父と息子はまたしてもすれ違った。ヘンリー王子は5月7日、自身が創設したスポーツ大会の記念式典などに出席するため英国に単独で一時帰国。父のチャールズ国王ががんを公表した2月は「緊急帰国」で約30分の対面を果たしたため、今回も父子の会話があるのでは……という予測もあった。だが結局はすれ違いに終わり、双方の関係者が“見解のズレ”を明らかにしてしまう始末で……。

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ウィリアム皇太子への「任命」

 ヘンリー王子は現地時間7日朝に英国入りしたが、この帰国予定はすでに公表されていたため、世間は早くから「父子の再会」に注目していた。折しもチャールズ国王は4月30日から公の場での公務に復帰し、訪問したロンドンの病院で元気な姿を見せている。

 だが、ヘンリー王子の広報担当者は同日、英米メディアからの問い合わせに対し「チャールズ国王の予定が詰まっているため」帰国中の再会はないと回答。するとバッキンガム宮殿は同日、チャールズ国王がウィリアム皇太子を陸軍航空隊大佐の名誉職に任命する(任命式典は14日)という発表で事情通たちを驚かせた。

 軍人時代のヘンリー王子はこの連隊に所属し、メーガン妃との王室脱退がなければヘンリー王子が同職につくとみられていたからだ。自身の軍歴を誇りとするヘンリー王子は退役後に任命された複数の名誉職を重んじており、メーガン妃との王室脱退に伴う返上に納得していなかったという。軍の名誉職はいわばヘンリー王子の“急所”といえるため、今回の任命はヘンリー王子への「冷遇」を示しているとの見方が強まった。

セントポール大聖堂に王族の姿はなく

 一方で英メディアはチャールズ国王とヘンリー王子の行動予定から、父子が「会おうと思えば会える距離」にいることを事前に確認していた。

 7日と8日のチャールズ国王はバッキンガム宮殿での公務だった。8日は午後にガーデンパーティを主催し、夜にはリシ・スナク首相との定例謁見に臨んでいる。対してヘンリー王子は同日午後5時、自身が創設した傷痍軍人らの国際スポーツ大会「インビクタス・ゲーム」10周年記念式典に出席。会場のセントポール大聖堂はバッキンガム宮殿と直線で約3.3キロメートルの距離だ。

 そのため対面するなら8日が濃厚とみられたが、ヘンリー王子側の発表で“対面ナシ”が確定する。しかも、主要なロイヤルファミリーはガーデンパーティに出席し、セントポール大聖堂に姿を見せたのはヘンリー王子の亡き母・ダイアナ元妃の姉弟だったという状況もまた、ヘンリー王子への冷遇説に拍車をかけた。

 ヘンリー王子は緊急帰国後の2月中旬、米情報番組で「今後もできるだけ英国に立ち寄って家族と会う」と断言していた。今回の再帰国でも対面を希望するだろうという予測は容易であり、しかも前回の緊急帰国時より長い“準備期間”があったはずだ。それでも「会わなかった」あるいは「会えなかった」とは、いったいどういう事情なのだろうか。

「いつもすべては他人のせい」と批判

 チャールズ国王が「私的な問題より公務を優先したからだ」と主張するのは、王室評論家のロバート・ジョブソン 氏である。ジョブソン氏は英紙「ザ・サン」への寄稿で、チャールズ国王が10日、慈善事業に関する件でデヴィッド・ベッカム氏と会談したことは「国王の見識ある判断を反映している」と綴った。加えて、ヘンリー王子とメーガン妃が2018年からベッカム夫妻と不仲に転じていることから「ある種の皮肉もある」という。

 米ニュースサイト「デイリー・ビースト」は、ヘンリー王子が回想録『Spare』でカミラ王妃をこき下ろしたからだと報じた。証言したのはチャールズ国王夫妻 とウィリアム皇太子夫妻の友人。バッキンガム宮殿の元スタッフも、チャールズ国王が対面を拒絶したように読めるヘンリー王子側の発表を「いつもすべては他人のせい」「会えないのは自分が家族を売り飛ばしたからだと知っているはずだ」と批判した。

 同メディアは別記事でも、チャールズ国王がワーキング・ロイヤル(公務に従事する王族)に対し「ガーデンパーティへの出席を求めた」としている。ただし、この記事に登場するバッキンガム宮殿の元スタッフは、そうした行為は王室が「自分たちにとって損になることをした典型例です。なぜならインビクタス・ゲームは明らかに王室が支援すべきタイプの組織ですから」と王室側を批判した。

王室所有の邸宅での滞在を蹴ってホテルへ?

 国王としての立場を優先した結果が冷遇になったのか、それとも冷遇が主目的だったのか。チャールズ国王の友人は英紙「タイムズ」の日曜版「サンデー・タイムズ」に対し、チャールズ国王はヘンリー王子が求めた王室所有の邸宅での滞在を許可していたが、ヘンリー王子はなぜかホテル滞在を選んだと明かした。

 その上で、チャールズ国王の多忙さを考慮すれば、王室所有の邸宅に滞在したほうが対面の機会を作りやすかったはずだとも指摘している。また、知る限りではヘンリー王子がチャールズ国王との対面を希望したり、セントポール寺院での記念式典に招待したりといった事実はなかったという。

 対してヘンリー王子側は、チャールズ国王が闘病中にもかかわらず慌ただしい予定をこなしたため対面できず、困惑していると述べた。たとえヘンリー王子からの対面希望が見過ごされたとしても、チャールズ国王から希望することはなかったのかとの疑問も呈している。

英国訪問後はメーガン妃とナイジェリア訪問

 ヘンリー王子と王室の間の“見解の相違”はすでに定番だ。2月の緊急帰国もヘンリー王子にとっては美談だが、予定を遅らせてまで対面の時間を作ったチャールズ国王は「苛立っていた」という説もある。

 こうしたズレを「記憶が異なるかもしれない」という見事なフレーズで表現したのは故エリザベス女王だった。「タイムズ」紙の記事でも、チャールズ国王の友人は「とても悲しいこと(状況)だ」とした上で、国王側があえて慌ただしい予定を組んだのではないかという指摘については「再び『記憶が異なるかもしれない』と言っておきましょう」と語っている。

「宮殿とヘンリー王子陣営の間で騒動が勃発」と報じた英紙「デイリー・メール」では、読者コメント欄に呆れムードが漂っている。中には「実の父に会えないなら義理の父に会うのはどうか」という意外に鋭いジョークも寄せられていた。義理の父とはメーガン妃から縁切りされている事実を度々訴えているトーマス・マークル氏である。

 そんなメーガン妃は英国滞在を終えたヘンリー王子とナイジェリアを訪問した。米国から英ヒースロー空港に飛び、空港内のVIPラウンジで合流したという。ナイジェリアにルーツがあるというメーガン妃は現地で終始上機嫌の笑顔を見せていたが、「偽王室」あるいは「準王室」のロイヤルツアーと英国内で不評を買っているのは言うまでもない。

 夫妻ともども批判や穿った見方を避ける効果的な手段はまず、「家族との関係をマトモにする」ことではないだろうか。

デイリー新潮編集部