『週刊ダイヤモンド』3月28日号は「資金繰り破綻! 倒産連鎖 危険度ランキング」です。株価と景気はどこまで悪化するのか?打撃を受ける業界はどこなのか!?中小企業は資金繰り危機を乗り切ることができるのか!?ダイヤモンド編集部が総力を挙げて取材し、新型コロナ「経済危機」の全シナリオをお伝えいたします。


【INDEX】緊急特集『倒産連鎖危機』、コロナショックの最前線を総力取材!


賃上げ鈍化し倒産増加なら
リーマンショック超えも現実味

「市場が実体経済の悪化にひれ伏した」──。数千億円規模を運用する米ニューヨーク拠点のヘッジファンドの日本人トレーダーは、こんな焦燥感に駆られた。米ダウ工業株30種平均が1日で過去最大の約3000ドル(12.9%)という衝撃的な下げ幅を記録した16日のことだ。

 なにしろ、これまで市場関係者は、欧米企業の過剰債務など金融システム発のショックばかりを警戒していた。

 ところが、昨年12月に中国の湖北省武漢市で新型コロナウイルスが発生。感染は爆発的な広がりを見せ、WHO(世界保健機関)は3月11日に「パンデミック(世界的流行)」を宣言するに至った。

 生産活動の停滞、サプライチェーンの寸断、消費の急減……。

 金融システムからではなく、実体経済発の巨大なショックという、まったく予期せぬ展開に投資家の間で一気に不安が増幅した。

 リスク回避姿勢が強まり、米国を筆頭に世界的な株安が加速、急速な債券買い(金利の急低下)や原油先物相場の急落を招くなど、投資マネーは少しでも安全そうな資産を求めて逃げ惑った。

 今、ほんの直径100ナノメートル(ナノ=10億分の1)程度にすぎないウイルスによって、日本経済のヒト・モノ・カネの流れが断たれようとしている。

 国内サービス業を支えてきた訪日客が一挙に去り、日本人は外出を控えている(ヒト)。中国などとのサプライチェーン(モノ)も行き詰まったままだ。

 最大の懸念は、ヒト、モノの停滞により中小企業が資金繰り(カネ)に困窮、倒産が相次ぎかねない点にある。ヒト、モノに比べてカネへの大きな打撃(倒産)は遅れて出てくるかもしれないが、回復が最も困難なのだ。

 日本にとって、新型コロナ禍が訪れたタイミングは最悪だった。昨秋に大型台風や消費増税の影響を受けた上、暖冬も消費を下押し。そうして2019年10〜12月期のGDP(国内総生産)は前期比年率7.1%減に落ち込んだ。

 景気後退に陥る可能性が高まる中、中小企業の資金繰り危機は水面下で火種を抱えていたのだ。既に「コロナ倒産」も表面化しているが、危機は序章にすぎない。

 この先の消費環境を見れば、景気悪化により、ただでさえ伸び悩んでいた賃上げは鈍化が必至。さらに、東京五輪が中止となれば、期待されていた訪日需要が一気にそがれるなど好材料には乏しい。

 ウイルスは大地震のように生産設備へ物理的なダメージを与えるわけではない。感染が終息すれば経済活動はすぐに回復を目指すだろう。

 だが、「その間に企業の資金繰りが悪化して倒産が増えれば、リーマンショック級の深刻な景気後退に陥りかねない」(SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミスト)と、「100年に1度」といわれた危機レベルの再来を危惧する声すら浮上している。

収束まで時間かかれば
中小は資金繰り破綻危機

 国内だけではない。

「欧米企業が発行するトリプルB格の社債が金融システム不安の火種となっている」。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストはこう述べ、企業の過剰債務の存在に警鐘を鳴らす。

 海外の市場関係者の間では、「投機的水準」の社債(ジャンク債)の一歩手前となるトリプルB格の社債が格下げされると「フォーリンエンジェル(堕天使)」が出現したと表現される。

 かつてのリーマンショックの反省を踏まえて、銀行への規制は強化が進められてきた。心配なのは、そうした網にかかっていないファンドなどのノンバンクが持つジャンク債予備軍だ。

 今後、フォーリンエンジェルが大量に出現すれば、そこに投資するファンドが大損害を受け、破綻が相次ぎかねない。それが金融システム不安につながり、さらなる実体経済の大幅な縮小を生む。負の連鎖の結果、リーマン級か、それを上回る危機にも至り得る──。

 かように、国内、国外共に「リーマン超えの危機」を懸念する声が出てきているのだ。

 そうした最悪シナリオを避けるべく、国内では政府と日本銀行はカネを放出し、中小企業の資金繰り懸念の払拭に乗り出した。日銀は金融政策決定会合の異例の前倒し開催で資金供給拡大を決め、矢継ぎ早に対策を講ずる姿勢を見せている。ヒト・モノ・カネの中でも、カネの流れが容易に修復しないことを案じているからだろう。

 国際的には、FRB(米連邦準備制度理事会)がゼロ金利政策と量的金融緩和の同時導入に踏み切り、日米欧など6カ国の中央銀行は協調して資金供給拡充に動いた。

 とはいえ、カネ回りがウイルスの感染そのものを止められるわけではない。日本でも世界でも、新型コロナの感染が終息に向かわないかぎりヒト・モノ・カネの流れは滞ったままだ。

 日本政府の資金繰り支援策も、結局は返済を前提としたもの。終息までに時間がかかればかかるほど、中小の資金繰りは厳しさを増し、倒産が相次ぐリスクを高めることになる。さらには国際的な中銀の連携の動きは早かったが、裏を返せば金融面の施策はほぼ使い果たされてしまったともいえる。

 サービス業と製造業、中小企業と大企業、地方と大都市、金融市場と実体経済……。そして世界全体の落ち込み。新型コロナにより、日本経済にはあらゆる方向から逆風が吹き、連鎖不況の様相を呈し始めた。

(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)