まもなく新年度ですね。
この時期、新しい部署に異動する方も多いかと思います。 新しい部署でもより一層前向きに仕事に取り組みたいものです。
この前向きに仕事に取り組む気持ちのことを「ワーク・エンゲイジメント」と呼びます。

ワーク・エンゲイジメントとは


ワーク・エンゲイジメントとは、一体どのようなものなのでしょう。
オランダの研究者であるシャウフェリらは、以下のように定義しています。

ワーク・エンゲイジメントは、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態であり、活力、熱意、没頭によって特徴づけられる。
ワーク・エンゲイジメントは、特定の対象、出来事、個人、行動などに向けられた一時的な状態ではなく、仕事に向けられた持続的かつ全般的な感情と認知である。

少し難しいですね。
一つひとつ見ていきましょう。
まず、ワーク・エンゲイジメントは、仕事に関連した「ポジティブ」な心理状態を指しています。
そして、「活力」「熱意」「没頭」の3種類揃っていることが特徴です。

○ 活力:エネルギッシュで、傷ついてもへこたれずに立ち直るこころの回復力、仕事に対する惜しみない努力、粘り強い取り組みなど
○ 熱意:仕事への深い関与、仕事に対する意義や熱意、ひらめき、誇り、挑戦の気持ちなど
○ 没頭:仕事に集中し、幸せな気持ちで夢中になることから、時間経過の速さ、仕事から離れることの難しさなど

皆さんは、これを読んで、ワーク・エンゲイジメントの高い人はどういう人なのか、なんとなくイメージが沸いたかも知れませんね。
「仕事に誇り(やりがい)を感じ、熱心に取り組み、仕事から活力を得て活き活きとしている」人を想像したのではないでしょうか。
ぜひ、このようになりたいものです。
それでは、このワーク・エンゲイジメントを高めるためにはどのようにすればよいのでしょうか。また、どのような要因がワーク・エンゲイジメントを高めるのでしょうか。

ワーク・エンゲイジメントを高める要因


ワーク・エンゲイジメントを高める要因としては、(1)仕事・職場の要因と、(2)私たち各個人の要因があると言われています。

(1) 仕事・職場の要因
たとえば、自分の仕事の結果について、上司からフィードバックをもらう、自分の仕事の進め方などを自分で決められる、自由闊達な職場環境や職場と自分の価値観が一致していることなどがワーク・エンゲイジメントを高める要因であると考えられています。
特に、上司や周囲からのサポート(社会的支援)や自分の仕事の進め方を自分で決められること(自律性/コントロール)がワーク・エンゲイジメントと強いつながりのあることが明らかになっています。

(2) 個人の要因
一例を挙げると、自分はある行動をうまくやれるという自信(自己効力感)が強いと、ワーク・エンゲイジメントが高まる要因であることが知られています。
同様に、組織における自尊心、楽観性やレジリエンス(粘り強さ)もワーク・エンゲイジメントを高める要因であると言われています。
特に、ある行動をうまくやれるという自信(自己効力感)や楽観性を身に着けていると、ワーク・エンゲイジメントが高くなることが明らかになっています。
なお、自己効力感は、ワーク・エンゲイジメントを高める要因であると同時に、ワーク・エンゲイジメントが高くなると、自己効力感が更に高くなると考えられています。
このことは上方のらせん効果と呼ばれています(島津,2010)。

仕事の資源および個人の資源とワーク・エンゲイジメントとの関連(メタ分析の結果)

要因   分析に用いた  分析に用いた サンプル数で重み付け
    相関係数の数 サンプル数 をした相関係数
仕事の資源
社会的支援 32 35, 243 .32
自律性/
コントロール 26 14,985 .23
個人の資源
自己効力感 17 5,163 .50
楽観性 5 1,799 .37

この表の一番右側の列には相関係数が記載されています。
相関係数とは、ある2つの要因間のつながりの強さの程度を、-1〜+1で表したものです。
この表によると、記載されたすべての要因において、中程度のプラスの相関があることが読み取れます。

ワーク・エンゲイジメントが注目される背景


ワーク・エンゲイジメントが近年注目されるようになった背景には、従来の職場のメンタルヘルス対策が病気の治療や予防に重点を置いていたのに対して、近年は、これまでの対応に加えて、個人や組織の強みを伸ばして「健康度の高い労働者による生産性の高い職場づくり」が求められるようになったことが挙げられます。
「そんなきれいごとを…」と思う方も多いかと思います。
タイトルの「あなたのワーク・エンゲイジメントに影響を与えるのは?」への答えは、「ワーク・エンゲイジメントを高める要因」にそのヒントがあるかと思います。
強いて挙げると、自己効力感が重要です。
小さなことでもいいので、あなたの行った仕事や周囲への気遣いによって、その仕事がうまくいったり、同僚とのコミュニケーションが少しやりやすくなったと感じることができれば、今後も同じようにしてみよう、ときっと思うでしょう。
このことを繰り返すことがワーク・エンゲイジメントを高める振舞いそのものなのではないでしょうか。

「ワーク・エンゲイジメント」という考え方をご存知でしょうか? 日本国内では、島津明人教授(北里大学 一般教育部人間科学教育センター)を中心に研究され、一般向けに書籍も出されています。 今現在の日本のメンタルヘルス対策...
<参考>
アーノルド・B・バッカー、マイケル・P・ライター編、島津明人総監訳、井上彰臣、大塚泰正、島津明人、種市康太郎監訳 『ワーク・エンゲイジメント 基本理論と研究のためのハンドブック』星和書店
Schaufeli, W. B., Salanova, M., Gonzalez-Roma, V., & Bakker, A.B.「 The measurement of engagement and burnout: A two sample confirmatory factor analytic approach」(「Journal of Happiness Studies」、2002年)
島津明人「職業性ストレスとワーク・エンゲイジメント」(「ストレス科学研究」、2010年)
島津明人「ワーク・エンゲイジメント ポジティブ・メンタルヘルスで活力ある毎日を」(「労働調査会」、2014年)