ウイルスは国境を越える。今こそ世界が、昨年の流行語大賞である「ワンチーム」となって新型肺炎と対峙すべき時であろう。しかし、お隣の国の振舞いを見ると哀しくなってくる。

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 欧州では感染者、死者ともに少ないドイツが、窮地に陥っているイタリアやフランスからの重症者を受け入れ、ワンチームを実践している。アジアもそうありたいところだが、韓国はこの期に及んで反日に勤(いそ)しんでいる。

 韓国ウォッチャーが説明する。

「新型コロナウイルス対策に関しても、韓国では自分たちが勝っていて日本は劣っているとの論調が目立ちました。曰く、韓国の感染者数が多いのは日本よりPCR検査を徹底的に実施した結果であり誇るべきもので、日本は防疫の失敗を糊塗するために韓国からの入国を規制したと。しかし、今や各国が入国規制を行っていて世界の常識になっている。日本批判はお門違いだったと言わざるを得ません」

 にも拘(かかわ)らず、日本でも韓国のウイルス対策を持ち上げるムキがいる。例えば、

「3月中旬時点で新型コロナウイルスによる致死率の世界平均が3・4%だったのに韓国は1・0%であることを紹介し、韓国の検査徹底の方針を見習うべきではないかと言わんばかりのテレビ報道がありました」(厚労省担当記者)

 それに比べ、3月29日の時点で日本の感染者数は2612人、死者は66人だから致死率は2・5%。単純にこの数字だけを比較すると「韓国礼賛」の結果が導き出されることになる。

 ところがこの致死率が曲者で、検査対象を広げれば同時に「分母」も増えるわけだから自ずと致死率は下がる。畢竟(ひっきょう)、医療崩壊状態のイタリアのような例外を除けば、検査すればするほど致死率は低くなるわけだ。

 しかし、ここで冷静に考えてみる必要がある。果たして分母は感染者数であるべきなのだろうか。

 実際、「もうひとつの致死率」が存在する。各国の研究者などが協力しているサイト「ワールドメーター」によると、3月28日時点で人口100万人あたりの死者数はイタリアが151人、韓国は3人であるのに対し、日本は0・4人に過ぎない。分母を人口にして試算する「真の致死率」は、韓国より日本のほうが圧倒的に低いのだ。

「最終的な目的は…」

 韓国事情に詳しいジャーナリストの石高健次氏が解説する。

「韓国のCDC(疾病管理本部)が3月30日に発表した統計を見ると、感染者9661人のうち20代と30代が3632人と全体の約38%を占めていて、死者は両世代であわせて1人。致死率の低い若年層が感染者の相当な割合を占めれば、全体の致死率が下がるのは当然です。一方で、特に流行初期には軽症者が多数入院してベッドを埋め、高齢者が充分な治療を受けられなかったようです。現時点で高齢者は毎日のように死亡していると聞いています」

 同志社大学客員教授で「松本クリニック」院長の松本浩彦氏もこんな見解を示す。

「PCR検査は検査する人に高いスキルが求められ、闇雲に検査数を増やすとその分、精度が下がってしまいます。確かに韓国では日本の数十倍の検査を行っていますが、数が多い分、偽陰性や偽陽性がたくさん出ていると考えるべきです。つまり、本当は陰性なのに無駄に隔離して医療リソースがそこに割かれてしまったり、逆に本当は陽性なのに陰性のお墨付きを得ることで、その人が外を歩き回ってさらなる感染拡大を招いている可能性もある。検査件数が多ければ良い、少なければ悪いという単純な問題ではないのです」

 最後に浜松医療センターの矢野邦夫副院長が、

「韓国を見習うべきとの意見には同意しかねます」

 として、こう締めくくる。

「新型コロナウイルス対策の最終的な目的は、死者の数を増やさないことです。国単位で考えると、国民100万人あたりの致死率が低いほど、このウイルスとの戦いに勝ったと言えます。今のところ日本はこの数字が低いのですから検査数は適切だと言えるでしょう。最も恐れなければいけないのは、検査数を増やして医療現場がパンクするリスクを高めてしまうことです」

 歴史のみならず、医療でも「自虐」が罷り通ることがあってはならない。

「週刊新潮」2020年4月9日号 掲載