ビル・ゲイツが28億円で落札したノートの中身ーー「万能の天才」のレオナルド・ダ・ヴィンチの思考法とは?

ビル・ゲイツが28億円で落札したノートの中身ーー「万能の天才」のレオナルド・ダ・ヴィンチの思考法とは?

「万能の天才」として名高い偉人レオナルド・ダ・ヴィンチ。30体以上の死体を解剖することで医学史上初めて動脈硬化症による人間の死を報告し、数々の優れた建築デザインを手がけ、世界最高額508億円の名画「サルバトール・ムンディ」を描き、天文学者として研究を続けた。活躍の分野はまさに万物に至る。

 その偉大な功績にあやかってか、手術支援ロボット、昔ANAの飛行機に使用されたロゴマークなど、「ダ・ヴィンチ」を由来にするものは多い。総合文芸誌『ダ・ヴィンチ』も同じくこんな由来がある。

「あふれる好奇心をエネルギーに自分の世界を広げたレオナルド・ダ・ヴィンチのように、一人でも多くの人が本を通じて、自分の興味・関心の世界を広げてほしい」

 1994年には、ダ・ヴィンチ直筆の思考ノートの1冊を、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツが28億4000万円で落札。落札された本としては世界で最も高価な本として話題になった。さらにゲイツはダ・ヴィンチに関してこのようなコメントを残している。

「ダ・ヴィンチは、当時地球上で知られていたことをほぼすべて理解する寸前までいっていた」

 ここまでくるとダ・ヴィンチは、フィクションの世界の人間のように感じる。たしかに彼が日々どんなことを考え生きたのか非常に気になるところだ。しかし28億円も出さないと彼の思考に触れられないのは悲しい…。と、考える読者にご紹介したいのが、『超訳ダ・ヴィンチ・ノート 神速で成長する言葉』(桜川Daヴィんち/飛鳥新社)だ。

 本書は、ダ・ヴィンチの膨大な思考をまとめた直筆ノートを研究し、現代社会で生かせる仕事術へと昇華させたもの。彼が後世に残した言葉・習慣・考え方をわかりやすく解説し、人生が変わるヒントを限界まで盛り込んでいる。そんな本書の一部を少しだけご紹介したい。

■勝者とは、始める人ではなく続けた人のこと

「私は続けるだろう」

 晩年のダ・ヴィンチ・ノートには、こんなつぶやきが書き残されている。彼は数々の偉大な功績を成し遂げたが、そのすべては「調べてノートに書き続ける」、「とにかく絵を描き続ける」という2つのシンプルな繰り返しから生まれた。

 晩年こそ多額の報酬を得るようになった彼も、若い頃は実績がないため、小麦やワインの現物支給を前借りして仕事をする「その日暮らし」に甘んじるときがあった。ダ・ヴィンチとて、決して順調な人生だったわけではないのだ。

 どんなときでも彼は常識を疑うように、すべての物事に好奇心を持った。鳥のように大空へ飛び立つ飛行への挑戦、人体の謎を解明するために行った人体解剖、「芸術家」が「職人」として扱われたルネサンス当時に負けることなく描き続けた絵画。

 傑作は、最高の環境がそろわないとできないわけじゃない。どんな状況でも諦めずに続けることが自信につながり、静かに才能を育て、次第に周囲に認められる存在になることもある。大きな成果を成し遂げるのは、「新しいことを始める人」じゃない。ずっと我慢強く「続けた人」だ。このことを数百年も前から理解して実践したダ・ヴィンチは、やはり「万物の天才」である。

■メモ魔になれ

 ダ・ヴィンチは、色々なサイズのノートにメモを取り、いつも携帯用サイズのノートを持ち歩いていたそうだ。ズバリ彼は「メモ魔」だった。人物の容姿や動作、ひらめいたアイデアなど、絵画や研究に生かすため気になった情報のすべてをメモに書き留めた。

 また彼のメモはとにかく細かい。正面から見た人間の鼻を分類した図は11種類に及ぶ。これは家に帰ってから記憶を頼りに絵を描くとき、「あれ? あの人の鼻の形はどんなだったっけ?」と迷うことなく、あらかじめ作ったパターンを合成するだけでスムーズに制作できるからだ。絵画に対する情熱と用意周到さに舌を巻く。

 さらにダ・ヴィンチは、ノートをⅠとⅡの2つに使い分けていた。Ⅰが「アイデアを保存するためのノート」。Ⅱが「アイデアを洗練させ、人に披露するためのノート」だ。

 ダ・ヴィンチとて、すべてを記憶できる天才じゃない。だから情報をインプットするだけじゃなく、誰かにアウトプットする方法も常に記録し続けた。書き続けることで情報を吸収し、活用し、絵画として、研究として誰かに披露していたのだ。

 こう読み進めると、あのビル・ゲイツがダ・ヴィンチのノートを28億円で落札した理由がわかる気がする。ダ・ヴィンチのメモの活用法を知れば、天才的なアイデアを生み出す思考法が手に入るからだ。

 本書を読むと、ダ・ヴィンチは私たちと同じ人間だと知る。好奇心を持ち、得た情報や考察を記録し、夢を諦めることなく挑戦を続けた。これらは誰にでもできることだ。その先に、ダ・ヴィンチは偉大な功績を得た。私たちもそのうち何かしらの道が拓けるかもしれない。本書はダ・ヴィンチの思考法を解説するノートであり、私たちを凡人から解き放とうという勇気をくれる1冊だ。

文=いのうえゆきひろ


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