大統領選が迫ったアメリカでは、トランプ政権が対中政策を根底から覆し、世界は大揺れである。

 7月21日、アメリカ政府がテキサス州ヒューストンにある中国総領事館の閉鎖を要求。23日にはポンペオ米国務長官が演説で、50年近く続いてきた中国に対する“関与政策”を変更すると明言したのだ。

 ポンペオに〈知的財産窃取とスパイの拠点〉とまで言わしめた総領事館で、中国は一体、何をやっていたのか。

 国際ジャーナリストの山田敏弘氏によれば、

「ヒューストンはオイルビジネスなどアメリカのエネルギー産業の中心。研究者としてビザを取得した人民解放軍の関係者などが技術や情報を盗んでいたとみられています。さらに、この総領事館は、アメリカで頻発するデモなどにも資金を提供していたと囁かれており、当局はスパイの巣窟だったと睨んでいる」

 中国当局は、もはや全米の隅々にまで“工作”を浸透させているという。

「23日には、サンフランシスコで中国人の女性研究者がFBIに拘束された。このように研究者を隠れ蓑にしたスパイは珍しくなく、昨年には、ハーバード大学から癌細胞のサンプルを持ち帰ろうとした中国人男性を逮捕。カリフォルニア大やボストン大など名門校でも“スパイ研究者”の摘発が相次いでいます」

 元共同通信ワシントン支局長の春名幹男氏は、

「ポンペオには、派手な対中強硬路線で選挙を有利に進める意図もあるのでしょう。大統領選の民主党候補・バイデンの息子に、中国企業との癒着疑惑があることも意識しているはずです」

 国内の政治力学も絡む。

「ただ、中国との対立で景気が冷え込めば、支持率は下がり票は離れる。ポンペオはトランプの最側近ですが、一貫した政治哲学や理論を欠くイエスマン。中国は今後、本気でトランプ落選を画策するでしょうから、今回の判断がプラスに働くかは未知数です」

 米中冷戦から“熱戦”へ。

「週刊新潮」2020年8月6日号 掲載