近頃、私たちは「すぐに役に立つ本」を求めすぎているように感じる。

 自分が抱えている仕事や恋愛、家庭の悩み。これらを解決するために、目的をもって本を読む。もちろん、切実な悩みに答える本も大切なのだが、読書の海はもっと広い。「すぐに役に立つ本」ではなくとも、読んだものはめぐりめぐって自分の血肉となっていく。

 本書『読書をプロデュース』(角田陽一郎/秀和システム)が唱える「バラエティ読み」には、そんな力がある。著者は、元TBSのプロデューサー・角田陽一郎氏。「さんまのスーパーからくりTV」や「中居正広の金曜日のスマたちへ」を手掛けたベテランだ。

あえて興味・関心のない本を選ぶ「バラエティ読み」の魅力とは?

「バラエティ読み」とは、一言でいえば、自分でおもしろさを見つけていく読み方。「バラエティ」は、日本語で多様性という意味だ。角田氏は「いろいろあるから、人も社会もおもしろい」と語る。世の中には途方もない数の本があり、現時点では興味のないものや、「どうせつまらないだろう」と先入観を持っているものもある。だが、著者は、偏見を持たず、それをまず受け入れてみることの大切さを語る。そこから、読書の扉が開かれていく。

 簡単にできる「バラエティ読み」として、著者はいわゆる「ジャケ買い」を推奨している。なじみの作者や、興味のあるジャンルではなくとも、タイトルや表紙でビビっときたら買ってみよう。当然、あまりおもしろくないこともある。だが、普段読まない本を手に取ることは、自分の考えの幅を広げてくれるきっかけになる。あえて、「ありえない」と感じるような、自分と真逆の主張をする本を読んでみるのも効果的だ。

読む本に迷ったら… まず「新書」コーナーに足を運ぼう

 本を選ぶのが苦手な人は、まず「新書」から読むべきだという。その理由には、

①1冊1000円以内でジャケ買いしやすい
②持ち運びしやすいため併読が可能

に加え、

③各出版社の優れた編集力・企画力

を挙げている。新書は、『私とは何か』(平野啓一郎/講談社現代新書)のように、タイトルやテーマがシンプルでわかりやすい。しかも、「難しすぎず、やさしすぎない」形で書かれている。1冊3000円する分厚い専門書を読まずとも、現代人に必要な教養が得られる。ついでに、硬めの本を読み下す力もつく。これこそが、歴代の編集者たちが作り上げてきた新書の世界だといえよう。

 本書の巻末には、岩波書店を始めとする新書レーベルの編集長との対談が収録されており、それぞれおすすめの新書を紹介している。「結局、何を読めばいいかわからない」という人は、こちらを大いに参考にしてほしい。筆者も早速、この原稿を書きながらネット書店で1冊購入した。

 その本もおそらく「すぐに役に立つ本」ではない。けれど、筆者の考え方に少しだけ影響を与えて、未来のどこかで行動を変えるかもしれない。途中の小話に夢中になり、新しい読書のきっかけになるかもしれない。はたまた、思いのほかつまらなくて10ページで挫折するかもしれない。その結果は、読んでみなければわからない。

文=中川凌