知人の子どもの写真入り年賀状を見て嫌な気持ちになるのは私だけ? 子どもをあきらめた先にはどんな未来があるの? 多様性の理念が浸透しつつある社会で、理想の家族像は旧態依然としている現代。子どものいない女性300人以上に話を聞いた『誰も教えてくれなかった子どものいない女性の生き方』(くどうみやこ/主婦の友社)から、全6回のエピソードをご紹介します。

子どもを持たなかった多様な理由

 子どものいない人たちは存在するのに、どこか置き去りにされているような感覚がしていました。それは長年、結婚して子どものいる人生が一般的だったことや、子どもを持たない人が少数派であることにも関係しますが、子どものいない人たちをひとくくりにしにくいこともあります。子どもがいる、いないで分けた場合は、はっきり線引きしやすい。結婚している、していないもそう。

 ところが、子どもを持たなかった理由となると複雑化します。不妊治療をしても授からなかった、病気など体の問題、仕事を優先した、チャンスがなかった、タイミングを逃した、経済的なこと、育てる自信がなかった、親の介護や家の事情、最初から欲しくなかったなど人それぞれ。しかも理由は一つだけとは限らず、いくつかの要因がからみ合っていることが多い。また、20代のとき、30代、40代と、年齢ごとに子どもへの思いは変化していき、子どもが欲しいのか、いなくてもいいのか、明確な結論を出せずに時が流れてしまうこともあります。

子どもへの希望と結果の違いで生じるマイナスの感情

 子どもが欲しい、欲しくないの二択で、くっきり分けられるとは限りません。「子どもを望む気持ちのグラデーション」(上図参照)のように、欲しいから欲しくないの気持ちを100〜0で示したとき、ご自身の気持ちはいかがでしたか。私の場合は、20代の頃は100だったけれど、30代に入って仕事が忙しくなり、90→80→70と少しずつ減少。38歳、39歳の頃は50くらいになっていました。子どもを欲しい気持ちはあるけれど、いてもいなくてもどちらもありと思い始めていました。ところがその後、子宮の病を患い、子どもが望めなくなると、欲しい気持ちに揺り戻されました。

 人によっては、若い頃から100のまま変わらなかった、最初からずっと0のままだった、または私とは逆で若い頃は欲しくなかったけれど、年齢や環境の変化で欲しくなるということも起こりえます。子どものことに関しては、年代やそのときの状況によって変化することが往々にしてあり、理屈どおりに進むものではありません。

 子どもが欲しい気持ちが100で、実際に授かって子どもを持てたら最高に幸せです。欲しくないと自ら選択したら、実際に持たなかったことに後悔はないでしょう。「子どもの有無に関する希望と結果」(上図参照)でいうと、AとBの矢印は希望どおりの生き方の選択ができたことになります。対して、Cの矢印は欲しかったのにできなかった、Dは欲しくなかったのにできたという希望とはクロスする結果なので、複雑な感情が生まれます。その中で、欲しくなかったのに子どもができた女性は、実際に自分の子どもを見たら愛おしくなり、産んでよかったとプラスに変わることはあります。一方、欲しかったのにできなかったCの矢印の人は思いとは逆の結果になるため、マイナスの感情を持ちやすくなります。

 さらに、欲しかった気持ちが大きければ大きいほど、マイナスの数値が高くなります。欲しいが50だと、結果はマイナス50。欲しい気持ちが100だと、結果はマイナス100のように、マイナスの値が大きくなるので、その分、マイナス感情を減らすのに時間がかかります。不妊治療をしている人は子どもが欲しいから治療をしてきたわけで、欲しい気持ちは100に近い数値で、結果が伴わなければネガティブな感情を抱えやすくなります。

持たなかった過程は異なるが結果は同じ、子どものいない人生

 子どもがいない理由はそれぞれで、気持ちのグラデーションはありますが、「子どもを持たなかった理由の区分」(下図参照)は、大きく分けると5つのタイプがあります。

1. 断念型
不妊治療や妊活など努力をしたけれど授からなかった、パートナーの不妊が原因であきらめざるをえなかったなど、子どもを望んでいたけれど結果的に断念したケース。いくら欲しくても自分の力だけではどうすることもできないのが、子どものことです。

2. 選択型
独身を貫きたい、仕事に没頭したい、子どものいる生活が考えられない、子どもが好きではないなど、何らかの理由で子どもは持たないと決めているケース。子どもを持たない人生を自らの意志で選択し、夫婦や本人が納得していれば、周りがとやかく言うことではありません。

3. 見逃し型
最初から子どもはいらないと決めていたのではなく、今は時期ではないと先送りした、あまり深く考えずに過ごしていたら産める時期が過ぎてしまったという、タイミングを逃してしまったケース。特に1965年〜69年生まれの「均等法第一世代」、70年代前半生まれの団塊ジュニアにあたる「均等法第二世代」に多いパターンです。

4. 不安型
子どもを育てる自信がない、経済的なことや将来が心配など、さまざまな不安要素から子どもを持つことをためらってしまったケース。自分の生活や将来の不安で精一杯なのに、子どもを持つ余裕がない、核家族化が進み、働きながら子どもを育てる環境ではないといった、なんとかなるだけの勢いでは産めないのが現在の日本社会です。

5. 覚悟型
女性特有の病気により妊娠・出産ができない、出産すると本人の命に危険が及ぶため医師から止められているなど、主に病気や体のことが原因で子どもを望めないケース。この場合、「子どもを持つ・持たない」の選択肢はなく、原因が判明した時点で子どもが産めないことを覚悟することになります。女性にとって子どもを産む可能性が断たれることはつらいことですが、なにより自分の体や命を優先することに意味があります。

 単に子どものいない女性といっても、その背景は実にさまざま。子どもを産めるか、産めないか、欲しいか、欲しくないか。きっちり二択で区切れるとは限らず、子どものいない人生になった要因も、はっきり一つに絞られるとは限らない。何十年か生きてきた中で紆余曲折があり、結果「子どものいない人生」になったのです。このことから、子どものいない女性はマーケティングしづらいといわれてきましたが、結果として子どもがいないことは一緒。それぞれの経緯や事情で異なる部分はありますが、子どもがいないことで感じる思いや共通項はたくさんあります。子どものいない女性にはさまざまなタイプがいることを認識しつつ、子どもを持たなかった過程より、その先の子どものいない人生に焦点を当てて進んでいきましょう。