「毒親」という言葉が日常的に使われるようになって久しい。毒親を扱ったドラマや映画がヒットすることも多く、自分の親を毒親だと認識する人も増えてきたように思う。一方で、毒親という言葉だけが一人歩きし、正しく理解されていないケースがあるのも事実。毒親について正しい知識と理解を深めたい。そんな人には『毒親 毒親育ちのあなたと毒親になりたくないあなたへ』(中野信子/ポプラ社)がオススメだ。

 本書によると、毒親とは「気づかれにくい虐待――心理的なネグレクトや、精神的な虐待、過度の過干渉によって子を支配しようとするなど、まさに子どもの成長にとって『毒』となる振る舞いをする親」のこと。

 わたしたちは幼少期に他者との関係の規範となる“内的ひな形(内的作業モデル)”を身につけるが、このモデルは一度決まったら、自分で変えようとしない限りはほとんど一生、そのままで過ごすことになるという。そのような時期に毒親に育てられた子が、その後の人生にまで影響する深い傷を負うのは言うまでもない。

 本書では「白雪姫コンプレックス」という言葉が紹介されている。グリム童話『白雪姫』は実母(初版本では継母ではなく実母だった)が娘の美しさを妬んで娘を殺そうとする話だが、現実にも童話のように、娘を妬む母が少なくないという。

 例えば、子どもが学校のテストで100点を取っても、一切褒めないどころか「私をバカにしてるの?」と責める親。例えば、結婚相手としてどんな男性を紹介しても、その度に否定する親。彼女たちは、子どもが自分よりも優秀であったり、幸せになったりすることを受け入れることができない。無意識ではあっても、子どもが自分よりも不幸になることを望んでいる。

 そういった親に育てられても、親に洗脳されることなく、むしろそんな親を心の中でダサいと思う子もいる。自己肯定感が強く、毒親に育てられても心配がいらないタイプだ。一方で、素直で人の意見を聞きやすい子、また自己肯定感の低い子は「自分が間違っているのか」と思って萎縮してしまう恐れがあるという。そして親のコントロールから抜け出せない。いい子ほど、大人に支配されやすく、親から可能性をつぶされてしまうかもしれないという。

 それでは、毒親育ちの子の傷が癒えることは一生ないのだろうか? 著者は「毒親育ちである自分を解放できるのは、親ではなく、自分自身」であるという。傷を受けた心を癒やすためには、親の代わりに、だれか信頼できる大人と1対1の関係を築き直し、愛着を結ぶ関係を作る「育て直し」が必要である。静かな愛情で、いつも、なにがどうあろうとパートナーの人格を認め、大切に扱おうとしてくれる人――。そんな人に出会ったら、ぜひ自分でもその愛情のあり方を体得してほしいと著者はいう。

 家族の問題は難しい。殺人事件の半数以上は家族間で起きているというデータもある。親という存在、家族という存在に縛られるのではなく、自分を大切にして生きていくことが、いつか毒親のコントロールから逃れることに繋がるのだろう。人は子どもである前に、ひとりの人間なのだから。

文=尾崎ムギ子