首都圏で最初に一般入試が行われる埼玉の動向は多くのメディアでも取り上げられて注目を集めている。これまで志願者動向についてお伝えしてきたが、入試問題にはどのような変化が起きているのだろうか。全国で一番多くの志願者を集めるさいたま市にある栄東の注目の算数の問題を、長年入試問題を見続けてきた森上教育研究所「親のスキル研究会」講師である小板橋肇貴氏の解説を交えて見ていこう。(ダイヤモンド・セレクト編集部)


「中高一貫校」入試算数の新傾向、埼玉「栄東・開智」の実際の問題から解読【完全版】


難易度は例年並みだった栄東

 首都圏の受験生が腕試しのため受験することもあって、2020年入試でも全国最多の志願者を集めた埼玉の栄東。難易度は例年と変化なかった。

 1月10日に行われたA日程の算数の問題から見てみよう。制限時間50分で5問構成。大問1は8つの小問集合。大問2が規則性、大問3が速さの問題、大問4は平面図形、大問5は場合の数となっている。

 今回の注目問題は大問1(8)と大問3で、それぞれどのように条件を整理していくかによって成否が決まる。

 まず、□の中にあてはまる数を答える形式の大問1から見ていこう。(8)は平面図形の求め方を尋ねる問題で、これに正答できるかが合否を分ける。受験生であれば取りこぼしなく、確実にできるようにしておきたい問題ともいえる。

 図は半径3cmの円を横に3cmだけ動かした図です。このとき、もとの円が通過した部分(斜線部分)の面積は、□平方センチメートルに1辺3cmの正三角形2個分の面積を足したものです。ただし、円周率は3.14とします。

解答:27.42平方メートル

 次に、大問3を見てみよう。

 ある学校の部活動で、2チームに分かれて駅伝を行っています。第1区間、第2区間は3km、最後の第3区間は4kmとします。下のグラフは、スタートしてから先頭のチームが第3区間の走者にたすきを渡すまでの2チームの差を表したグラフです。このとき、次の問いに答えなさい。ただし、各走者はそれぞれ常に一定のペースで走るものとし、たすきの受け渡しにかかる時間は考えないものとします。

 大問3のように単純な進行グラフ(ダイヤグラム)ではなく、駅伝の走者の位置の差を使って速さの変化を追っていかせる問題は秀逸といえるだろう。問いは次の3つ。

(1)第1区間を先にゴールした選手は毎分何mの速さで走ったか答えなさい。
(2)第2区間の途中で前を走るチームの選手を追い抜いた選手は毎分何mの速さで走ったか答えなさい。
(3)第3区間で後からタスキを受け取った選手が1kmを3分で走るペースで前を走るチームの選手を追っています。前を走るチームの第3区間の選手が抜かされずにゴールするためには最低でも毎分何m以上の速さで走ればよいですか。

解答:(1)毎分300m (2)毎分250m (3)毎分320m

 グラフの中で移動する走者の位置の差から、実際のダイヤグラムを書かせていこうという問題で、栄東の算数・数学に対する「数学を解くということは自らの手を動かして解く」という明確な意図を感じる。新しい出題傾向だ。そのために、「下のグラフを用いて考えてもよい」と、考えるための補助となる図も用意されている。

 合格するには、基本に忠実に勉強することが必要だ。個々の受験生によって、その基本は変わるのかもしれないが、最低ライン解いておいたほうがよいものは確実にものにしておくことが合否を分ける。