慢性化した関節痛や自律神経失調症がなかなかよくならないのは、「治らない」と学習してしまった脳のせいだった!

 そう語るのは、『不調が消え去る脳バランス体操』(石井克昇/KADOKAWA)の著者である石井克昇氏だ。

「画像診断と症状は一致しない」
「気づきの大切さ」
「自分の潜在的な願望を認める」

 脳の左右のバランスを整える治療家・石井氏が、“治る学習記憶”の増やし方を大公開。

※本稿は石井克昇著『不調が消え去る脳バランス体操』(KADOKAWA)を再編集したものです。

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「自分の症状は治らない」と脳に学習させるな

 ひざ痛や腰痛などの慢性痛、自律神経や更年期障害などの不定愁訴、イップスなどの運動障害。

 こうしたしつこい症状は、なぜ治りにくいのか。

 それは、治ることを阻むものが、あなたの中にあるのだ。

 あなたは、自分の症状は治らないと学習してしまっている──。
 それが、治りにくい一番の理由。

「治らないと学習する」とは、どういうことか。
 それには、いろいろな要素が関連している。主要なものをいくつか挙げてみよう。

【あなたがよくなることを阻むもの】
・レントゲンやMRIの画像所見や診断名
・インターネットのネガティブな情報
・安静志向
・極度の過労や運動不足
・「長年さまざまな治療を試したのに治らなかった」という事実
・過去のつらい体験やトラウマ(その記憶や映像)
・現在のストレス
・自身の(潜在的な)願望

 こうした要因が絡まり合って、症状を治りにくくしている。
 次項で、そうした要素を解説し、個々の対応策についても紹介しよう。

不調を撃退する5つの習慣① 画像診断がすべてと思わない

 レントゲンやMRIの画像所見は、とても雄弁である。
 もしも画像診断で首の骨に椎間板ヘルニアが見つかれば、患者さんは「私の手のしびれは、首の神経がヘルニアで圧迫されているからだ」と納得してしまうものだ。

 画像を見せられれば、あたかもそれが客観的な事実(病気の証拠)のように見える。
 その結果、あなたの脳が「治らない」と学習してしまうのだ。

 しかし、「画像診断と症状は一致しない」というのが、最新の医学研究の考え方。
 画像にヘルニアが映っているなら、あなたの首にヘルニアがあることは間違いないが、その画像がすべてを決定するものではない、と理解しておこう。
 ヘルニアがあっても、痛みを感じない人が多数いるのも事実なのだ。

不調を撃退する5つの習慣② 病名を重んじすぎない

 医師の言葉も、自分は治らないのだと脳が学習するきっかけとなる。
 極端なことを言えば、診断名がついただけで、それを治らない“証拠”として脳が受け取ってしまうこともよくあるのだ。

「私は、脊柱管狭窄症だから治らないんだ」
「私は、変形性股関節症だから治らないんだ」
 心のどこかで、あなたは、そんなふうに思っていないだろうか?

 病名や診断名だけでも、それがマイナスに働いてしまうケースは少なくない。
「医師が診断を間違えている」と言いたいわけではない。
 画像診断の結果と同様、病名や医師の言葉も、あなたが治らなくてもよいお墨つきとして機能してしまうリスクがあるということ。
 これを心に留めておくだけでも、結果はずいぶん違ってくるはずだ。

不調を撃退する5つの習慣③ ポジティブな情報を探す

 しつこい痛みや不調に悩む人は、自分と同じ症状をインターネットで検索することが多いものだ。
 インターネットで見つかる情報は、役立つものもないわけではないが、同じ症状に悩む患者さんにとって、インターネットはマイナスになる情報のほうが多いのも事実。
 なぜなら、たいていは、その情報を公開している人自身がまだ治っておらず、自分のつらさを公開するケースが多いから。
 そうした意味で、インターネット情報にはポジティブな要素が少ないとも言えるかもしれない。

「体温計で熱を測ったら、高熱が出ていた。つらい」というのは情報として発信するケースがあるだろうが、「体温計で熱を測ったけど、今日の私は平熱です」では、そもそも発信する気にならない。
 インターネットやSNSには、治っていない人がつらい症状日記などを書くことも多いので、それらをすべて鵜呑みにしてしまうことはよくない。
 そんな情報のみをインプットしていたら、治らないイメージがいよいよ脳に刷り込まれるばかり。

