「大相撲春場所・13日目」(20日、エディオンアリーナ大阪)

 横綱白鵬が大関とりに挑む関脇朝乃山の大きな壁になった。前日の完敗から一転、右差し一気の押し出しで2敗対決を制し11勝目を挙げた。平幕碧山が隆の勝に敗れ2敗に後退。V争いトップは3人が並び、14日目は白鵬と碧山の2敗同士の直接対決が組まれた。大関貴景勝を寄り切り2敗を守った横綱鶴竜は朝乃山の挑戦を受ける。朝乃山は大関昇進へ残り2日、必勝出陣だ。1差3敗の朝乃山、平幕御嶽海、隆の勝までが優勝の可能性を残す。

 呼びかける報道陣を一切見ることなく、白鵬が険しい顔で会場を去った。新型コロナウイルスの影響で記者と2メートルの距離がある取材エリア。無言は2日連続ながら前日が敗戦の悔しさなら、この日は完全優勝モードに入った気迫を感じさせた。

 史上最多V43を誇る横綱のプライド。簡単に大関昇進は許さない。低く鋭い立ち合いで右を差し、巨漢を起こして一気に出た。朝乃山の反撃もかまわぬ猛攻。勢い余って自らも土俵を飛び出した。

 型は同じ右四つ。がっぷり組むことも可能ながら電撃速攻で馬力自慢に何もさせなかった。多様な攻めが史上最多1158個もの勝利を積み上げてきた。

 四つ身の大器、スケール感を早くから白鵬も目にとどめてきた。昨年名古屋場所前には自身の部屋まで出稽古に来た。心意気を買い、全力で稽古を付け、勝負の厳しさを伝えた。大関とりの26歳にまた大きな壁となった。

 前日は正代に不用意な張り連発で自滅したが即修正。八角理事長(元横綱北勝海)は「集中力があった。低いよね。立ち合いの差」とうなった。審判長の藤島審判部副部長(元大関武双山)は「すごい相撲。スピードも低さも圧力も上」と絶賛した。14日目、2敗対決の碧山は過去対戦21回で全勝(1不戦敗)。V44へ一直線だ。

 今場所4日目、3月11日に35歳になった。昨年9月3日に日本国籍取得後初の誕生日。「生みの親と育ての親という感じ。誕生日が2回あるのはうれしい」と喜んだ。千代の富士の35歳5カ月での横綱Vに続く、35歳代での優勝も視界に入る。

 過去、大相撲の危機に存在感を見せてきた。野球賭博問題に揺れた10年名古屋場所、八百長問題の11年夏、技量審査場所でともに優勝。史上初の無観客開催も白鵬が制し、また歴史に名を刻む。