ラグビー人気復活へ、「プロ化宣言」で動き始めた大改革

ラグビー人気復活へ、「プロ化宣言」で動き始めた大改革

『週刊ダイヤモンド』8月31日号の第1特集は、「熱狂!ラグビー ビジネス・人脈・W杯」です。ラグビーワールドカップ(W杯)の日本大会が9月20日に開幕しますが、日本ラグビー界は「協会の不安定な財政」「ファンの高齢化」などさまざまな問題を抱えています。本特集では、清宮プロ化宣言の中身を検証し、ビジネスとの共通点、意外なラグビー人脈まで、最新ラグビー事情を一挙に解説。ルールや注目選手などを紹介した、W杯が100倍楽しくなる観戦ガイドも付いています。


ラグビーで日本が強豪8ヵ国に勝つことは、どれだけ「すごい」のか


 「後のことは、森重隆(会長)と清宮(克幸副会長)に託したから」──。

 ラグビー界の重鎮、森喜朗氏は本誌にそう伝えた。同氏は今年の4月、突然、日本ラグビー協会名誉会長の辞任を表明して、同時に執行部の大胆な若返りを求めた。政治家としては毀誉褒貶相半ばする森喜朗氏だが、アジア初のワールドカップ(W杯)を実現させた中心人物であり、ラグビーに対しては真摯だ。

 だが、功労者の森喜朗氏が自国でのW杯開催を前に表舞台から去るほど、ラグビー界は危機に直面している。例えば、社会人による日本ラグビーの最高峰リーグであるトップリーグの昨年の入場者数は、1試合当たり5153人まで減少。深刻なのは、そのうちトップリーグに加盟している各企業によるチケットの買い上げが6割程度含まれていること。実質2000枚程度しかチケットが売れていないのだ。

 チケットが売れないということは、スポンサーの獲得や放映権の交渉にもマイナスとなる。財政基盤が不安定では、日本代表の強化費のほか、選手の育成や競技の普及のための予算も削るしかない。実際、前回のリオデジャネイロ五輪から採用された7人制ラグビーは、男子の場合、トップレベルの大会が国内で開催されていない。

Jリーグの開幕やW杯の惨敗で
ラグビー人気が急降下

 1990年ごろまでは、川淵三郎氏(日本トップリーグ連携機構会長)が「サッカーより人気だった」と認めるくらいの勢いがあったラグビー。学生ラグビーを中心に盛り上がりを見せ、早慶戦や早明戦はプラチナチケット化するほどだった。なぜ人気が急降下したのか。

 一般的にいわれるのは、93年のJリーグの開幕と、95年のW杯でのニュージーランドに対する歴史的大敗だ。ブーム到来で1億円選手が続出するサッカーと、世界的なラグビーのプロ化の流れに取り残され、国際舞台では通用しない日本ラグビー。急速なファン離れが始まったが、その後も大胆な改革案を打ち出せないまま、20年以上も時間だけが過ぎてしまった。

 現場の選手やスタッフは頑張っている。前回のW杯では南アフリカに勝利し、リオ五輪では7人制ラグビーで優勝候補のニュージーランドを撃破。代表の実力はアップしているが、協会のアピール不足もあり、本格的なファン拡大にはつながっていない。

 今回ようやく、自国開催のW杯の直前というギリギリのタイミングでラグビー界が改革に動きだした。特に、協会の森重隆会長、清宮克幸副会長、岩渕健輔専務理事の新しいスリートップは、ラグビー好きならワクワクする顔触れだ。実際、清宮氏は就任後、わずか1カ月で「ラグビープロ化」を打ち出した。

企業頼みから脱却して収益を生む組織へ
日本ラグビーの成長戦略

 年間16億円の費用がかかる一方で、収益はゼロ。これが小説『ノーサイド・ゲーム』で描かれたラグビーのトップリーグ各チームの実情だ。

 実際、強豪チームのサントリーサンゴリアスのシニアディレクターの土田雅人氏、パナソニックワイルドナイツのGM(ゼネラルマネジャー)の飯島均氏も年間のチーム運営費について、『ノーサイド・ゲーム』で描かれた程度だと苦笑いしながら説明する。現在の日本にプロラグビーはないため、トップリーグ16チームの母体は大企業、つまり社会人リーグだ。運営する企業にとってメディア露出等の見返りはあるものの、「企業の社会貢献」に依存して成り立っているといっていいだろう。

 さらに近年のトップリーグは、有名外国人選手が多数参加。ダン・カーター選手を筆頭に、強豪国のスター選手は年俸が1億円を超える水準だという。スター選手の加入はありがたいが、人件費が高騰して、運営費が増加している。

 今年は日本でワールドカップ(W杯)が開催されるため、企業が積極的に投資をしているが、問題はW杯後。経営者層である50代、60代はラグビー好きが多い世代だが、経費だけが膨らんでいき、収益がゼロのままでは、いつ強化を縮小するチームが出てもおかしくない。永続的な仕組みになっていないのだ。

 これを踏まえて、現状を変えるために日本ラグビー協会副会長の清宮克幸氏が打ち出したのが「新プロリーグ」構想だ。チケット収入や放映権収入がチームに分配されていない現状を改善し、スポンサー収入を含め、ラグビーで利益を出せる体制を確立する。

 具体的には、W杯を開催した12都市を中心に、プロチームを設立。参入条件などは、W杯終了直後の11月に発表される見込みで、これは、従来のスポーツ団体にはないスピード感だ。

東京五輪の翌年の21年秋の開幕へ
スピード重視で大改革を断行

 プロリーグ活性化の基本方針は、まず12都市を本拠地にホームタウンをつくり、地域密着を徹底。子ども向けのラグビースクールをつくって、普及活動をしながらファンを拡大する。

 デジタルマーケティングも本格導入。W杯のチケット購入者をベースに、ファンの属性を把握。集客に加えて、放映権ビジネスやスポンサー集めにも活用する。

 チームの法人化(分社化)も義務付ける。親会社の従来型のCSR(社会貢献)の経費ではなく、独自で稼ぐとなれば、自然と意識も変わってくる。

 ホームスタジアムの確保も重要な問題。地元自治体との連携が大切で、ここは先輩であるサッカーのJリーグやバスケットボールのBリーグが参考になる。

 結束力が強いことで知られるラグビー界だけに、一度動きだせば、ぐっとスクラムを組むのが強み。清宮大改革で日本ラグビーはかつての人気復活を目指す。


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