2020年8月27日、第163回労働政策審議会労働条件分科会にて、労働基準法に基づく届出等における押印原則の見直しが議論、了承されました。
ここで言う「届出の押印」とは、36協定届など法令様式における押印のことです。
今回は、36協定届など法令様式における押印を廃止する方針の内容と背景について、わかりやすく説明いたします。
労働政策審議会労働条件分科会での検討事項は労働基準法に関わるものですが、2020年7月31日に公表された、産業医の押印廃止など労働安全衛生法の法令改正については、下記の記事もご覧ください。

【2020年8月中旬から】「定期健康診断結果報告書」や「ストレスチェック報告書」への産業医の押印が不要になります
(https://news.doctor-trust.co.jp/?p=45888)

押印廃止の方針(案)


36協定届などの押印廃止について議論された方針は、以下となります。

・ 36協定届を含め、押印が必要な法令様式などについては、押印廃止を検討して、使用者・労働者の押印欄の削除をして、押印又は署名を求めないこととする。
・ 押印廃止の検討を踏まえるとともに、電子申請に添える電子署名も不要とする。
・ 現状、押印を必要としている法令様式のうち、過半数代表者の記載のある法令様式については、36 協定届も含め、押印に代わりチェックボックスを設けることとする。

また、過半数代表者の適格性の確認の在り方については以下のように示されています。

(1)押印廃止になった後は、法令様式に協定当事者が適格であることが明示できるようなチェックボックスを設け、使用者がチェックした上で、労働基準監督署長に届け出ることとする。

<過半数労働組合の場合>
・事業場の労働者の過半数で組織されていること
<過半数代表者の場合>
・事業場の労働者の過半数を代表していること
・管理監督者ではないこと
・過半数代表者の選出方法が適正であって、使用者の意向に基づき選出された者でないこと

(2)新たに設けるチェックボックスにチェックがない場合、形式上の要件を満たしていないものとする。

(3)適正な36協定締結と、届出についての周知や指導の徹底をすること

押印の代わりに「チェックボックスにチェックする」だけになれば、担当者の負担は軽減しますし、締結手続きまでの時間短縮につながりそうですよね。

なぜ廃止を検討したのか?


そもそも、どうして押印廃止を検討するに至ったのでしょうか。
まず、以前よりIT化推進を求めてはいたものの、現状は厳しくなかなか進まない日本企業の背景があります。
IT化が進まない一方で、この度の新型コロナウイルス感染防止の観点より、これを契機にアナログ行政を全廃して、新しい行動様式としてテレワークを定着させる中で、「押印廃止」が適切と考えられました。
次に、中小企業は時間外労働をさせるために36協定を結ばなければなりませんが、それがまだ遅れている状況にも一因があります。
そして、一般的に協定書と協定届を一緒に届けることが多いため、基本はまず労使協定があって、双方の合意があったものについて、届け出る様式であるということの理解を深めるためのいい機会だとされました。

◆協定書と協定届
しかし、協定書と協定届の違いについては十分な理解が進んでいない現状もあり、この方針によって「手続きにおいて押印を廃止した」と誤解が生じてしまう懸念が残ります。
そのため、押印欄を廃止するということであれば、その代わりに協定届が使用者の一存で作成されたものではないということが明示できるしくみが必要不可欠でしょう。

周知・指導の徹底が必要


36協定の協定書と協定届については前述した通り、その違いについても理解が進んでいないため、今回の押印原則の見直しとあわせて適正な労使協定の締結に向けた周知・指導を徹底する方針です。
人手不足が深刻な中小企業や、行政機関に赴くだけでも負担の大きい地方の企業などにおいては、今回の押印廃止は負担の軽減になり、メリットが大きいことでしょう。
新型コロナウイルスによる影響はとても広く、仕事や日常のさまざまなところまで変化を余儀なく求められているように感じます。
しかしこれを契機に、このような改定の積み重ねで、これからの日本はもっとIT化を強く推進していけたら働く人たちの未来は明るいのではないでしょうか。

<参考>
厚生労働省「労働基準法に基づく届出等における押印原則の見直しについて」