2016年、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」が施行されました。
制度施行以来、働くうえでの障害者差別や合理的配慮に関するハローワークへの相談件数は増加傾向にあります。
どういった配慮をしなければいけないのか、悩んでいる事業者・人事の方も多いと思います。
今回は、公表された事例を紹介していきたいと思います。

※ 障害がある人というのは、障害者手帳を持っている人に限りません。
身体障害や知的障害、精神障害(発達障害や高次脳機能障害がある方も含まれます)がある人、また難病に起因する障害がある人で、日常生活や社会生活に相当な制限受けている人が対象となります。

そもそも合理的配慮とはなにか

企業は、障害のある人が働くうえで何らかの負担や他の人にはない壁があり、本人が対応を求めた際には、負担が重すぎない範囲で対応に努めることが求められています。
負担が重すぎない範囲というのは、6つの観点から図られます。

① 事業活動への影響の程度
② 実現困難度
③ 費用・負担の程度
④ 企業の規模
⑤ 企業の財務状況
⑥ 公的支援の有無

希望にすべて対応することは難しいかもしれませんが、対応できない旨・理由を説明し、話し合いをしたうえで双方の折り合いをつけていくことが必要となります。

事例紹介

【ケース①】知的障害/清掃・事務補助
(本人の家族からの相談)事業所から、職場でのコミュニケーション等の問題を指摘され、退職勧奨が行われたようで心配である。

ハローワークによる事業所等への聴取の結果、退職勧奨の事実などの法違反は確認されなかったものの、採用当初は行われていた障害特性に応じた業務指示の方法などの合理的配慮が行われなくなったことを把握。
事業所に対して、指導担当者の配置、専門的なアドバイスを行う関係機関の紹介などを助言。
事業所は助言に基づき本人への対応を改善。

ハローワークに相談することで事実確認や事業所に対するアドバイスが実施されます。
ケース①のように、業務指示の方法を変更するだけでも、本人にとって理解がしやすくなることもあります。
事例では障害者の方からの相談が大半ですが、事業者からの相談も可能です。

【ケース②】身体障害/清掃職
障害特性に配慮した業務量の調整等が行われなかったために、体調不良で休まざるを得なかったにもかかわらず、勤務成績不良として契約が更新されず雇い止めとなった。
経済的・精神的損害に対する補償金の支払いを求めたいとして調停を申請。

調停委員が被申請人の主張を聴取したところ、申請人との面談等が実施されておらず、被申請人も合理的配慮の取組の不足を認めた。
調停委員が早期解決のため双方が譲歩可能な解決策を調整した結果、解決金を支払うこと等を内容とする調停案の受諾勧告を行ったところ、合意が成立し、解決した。

【ケース③】身体障害/清掃職
労災による後遺症があり、現業職以外への職種転換を求めたところ認められず、解雇された。
解雇は障害が理由で行われたものと考えられるため、事業所からの謝罪と補償金の支払いを求めたいとして調停を申請。

調停委員が被申請人の主張を聴取したところ、小規模な職場のため職種転換は困難との見解が示された一方で、申請人との話し合いの不足を認めた。
調停委員が早期解決のため双方が譲歩可能な解決策を調整した結果、本人に対する謝罪と解決金を支払うこと等を内容とする調停案の受諾勧告を行い、合意が成立し、解決した。

ケース②③はどちらも調停になってしまったケースですが、問題となっているのは申請人との話し合い不足という点です。
③では職種転換と求めたが対応できなかった点については、「企業の規模」を考慮し小規模な職場で対応困難という理由は認められています。

また、2020年6月27日(土)にスターバックスコーヒージャパン株式会社は、主なコミュニケーション手段を手話で行うnonowa国立店をオープン。
聴覚に障がいのある従業員が中心となって働いています。
手話だけでなく音声や指さし・筆談でも注文可能で、聴覚に障がいのある従業員やお客様にとってありのままの自分で居られる場所になればといろいろな工夫・配慮がちりばめられたお店になっています。

この店舗だけではなくスターバックスは「誰もが活躍できる職場」を目指し、障がいが理由で何らかのサポートが必要なパートナーを支援する「チャレンジパートナーサポートプログラム」を策定しています。
専用トレーニングツールやサポートツールの提供、勤務時間など働き方の調整、コーチング制度などがあり、障害のある方も、本来の能力が最大限発揮ができるような職場になっています。

合理的配慮はズルくない!

相談事例の中には、職場での情報共有不足が原因で特別扱いされているとみなされ、周りから仕事が渡されなくなったという話もありました。
プライバシー保護の観点から、どこまで開示するか当事者と必ず相談したうえで、合理的配慮が行われる際には上司や同僚にも理解を求めることが必要です。
合理的配慮はよく「メガネ」に例えられます。
目が悪くて文字が読みにくい人に対して、「メガネを使わずに頑張れ!」とか「メガネ使うなんてズルい」と言う人はいないでしょう。
本人にとっても、企業にとっても合理的な対策を見つけられるように、対話と理解が重要であると感じました。

改正障害者雇用促進法の詳細や合理的配慮の事例集などは厚生労働省HPに記載されていますので、参考にご覧ください。

◆ 厚生労働省「平成28年4月(一部公布日又は平成30年4月)より、改正障害者雇用促進法が施行されました。」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shougaisha_h25/index.html)

<参考>
・ 厚生労働省「『雇用の分野における障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務に係る相談等実績(令和元年度)』を公表しました」(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11917.html)
・ スターバックスコーヒージャパン株式会社 プレスリリース「手話が共通言語となる国内初のスターバックス サイニングストアが東京・国立市にオープン 『スターバックス コーヒー nonowa国立店』 2020年6月27日(土)開業」(https://www.starbucks.co.jp/press_release/pr2020-3511.php)