「練習試合、ヤクルト6−5阪神」(21日、神宮球場)

 神宮の風に乗った白球が、ゆっくり左翼フェンスを越えた。打った阪神の植田海内野手が全力疾走で二塁を回る。ようやくスタンドインに気付くと、はにかむように白い歯を見せた。「人生初」のグランドスラム。史上最速で開花宣言が出た東京でのビックリ満塁弾で、内野の定位置争いに待ったをかけた。

 「打ったことないですね。小学生の時も…」。何度、脳裏の記憶をたどっても、経験のない感触が両手に残る。5点差で迎えた七回2死満塁の好機で右打席に立った。六回に代走で登場。すかさず二盗を決め、巡った打席でも積極性を貫いた。

 左腕・中尾の初球。甘く入ったスライダーを狙う。「風に助けられました」と謙虚に振り返ったが、新井打撃コーチは「いい打ち方をしないとホームランにはならない。いろんなことが凝縮された1本だ」と説明。努力の過程、成長を手放しで喜んだ。

 「井上コーチ、海が振れています!!」−

 試合前の打撃練習。新井コーチが猛プッシュした。最後の1球。井上打撃コーチが「打ったら(スタメンを)健斗(糸原)と替えるか!?」とプレッシャーをかける。緊張感いっぱいのラストスイングは凡打になったが、実戦の“打ち直し”で最高の結果に変えた。

 走守に秀でた逸材。「課題」という打撃面の成長を、矢野監督も高く評価している。「打つレベルが上がれば、レギュラーで出られる選手」。二塁に糸原、上本、遊撃には木浪、北條と激戦区の争いだが「控えでいいと決めていることはない」とスタメン起用の可能性にも言及した。

 公式戦は通算1本塁打。昨年6月12日のソフトバンク戦での、2年目から挑戦する左打席での一発だった。本来なら開幕2戦目だった舞台での“2号”。惜しくも幻にはなったが、確かな成長を示す一本にもなった。飛躍の予感漂う23歳。二遊間のダークホースが、猛アピールを続けていく。