「みんなと仲よく遊ぶことができない」「じっとしていられない」「相手の気持ちを考えられない」「マイペースすぎる」「順番を待つことができない」などは、多くの親が抱える育児の悩みだ。よく言い聞かせるだけでは足りずに、子どもを叱らなければならないことにもなるし、ときには他の親子に謝らなければならない場合もある。「育て方が悪いのだろうか…」「どうしてうちの子はこうなのだろう」と悩むこともあるだろう。特に入園・入学・進級などの時期には、そうしたことが気になりやすい。

 実は、そうしたトラブルは、もしかしたら発達障害のサインかもしれない。発達障害には「落ち着きがなく、不注意による失敗が多い」ADHD(注意欠如・多動症)、「人とのコミュニケーションが苦手で、こだわりが強い」ASD(自閉スペクトラム症)、「文字や数字などの理解に困難を抱える」SLD(限局性学習症)などがある。

 こうした発達障害をそのままにしておくと、やがて幼稚園や保育園、小学校や中学校などでの生活でもトラブルを抱え、本人はもちろん、周囲も困ることになる。また、子ども時代に適切な対応をしておかないと、大人になってからも職場にうまく適応できなかったり、家庭生活に困難を抱えたりする人がいることが、最近はよく話題になっている。

 しかし『もしかして発達障害? 子どものサインに気づく本』(主婦の友社)によれば、これらの発達障害は、よく注意していれば、入園・入学の時期までに、そのサインに気づくことができるという。たとえば、ADHD(注意欠陥・多動症)では「ひとつのことに集中できない」「物をよくなくす」などのサイン、ASD(自閉スペクトラム症)では「こだわりが激しい」「かんしゃくやパニックを起こしやすい」「人と目を合わせない」、SLD(限局性学習症)では「文字や数字などの理解や習得に苦労する」などだ。

 発達障害そのものは生まれつきのものだが、親をはじめ周囲の人たちがそれに早く気づき、うまく支援することで、本人も周囲も楽に生きることが可能になる。発見が早いほど、症状が軽いうちに、本人が困っていること、苦手としていることをサポートすることができ、本人も周囲もトラブルが軽減されて精神的にも楽になるからだ。

 この本では、生活リズムの整え方、食事・トイレ・睡眠・入浴など生活の各場面でのトラブル解決法、子どもを否定せずに生活をスムーズにする言葉のかけ方など、具体的アドバイスがあり、子育てに悩みを抱えた親には大いに助けになる。また、相談できる窓口や制度などについても、くわしく紹介しているので、いざというときにはそれを利用するうえで参考にできることも心強い。

 最後に特筆しておきたいのは、この本が発達障害を「特別なもの」「治療しなければならないもの」とは考えない立場から書かれていることだ。

 監修者で実践女子大学教授の塩川宏郷氏によると、「発達障害は個人の問題ではなく、周囲の人々のつくる社会との関係によって作られる」ものだという。言いかえれば、もし発達障害があっても、その子の持つマイナスの面をカバーし、プラスの面を伸ばしてくれる社会であれば、発達障害は「障害」ではなくなってしまう。そこから、発達障害の特性のある子どもが、その特性を活かせるように、子どもを取り巻く人間関係や、社会のほうを、少しずつでも変えていこうという考えが生まれる。

 この本のあちこちに、監修者のそうした考え方がにじみ出ている。だから、もし読者が子育てのさまざまなトラブルを抱えていたとしても、子どもを責める必要も、自分を責める必要もないことが納得できるはずだ。さらに、私たちすべてが長所と短所を抱えた人間同士であることを考えてみれば、ひとりひとりがお互いを支え合いながら幸せに生きていけるような世の中を作っていくためのヒントも、この本には詰まっているといえる。