巨人が20日のDeNA戦(横浜スタジアム)を5対0で快勝、優勝マジックを「32」とした。落としていたら(20日現在)さすがに同一カード3連敗はまずいし、それに阪神戦からの4連敗となって、少しは慌てる気配が出たかもしれない。

 先週は今後の巨人、5割でいけばいいと記したが、どこのチームも残り試合は40少しだ。もう5割でなくてもいいのではないか。大きな勝ちだった。その原動力となったのが畠世周投手だ。先発予定だったC・C・メルセデスが左ヒジに違和感を訴えて登板回避したために代役となったが、実にいい投球をした。

 畠、もともと力のあるボールを投げる。今年4年目、毎年ローテ候補に挙げられながらも、ケガに泣いてきた。それに課題は制球力で、四球で走者を溜めては一発を食らうことが多かった。ベンチも四球だけは防げない。監督、コーチは不安になるだけだ。守っている野手にも悪影響を与える。

 前回の広島戦は(8月22日)3回途中で5四死球と自滅した。だが、20日の畠は打者に対し低めを狙い丁寧に投げていた。6回78球で四死球は1。バックがよく盛り立てたが、投球のリズムがよく、四死球が少なかったということもあるだろう。

 とにかく、ストライクが入らないことには始まらない。

 同日、ロッテに移籍した澤村拓一が延長十回2死から3四球で満塁としている。なんとか切り抜けたが、こんな時、ベンチはたまったものではない。澤村ほどの球威があれば四隅を狙う必要はない。元に戻らないでほしい。こう思った次第である。

 話を元に戻す。それにしても今年の巨人は巡りあわせがいい。2年目の戸郷翔征が開幕からローテの中心を担ってきたが、ここに来てもがき苦しんでいる。9月に入って3戦0勝2敗、防御率は6・11だ。18日のDeNA戦は5回を被安打8で自己ワーストの6失点を喫した。

 こんな時に畠が出てきた。今季はこのようなケースが多い。

 その戸郷、相手チームにかなり研究されている。左打者にはシュート気味、右打者にはスライダー気味に落ちる低めのフォークを有効に使ってきた。ややボール気味だがカウントを取って主導権を握り、また勝負球にしてきた。相手打者はよく手を出していた。

 最近、見ていると、対戦打者たちはこのボールを振らなくなった。となるとカウントが悪くなり、どうしても高めとなる。これをきっちりと打たれている。

 戸郷にとって今季は実質プロ1年目だ。開幕から菅野智之とともに巨人投手陣の軸として働いてきた。精神的にも肉体的にもきついだろう。そのきつさに相手チームの研究だ。

 でも、ここは乗り越えなければならない壁だ。戸郷もまた研究する必要がある。例えば外角低めのストレート、スライダーの制球力に磨きをかけて、このボールで打者を追い込む。追い込んでからのフォークを使う。これは効果的だ。多少低めでも振ってしまう。

 研究されたら研究し返す。この意気込みで壁を乗り越えてほしい。

 21日・広島戦(東京ドーム)の先発はこれまた2年目の直江大輔投手だ。この記事が出ている頃には結果も出ているが、彼の持ち味はストレートにスライダー、それにフォークだ。長い回を投げるためには制球力、ここという場面での外角低めをどれだけ決められるかだろう。ちなみに私、いまの菅野はそれほどよくないと見ている。ボールは高くキレがない。いいスライダーなどがあるけど、変化球でごまかしている印象だ。なにより外角低めへのボールが少ない。本人ももちろん、わかっているだろう。22日に先発予定だが、そのへんもじっくり見たいと思っている。

 首位を独走する巨人だが、その要因として菅野の11連勝、戸郷の躍進、本塁打王を狙う4番岡本和真、脇役陣の活躍、高梨雄平やZ・ウィーラーの加入などが挙げられるが、一番大きいのは守備力の充実だろう。

 本塁打数、得点、防御率がリーグトップ(20日現在)だが、失策数もリーグ最少の「20」で、2位の阪神はリーグワーストの「56」だ。穴がない。

 二塁・吉川尚輝は言うまでもなく坂本勇人、岡本和真はしっかりしている。丸佳浩も守備はうまい方だ。亀井善行、それに松原聖弥もいい。成長が目につくのは大城卓三だ。キャッチングが向上しており、ショートバウンドにもきっちり対応している。投手陣も安心して投げることができる。

 一つ言えるのは今季の巨人、守備に対する意識の高さだ。時にオヤッと思うことがあってもすぐに修正してくる。

 川上(哲治)さんのV9時代、王(貞治)さん、長嶋(茂雄)さんに代表されるように打撃面がスポットライトを浴びるけど、川上さんがよく強調していたのは抜群の守備力の高さだった。誇りにしていたし、これがV9の土台だった。

 やはり強いチームには確かな根拠がある。

 プロ野球は19日から上限5000人としていた入場制限を引き上げた。21日からは本拠地・東京ドームも緩和される。独走巨人がこれからどんな戦いを見せてくれるのか。楽しみにしたい。

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会副理事長を務める。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年9月22日 掲載