジナル作品を作るプロ級の腕前に。ついにはビーズでミニチュアの化粧まわしまで作ってしまった。

 式秀親方はこう続ける。

「ビーズの穴にテグスを通すように、小さな一点に集中して狙っていく。上手くいかなくても、改めて挑戦し続ける。色々気付かされました。相撲を忘れるリラックスタイムですが、ビーズに没頭していると、ふと相撲について閃いたりするんです……(弟子たちには)強いだけでなく、人に愛される、魅力ある力士になってもらえたら」

 力士のことを考えるあまり、メンタルに不調をきたしたのだろう。師匠代行におかみさんを任命したのも信頼していたがゆえのことだろうが、いかんせん、おかみさんと弟子たちとの絆はそう強くなかったのかもしれない。

「最近のおかみさんはコロナ禍に過剰に反応し、細かい指示を長文でグループLINEに流して即レスじゃないと厳重注意したりとか、反抗的な態度を取るとクビにするぞと脅したりとか、そんな感じだったみたい。今の子たちはついていけないですよね。式秀親方は6日の師匠会に出席した際、迷惑をかけたことを詫びていましたね」

力士は「米びつ」、年間4000万円くらいは協会からお金が流れていた

 ところで、問題の処分についてだが、協会は及び腰のようで、身内への甘さが見え隠れする。別の協会関係者に聞くと、

「協会としては、“おかみさんは協会員じゃないから処分を科すことはできない”というスタンスですね。そうかもしれないけど、おかみさんと言えば部屋のナンバー2だし、式秀部屋だと親方不在でおかみさんは師匠代理だったんだからこれはもうトップですよね。そのおかみさんがイヤで逃げた力士がそのまま何もなしで戻るっていうのも無理筋でしょう」

 そして、協会が部屋に対して強制力を発揮できる根拠としてお金の流れを上げる。

「力士養成費とか部屋維持費とか、そういう名目で教会は部屋にお金を支払っているんです。幕下以下の力士の場合ですけれど、式秀さんのところは20人くらいいるわけで、年間4000万円くらいにはなる。彼らを養うのに相当な出費が必要だと思われるかもしれませんが、その辺りはタニマチが支給してくれたりするんです。米だってそうだったのに、おかみさんはそれを別のところへ流用し、力士たちには古米を食べさせていたそうじゃない。協会からお金を引っ張ってくる材料という意味で、力士は『米びつ』って言われているのにね。米の話ひとつとっても弟子たちは不憫でならないですよね」

週刊新潮WEB取材班

2020年8月12日 掲載