世界中で猛威をふるう新型コロナウイルス。日本でも史上初の「緊急事態宣言」が政府から出され、列島各地では、医療現場をはじめとした混乱がいまだに拡がっている。

 人類と未知なるウイルスの戦いはいつまで続くのか。先行きを不安視する声も聞こえてくる中、イタリアの作家が綴った書籍『コロナの時代の僕ら』(パオロ・ジョルダーノ:著、飯田亮介:訳/早川書房)が話題書となっている。日本に先行して、緊急事態宣言が出されたローマで、著者が伝えたかったメッセージとは…。本書の内容を紹介していく。

ウイルスの蔓延によりみえた世界の現実

 急速に世界を支配し始めた新型コロナウイルス。著者はこれを「短期間で世界的流行を果たした最初の新型ウイルス」だと位置づける。そして、いつしか蔓延したウイルスは、以下のような世界の姿を私たちにみせつけたという。

僕たちのひとりひとりを――たとえどこにいようとも――互いに結びつける層(レイヤー)が今やどれだけたくさんあり、僕たちが生きるこの世界がいかに複雑であり、社会に政治、経済はもちろん、個人間の関係と心理にいたるまで、世界を構成する各要素の論理がいずれもいかに複雑であるかという現実

 多くの人たちが感染拡大防止に取り組む中では、地域や人々が少しずつ分断され始めている。くしくも、危機を前にして私たちは、自分たちがさまざまな“繋がり”に囲まれていたと、今まさに気付かされているのかもしれない。

自分も“ゼロ号患者”になりうる可能性

 日本に先駆けて、1月下旬の時点で緊急事態宣言が発令されていたイタリア。厳しい規制環境下で「僕らの年齢も、性別も、国籍も、好みも、CoV-2(※)にとっては無意味だ」と悟った著者は、人類が次の“たった三つ”に振り分けられると述べる。

※:新型コロナウイルスの学名「SARS-CoV-2」の略称。新型コロナウイルスによる感染症は「COVID-19」と呼ばれる。

まずは、感受性人口、つまりウイルスがまだこれから感染させることのできる人々で、感受性保持者とも呼ばれる。次が感染人口、ウイルスにすでに感染した感染者たち。そして最後に隔離人口、ウイルスにはもう感染させることのできない人々だ。

 そして、これらを前提として、著者は私たちに“爆発的感染”のメカニズムを教えてくれる。

仮に僕たちが七十五億個のビリヤードの球だったとしよう。僕らは感受性保持者で、今は静止している。ところがそこへいきなり、感染した球がひとつ猛スピードで突っこんでくる。この感染した球こそ、いわゆるゼロ号患者(訳注/未感染の集団に病気を最初に持ち込む患者)だ。

ゼロ号患者はふたつの球にぶつかってから動きを止める。弾かれたふたつの球は、それぞれがまたふたつの球にぶつかる。次に弾かれた球のどちらもやはりふたつの球にぶつかり……あとはこのパターンが延々と繰り返される。

 不要不急の外出自粛が求められているのは、まさにこれが理由だとは容易に想像がつく。無症状の感染者もいるといわれる、新型コロナウイルス。知らぬ間に、自分がゼロ号患者となりうる可能性もあるのだ。

 そして今なお、新型コロナウイルスの影響は拡がり続けている。現在進行形の世界を描いた本書は、私たちに「コロナの時代」をどう生きるべきかと投げかける。いまだ不安の日々は続くが、ウイルスとの“共存”もささやかれる今、目を通してみるべき1冊だ。

文=カネコシュウヘイ