 そこで、インターネットを見るときは、できるだけポジティブな記事を探すように心がけてほしい。
 治らない人の情報を学習記憶するのではなく、治った人の情報を参考にして、「治る学習記憶」を増やしていくようにしよう。

不調を撃退する5つの習慣④ 安静は大敵と知る

 痛みが慢性化すると、痛みに襲われることを怖れるあまり、できるだけ安静にしておこうと考える人が多く見られる。
 しかし、こうした安静志向は、改善の大敵。
 例えば、腰痛対策として「安静にしてはいけない」というのは、すでに治療の原則となっている。
「自分の腰は悪いんだ」と脳が学習していると、無意識的に腰をかばうようになる。
 すると、筋肉が余計に緊張するのだ。

 そのうえ、「腰を大事に」「安静に」と意識して日常生活に心配りをしていると、そもそも腰を動かさなくなってしまう。
 大事にするあまり、筋肉を使う回数・量が減れば、筋力は自然と落ちていく。
 筋力が落ちれば、当然、痛みの出ている患部を支える筋肉群の筋力が弱まる。

 すると、筋肉が患部をじゅうぶんに支えられなくなり、余計な負担が腰にかかることになり、痛みが強まる。
 しかも、安静にする結果、関節の受容器からフィードバックされる脳への電気信号が減る。
 刺激の足りていない脳はうまく働かなくなり、脳バランスがさらに乱れていくというわけだ。

 この悪循環を断ち切ることが、治癒への第一歩。
 患部に炎症があり、激しい痛みが生じているケースでは、すぐ動かすことは勧められないが、患部の炎症が鎮まったら、できるだけ早く体を動かし始めよう。

不調を撃退する5つの習慣⑤ 気づきを変化のきっかけに

 脳は、内的欲求が強ければ強いほど、発する電気信号が活発になり、言動や体の状態にポジティブな影響が現れる。
 皆さんも、自分の好きなことは、たちまち覚えられるだろう。
 一方、嫌いだ、苦手だと思っていることは、なかなか覚えられないはず。
 意識のうえでは「治りたい」と思っていても、無意識的に「治らないはずだ」と脳が学習記憶していると、脳内の電気信号が出にくいため、効果が現れにくいのだ。

 その意味で、私はなによりも「気づき」が重要であると考えている。
 これらの学習記憶が、症状を治すブレーキになっている──。
 このことに、まず、気づくのが重要だ。

「治らないと思い込んでいたから、なかなかよくならなかったのだ」
 そう気づくことによって、ようやく、慢性化した症状の呪縛から解き放たれると言うべきだろうか。
 長年、症状が治らなかったという事実を、もう一度考えてみてほしい。
 例えば10年間悩んできたとして、激烈な症状が四六時中、ずっと継続してきたということは、おそらくないだろう。
 10年のうちにも、症状が強いときもあれば、感じないときもあったはず。
 感じないときは、どういうときだっただろうか。

 それは、自分の好きなことに熱中しているときだったかもしれない。
 好きなことをしていると、痛みなどの症状を感じにくいもの。
 痛みは脳がつくり出したものであり、痛みを感じにくくするのも脳の働きである。

 正しく脳を働かせるためにも、気づきを通じて、よくなっていく手掛かりを見つけていってほしい。

【著者プロフィール】
石井 克昇(いしい・かつのり)
石井堂クリニカルオフィス・石井堂街の接骨院代表。柔道整復師。ICC国際コーチング連盟認定コーチ。アクティベータ・ネットワーク・ジャパン上級認定。米国やカナダで信頼を得ている施術法「アクティベータ・メソッド」を駆使した治療を行う。2012年、石井堂街の接骨院を開業。脳の記憶と条件付けが及ぼす心身の不調へのケアを専門とする。神経学、東洋医学、心理学、コーチング、脳の誤作動記憶の調整法(心身条件反射療法)を学び、不調な心身を健康へと導くセルフケア「脳バランス体操」を開発。治療院には一流アスリートやアーティスト、モデルなど多くの著名人も訪れる。