朝方にゴミ袋をつついていたり、こちらをけん制するかのような視線を電柱の上から浴びせていたり…。ときには嫌われ者といわれがちなカラスは、ひょっとしたら、人間にとって一番なじみのある鳥かもしれない。

 書籍『カラスは飼えるか』(松原始/新潮社)は、彼らの生態をよく知ることができる1冊。25年以上にわたりカラスを研究し続けてきた著者による文章は、どこか愛に満ち溢れている。

羽をじっくりと観察してみると気が付く美しさ

 読者に向けて、ニワトリが愛されてきた一方で「カラスじゃダメなんですか?」と問いかける著者。彼らに注ぐ愛情がひしひしと伝わってくる一文であるが、その生態についての話もひじょうに興味深い。

 たとえば、カラスといえば「黒」というのは、おそらく一般的なイメージだ。しかし、よくよく見ると彼らの羽も繊細な色の重なりでできているという。

 本書によれば、羽毛を1枚ずつ見てみると根元は白っぽく、表と裏でも色合いが異なる。光の当たり方によっては青や紫の光沢を帯びる場合もあり、その独特な艶やかさから「カラスの濡れ羽色」ともいわれる。

 明治時代以降に定着した「黒=葬式=不吉」というイメージと、不遇にも重なってしまったカラスたち。しかし、本来の姿をじっくり観察してみると、彼らがいかに美しいかが分かるはずだ。

糞を狙って落とすのはカラスにとって簡単ではない

 カラスは「賢い」といわれるものの、それはけっして褒め言葉ではない。枕詞に「ずるい」が加わる場合もあり、どうも人間にイタズラを仕掛けるというイメージが浸透しているようだ。

 しかし、著者は彼らの「嫌がらせ」について、懐疑的な態度を示す。

 たとえば、カラスは「人間を狙って糞を落とす」という話もあるが、その発想へ至るには「糞は汚いから、かけられたら嫌に違いない。よし嫌がらせのために落としてやれ」という思考の段階が必要になってくる。

 だが、彼らはそもそも糞に対するデリカシーを持ち合わせてはいない。本書によれば、カラスの雛は巣の中で「餌をもらうと向きを変えてお尻を突き出し、糞をする」と解説されており、さらにその後、親鳥は「糞をパクっとくわえて運び出して捨てるか、あるいは飲み込んでしまう」というのだ。

 少なくともカラスが人間に向かい糞を落とすのは「そう簡単ではない」と著者は述べる。実際のところは察するしかないが、彼らに対する人間の先入観が「カラスは嫌がらせをするもの」というイメージを、作り出しているのだろう。

 さて、見た目だけで相手の本質を決めつけてはいけないのは、動物に対しても同じかもしれない。街中でよく見かけるカラスたちも、本書を読めば、きっと愛らしくなってくるはずだ。

文=カネコシュウヘイ