反日感情を持った韓国のアーミーは

 世界的なアイドルグループ、BTSが7月15日、2年3か月ぶりに日本で4枚目のフルアルバムをリリースした。今回のアルバムには、メンバーが作曲に参加したり、ヒット曲の日本語バージョンが収録される。プロモーションのため、13日からメンバーは日本の番組に韓国から連日リモート出演。世界で売れに売れても日本語で歌うなど、イル活(日本で活動)中のBTSに、韓国では「日本語の歌を歌うのは売国行為」という声が上がっているという。冷え込んだ日韓関係にBTSが巻き込まれた格好だ。

 今回のアルバムのタイトルは「MAP OF THE SOUL:7 〜THE JOURNEY〜」で、日本オリジナルの2曲が新録される。1つは田中圭主演ドラマ「らせんの迷宮〜DNA科学捜査〜」(テレビ東京)の主題歌で、「この世界はいいことばかりじゃないけれど、君のその輝きを失わないで」というメッセージが込められた「Stay Gold」。そしてもう1つは、映画「きみの瞳が問いかけている」(出演:吉高由里子、横浜流星、監督:三木孝浩、公開:10月23日)のテーマ曲に選ばれた「Your eyes tell」。メンバーのジョングクが作曲に参加している。

 さらにこのアルバムには、ヒット曲「ON」「Black Swan」「Make It Right」「Dionysus」の日本語バージョンも収録。また、日本レコード協会・ゴールドディスクからミリオン作品の認証を受けた「Lights」と「Boy With Luv」や、日本現地でのみ発売される新曲2曲も追加し、計13曲で構成される。

 BTSは2014年6月4日、シングル「ノーモア・ドリーム」を発売して日本デビューを果たし、同年12月24日、日本で1枚目のアルバム「WAKE UP」を通じて本格的な活動に突入した。2018年4月に3枚目のアルバム「FACE YOURSELF」を出し、バラエティ番組の出演、シングルアルバムの発売、巡回コンサート、ファンミーティングなど、様々な活動を続けてきた。

 BTSは米国に進出する時も英語の正規アルバムを発売しなかったが、日本でだけは日本語の歌詞で構成されたアルバムを発売している。これに反日感情を持った韓国のファンの一部は絶えず問題提起をし、「日本語の歌詞の歌を歌わないでほしい」と主張してきた。

 BTSはアメリカや海外の市場に進出し韓国語のアルバムをリリースしてきた。所属事務所であるビッグヒットエンターテイメントのパン・シヒョクは過去のンタビューで、韓国語アルバムでの海外進出について、「(BTSが)米国で英語の歌を歌うことはない」「米国進出のために、英語の歌を発表するのは私たちのやり方ではない」としたうえで、「Kポップ歌手たちに英語を教え、米国の会社と契約するのはすでにKポップではないと思う」と説明している。

 それにもかかわらず、日本でだけは日本語バージョンのアルバムをリリースし続けている。反日感情を持ったファンの事務所代表への不満はそこにある。

 実は、BTSだけでなく少女時代、KARA、東方神起、EXOなども日本語バージョンのアルバムをリリースしてきた。これについて韓国の専門家は「日本の音楽市場は韓国の市場よりずっと大きいため、日本現地攻略のためには避けられないから」と分析している。音楽評論家のイム・ジンモ氏はマスコミのインタビューで、「韓国歌手が日本市場に進出するために日本語版の歌を作ることは必須で、韓国だからこそ可能な積極的な攻略方法だ」と評価した。大衆音楽評論家のヒョン・ヒョン氏も、「西欧音楽以外のアジア音楽に無関心な日本大衆の視線を引くため、日本語バージョンを出すことには選択の余地がなかっただろう」と強調している。

大統領府宛に、「日本に文化的屈従をするようになる」と書き込み

 実際、国際アルバム産業協会(IFPI)の調査によると、2016年の日本の音楽市場規模は27億4590万ドル(約2949億円)で、米国に次ぐ世界2位。3億3010万ドル(約354億円)で8位の韓国との差は歴然。地理的に近く、似たような大衆文化を持つ日本市場で、より高い収益を生み出すためには日本語による現地化戦略は欠かせないというわけだ。

 韓国や米国などほとんどの国で絶えてしまった「CDアルバムを購入する文化」は日本にまだ残っており、実際、日本のCD販売数は世界1位を記録している。所蔵価値の高い限定版CDであればあるほど販売数が見込めるし、握手会のようなイベントを通じてさらにCD販売数のアップにつながる。

 日本の音楽市場でCDはストリーミング、ダウンロードよりもはるかに大きな比重を占めている。日本レコード協会(RIAJ)によると、2019年の市場規模2997億6000万円のうち、CDは68.9%。クリック数による広告単価などを受けとるストリーミング、1曲当たりの著作権料が策定されるダウンロードより、1枚当たり3000円程度のCD販売は効率的な収益確保が可能な構造である。

 このような現地化戦略の背景を知っているか否かは別にして、韓国人の一部は、BTSが日本語で歌を歌うことに対して遺憾を表明してきた。KポップがJポップを抑えてアジアの大衆歌謡の象徴にならなければならない重要な時期に、その代表走者であるBTSが日本語の歌を歌うのは正当ではないというわけだ。あるユーザーは「日本語バージョンアルバムには韓国アルバムにない歌がある」とし、「グローバル海外ファンのために英語バージョンの歌を歌わないBTSが、日本語バージョンの歌だけを歌うのは残念だ」と話す。

 こういった主張はアーミーの真摯な異議申し立てというよりはむしろ、反日がアーミーに成り代わって所属事務所へ圧力をかけているようにも映るのだが……。ともあれ、他のユーザーは「海外のファンは韓国語の歌詞を覚えて真似しているが、日本のファンは韓国語の歌詞が分からなくなる。一貫性を保ち、日本でも韓国語の歌を歌わなければならない」とも。

 あるいは、「誇らしいBTS、もう日本語アルバムはやめよう」という呼びかけには多数の擁護の書き込みがあり、「日本語アルバムを出す必要はない。日本語の歌を聞くとBTSの質が落ちる」「ワールドクラスなら日本語で歌う必要はない。世界中のファンにBTSの日本語の声を聞かせてはいけない」などの反応があった。

 国民が政府に対して要望を書き込める青瓦台国民請願掲示板にもこの話題は登場している。たとえば「BTSは日本語アルバム発売を中断しなければならない」という請願は、大いに注目を集めた。請願者当人曰く、「所属事務所は日本語バージョンを要求する日本エージェンシーに振り回されて日本語アルバムを出している」とし「Kポップが日本語バージョンに編集されればその意味が歪曲され、日本に文化的屈従をするようになる」と強調。

 別の請願人は「日本語のアルバムには本当に怒りを感じる。日本語のアルバムはKポップのアルバムではなく、Jポップのアルバム。これが親日や売国でないなら何だというのか」とし、日本語のアルバムを出す芸能事務所への政府支援を禁止することを主張した

 ある芸能メディアはそういった声に配慮してか、「全世界にKポップを広報しているBTSが、日本でだけは日本語のアルバムを出すのは苦々しい」と指摘している。

張惠媛(チャン・ヒェウォン)
建国大学広報大学院でジャーナリズムの修士号を取得、漢陽大学政治外交学科大学院で国際政治を専攻。世界日報、東亜日報、KBSなどで記事編集に携わった後、フリーに。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年7月15日 掲載