映画化で原作本はどこまで売れる?2017年上半期公開作から探る

映画化で原作本はどこまで売れる?2017年上半期公開作から探る

文=平辻哲也/Avanti Press

読んでから見るか、見てから読むか? これはメディアミックス戦略のパイオニア、角川書店の往年のキャッチコピーだが、 映画が公開されることで本は売れる。上半期に公開された映画と、公開に連動して再ブレイクした本についていくつかのトピックスを紹介する。

映像化で注目度アップ! 古い作品も続々重版

日販調べの2017年上半期文庫ベストセラーランキングを見ると、映像化作品が10位のうち7作もランクインしている。

1位は4月期にTBS系でドラマ化された「リバース」(湊かなえ)、2位はNetflixで昨年ドラマ化、今年2月にはNHKで放送された「火花」(又吉直樹)、4位は小松菜奈、福士蒼汰主演で映画化された「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」(七月隆文)、5位は2013年にドラマ化、今年2月には実写とアニメのW映画化も決定した「ビブリア古書堂の事件手帖(7)」(三上延)。昨年公開され、興収約250億円のメガヒットとなったアニメ映画のノベライズ「小説 君の名は。」(新海誠)は6位にランクイン。7位は浜辺美波、北村匠海のW主演の映画で7月28日から公開される「君の膵臓をたべたい」(住野よる)、10位はテレビと映画でアニメ化された「ソードアート・オンライン(19)」だ。

『君の名は。』人気は根強く、その勢いは出版業界にも及んでいる。同じアニメで言えば、昨年11月12日に封切られ、いまだ公開が続いている『この世界の片隅に』の同名原作コミック(こうの史代)もロングセラーとなっている。コミック部門では実写映画が7月29日公開の「東京喰種:re」(石田スイ)も5、9位にランクインしている。

今や、初版数百、数万部で大ヒット、10万部以上で大ベストセラーと言われる出版業界だが、一度、ブレイクすれば、儲けは大きい。ハリウッドでの実写ドラマ化が発表された人気コミック「ONE PIECE」の尾田栄一郎さんの推定年収は31億円とも言われ、話題になった。

書店では、世の中の動きに敏感に反応して、特集の棚を作ったり、広告用のポップを飾るなど絶えず工夫している。都内の書店チェーンで話を聞いた。

「ヒット映画の原作は総じて、売れますね。海外ものは難しいのですが、『美女と野獣』はノベライズだけでなく、原作もよく出ました。コミックでは、羽海野チカさんの『3月のライオン』も。アニメ放送もあって、まとめ買いが多かっただけでなく、『ハチミツとクローバー』など過去作のお買上げもありました。マーティン・スコセッシ監督が映画化した遠藤周作の『沈黙』(1966年発表)は古い作品なので、難しいかと思いましたが、意外と動きました」

表紙が大事。宣伝帯やあおり文、意外なコラボも…

人気作にあやかって、映画化というのが常套手段だが、映像化されることによって、さらに原作本の売り上げにも勢いがつく。映画と出版界は今でもWin-Winの関係と言える。

例えば、第20回山本周五郎賞受賞、2007年本屋大賞2位になった森見登美彦の累計120万部を売り上げた大ベストセラー「夜は短し恋せよ乙女」。4月に公開されたアニメ映画がスマッシュ・ヒット。この原作だけでなく、同じスタッフでアニメが製作された「四畳半神話大系」など過去作にも動きがあった。

その一方、映画化されても、あまり動かない作品もあった。阿部寛、天海祐希主演で映画化された『恋妻家宮本』(1月28日公開)は、直木賞作家、重松清の小説が原作。しかし、原作は「ファミレス」とあまりにもタイトルが異なり、小説があることに思い至らせなかったのではないか、との分析だった。

宇宙船の形がお菓子の“ばかうけ”に似ていると話題になり、栗山米菓とのコラボポスターが作られたアカデミー賞8部門ノミネートSF映画『メッセージ』(5月19日公開)。原作は、中国系アメリカ人作家、テッド・チャンの短編小説「あなたの人生の物語」。こちらは作家の知名度は低いため、映画のポスタービジュアルを使った表紙に、本の題名よりも大きいサイズの文字で、「映画名『メッセージ』」と書かれた大きめの帯が使われた。

こうして映画の題名と原作が違う題名の場合は、出版社は「幅広帯」と言われる特大の帯を作成して、アピールする。書籍全体を覆う「全体帯」も流行りだ。しかし、この帯がアダになった例も。「火花」はドラマ化に際して、主演の林遣都と波岡一喜を起用した「全体帯」を使用したが、売り上げは伸びなかった。その後、全体帯ありと帯なしを並べたところ、帯なしの方が売れた。「火花」は芥川賞受賞当時の単行本の表紙のイメージが鮮烈すぎたのだという。

下半期で、さらなる伸びが期待される小説は“キミスイ”と略される「君の膵臓をたべたい」だ。高校時代に膵臓の病を抱えるヒロインに出会った主人公「僕」の、過去と現在を描く。当初は、「ホラー小説か」と思った人もいたという笑い話もあるが、10代を中心に“泣ける恋愛小説”として、累計発行部数180万部(6月末現在)の大ベストセラーに。映画は“ラスト、きっとこのタイトルに涙する。”がキャッチコピー。劇場公開とともに、早々に200万部の大台にのせられそうだ。


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